「父上……?今……何と……」


仰ったんですか……?



喉が……ヒリヒリと焼け付くようだ。
僕は目の前の事が信じられず。
最後まで……言葉が発せ無かった。

父上の瞳に。
…哀しみの色が浮かんだ。



「……カイン。これは……」



そして。
一言ずつ。
僕に言い聞かせるように。
もう一度…言葉を繰り返す。

父上の後ろに控えるジークが。
僕を見つめ……静かに肯いていた……。



 




姉上と僕が二十歳になり。
祝いの宴が終わりを告げた頃。
ジークが僕を呼びに来た。


いつもなら。
姉上と二人のはずなのに。

何故か今夜だけは。
僕一人だけだった。



「カイン様。陛下がお呼びでございます」
「え?父上が?じゃあ姉上を呼んで来るよ」
「いえ!……カイン様。今回はカイン様、お一人をお呼びでいらっしゃいます」
「?……僕だけ?」
「……そうです。カイン様……」



姉上を見ると。
母上と一緒のようで……少しホッとした。


今日は僕と姉上の誕生日で。
祝いに訪れる他国の王子達も……少なくは無かった。


彼らの目的は多分……姉上だろう。



このローデンクランツの王女が年頃になったんだ。
他国の王子が放っておくはずも無い。

 






……姉上は。
日を追う毎に美しくなる……。


僕と同じ髪。
僕と同じ瞳なのに……

何故、こうも違うのだろう?




……そして僕は。

そんな姉上から……目が離せないんだ。




「カイン様?」
「!ああ……ジーク。……行こうか」
「……はい」



母上と一緒だから……大丈夫だろう。



「姉上……直ぐに戻るよ」



僕は小さく呟いてジークと共に父上の元に向かった。






「ジーク?父上の部屋じゃないのか?」


暫く廊下を歩いていると。
ジークが父上の部屋と反対の方向に歩き出した。


「いえ……カイン様。陛下は……私の部屋でお待ちでございます」
「ジークの?」
「……はい」
「?」



珍しいな。
いつもなら父上の書斎なのに?




「陛下。カイン様が御出でになられました」
「父上!カインです、入ります」







そして。

今、僕の目の前にあるのは。

寝台に横たわる一人の男。





僕と……同じ顔。

僕と……同じ身体をした……



もう一人の……僕だった……。




どういう……こと……なんだ……?

……僕の半身は……姉上……唯一人のはず……

それなのに……!



今、目の前に居る男は誰だ?

……どうして!?

僕と……

……同じ姿……なんだ……?



目の前にある現実を。
父上に否定してもらいたくて……!

振り返った僕に。
父上が放った言葉は……


僕を……

凍りつかせる……言葉だった……。




「彼は……カイン。私の命で…ジークが秘術で生み出した……もう一人のカインだ」





……秘…術?

もう…一人の……僕?



「……何故……僕の……?」
「それは……お前が第一王子だからだ」
「……!!」



父上の言葉にハッとした。

……そうだ。
僕はこのローデンクランツの王子で。

父上の後を継ぐ……次期国王だ。

 


そして。

同じ父上の子でありながら……
姉上が王位を継ぐ事は無い。

ローデンクランツでは。
女性に継承権は無いのだから……。



僕に何かあれば。
次期国王は第二継承権のある……従兄のエドガーになるだろう。


しかし彼は……不穏な噂が絶えない人だ。

彼は軍事力の拡大に多大な関心を示している。

それは。

父上が目指している国家とは。

……異なるものだ。



彼に。

このローデンクランツは…任せられない……!



「カイン」
「…はい」
「分かるな?」
「はい…父上」



そうだ。

ローデンクランツには。

…彼が必要だ。


僕に何かあった時は。

もう一人の僕が…

必ず必要になるだろう……






そして。

考えたくは無いけれど……


…姉上にも。

彼が必要になるんだろう……





僕の出来なくなった事を。
彼には…
してもらわなくては…いけないのだから。


僕の代わりに。

姉上を…護ってもらわなくてはいけないのだから……!






何処を見ても。
僕と寸分違わない。


姿形が同じなら。


……心も。


同じなのだろうか?


僕に何かあれば。

彼は…僕として生きていくのだろう。

僕の全てを引き継いで……



…だとしたら。

この想いも……?



この…僕の…想い全ても…彼は……

引き継いで…しまうのだろうか?


姉上に…

抱いてはいけない…この想いまでも……





…だけど。

どうしてだろう?

僕には出来無い事を。

彼なら…出来てしまうような気がするのは?



それは。

望んでも叶わぬ…姉上への想い。

でも…彼なら。

叶えそうな気がする……



「…悔…しい…な……」
「カイン?」
「カイン様?」



僕の呟きに。
父上とジークが心配顔で呼び掛ける。


「いえ…なんでもありません父上」
「…そうか。カイン…この事は」
「ええ、父上。誰にも公言しません」
「カイン様、姫にも……」
「…分かっているよジーク。姉上にも話さない」



話したり……するものか!



彼には。
このまま。

今まで通りに…眠っていてもらうよ。



僕の…この想いは。

僕だけのものだ。



姉上も…


僕だけの姉上なのだから……!!




姉上は。

これからも。

僕が護っていく……!




「父上。母上と姉上が心配ですので…僕は戻ります」
「…そうか。他国の者も多く来ていたからな…頼んだぞカイン」
「はい!父上」




そうだ。

カインは僕だけで良い。



ローデンクランツに。
彼は必要かもしれないが…

…僕自身には。

彼は…必要では無いのだから……!





……彼には。
静かに眠っていてもらおう。


それが何より。
このローデンクランツが。

平和…と言う事なのだから……




「姉上…まだ母上と大広間…かな?」



僕は姉上が居る大広間へと駆け足で向かった。


この国と…姉上を護るのは僕なのだと。

姉上に伝え……約束する為に…………









珍しく実弟カインです。
OPでカインを造った事を知っているのは国王とジークだけのようですが。
ここは捏造小話と言う事で御勘弁を(汗)
・・・そして実弟カイン。
管理人の萌えを満たす為、妄想200%です(爆笑)




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