「…っつ!?」
「!カインっ?!」

 


鋭い音が耳元でした。
ヴァイオリンの弦が…切れたみたいだ。




今日は姉上に……
僕のヴァイオリンを…聴いてもらう日。


この前、出来なかった所が
上手く奏でられるようになって……

ヴァイオリンの先生も…褒めてくれて……
だから…


……姉上に…聴いて…欲しかったのに……な………





「カイン大丈夫!?」
「…?!」




そんな事を考えていたら。
暖かい物が…
僕の頬に触れた。



姉上の…

……手……だった……




「まぁ!血が出ているわ!!」
「…え?」
「大変!」
「あ……」




切れた弦で出来た傷を。
姉上はハンカチを軽く当てながら。
綺麗に血を拭っていく。



「大丈夫…だよ…姉上。…ハンカチが汚れる」
「カインったら…ハンカチは汚れても良いのよ?それより貴方の傷の方が心配だわ」
「…姉上…」




ハンカチから顔を離そうとする僕を。
姉上の手が…優しく留める………





「…暖かい……ね……」
「え?」




ポツリと呟く僕を。
姉上は不思議そうに見上げた。




「姉…上の…手…暖かい…」
「…カイン?」




そっ…っと。
姉上の手を取り…頬に当ててみた。



瞳を閉じ。
姉上の手の暖かさだけを…感じてみる。




本当に……暖かい………





「…どうしたの?」
「うん…。昔も…こんな風に…怪我をしたり…したんだろうか?」
「…カイン……」
「その度に…。姉上や…母上が…。僕を…心配して…くれたの…か…な?…」
「!…勿論よ、カイン!」





姉上の声に驚いた僕の瞳に。
飛び込んで来たのは……



…姉上の…涙を浮かべた…顔…だった……





「…姉上…?」
「お母様も私も…カインが怪我をすると大変だったのよ……」
「え…?」



姉上は。
懐かしそうに瞳を細めた。




「お父様は『男の子なんだから。怪我の一つや二つ、して当たり前だよ』なんて仰っておいでだったけれど……」
「…父…上…が…?」
「ええ」





姉上は少し微笑みながら…
優しく僕に話してくれた。





「私も貴方の事が心配だったけれど…傷口を見ては怖くて…傍で泣いているばかり…でも、お母様は
いつも優しく貴方の怪我の手当てをしていたわ。侍女達に任せる事は一度も無かった」
「!…母…上が…?」
「そうよ。その度に、お父様が苦笑いしながらカイン……貴方の頭を撫でておられたわ」
「父上……」




姉上は…僕の呟きに頷きながら…

寂しそうに…笑った……




「お父様ったら『カイン。お前が怪我をすると母上や姉上が心配するから気をつけなさい。
だが私としては……男の傷は勲章だと思うがね?』って笑うのよ」
「そう…父上が……」










僕の…父上…と…母上……



今の…
僕の記憶の中には…

…居ない人達……




……でも。

姉上の話を聞いていると…
胸の中が…暖かく…なってくるよ。





姉上の…手と…同じだね……





記憶に無い…父上と…母上だけど…
僕の大切な……家族なんだ……




…そして…姉上も…

僕にとって…

大切な……家……





「…!?」
「カイン?」
「姉上…?」
「大丈夫、カイン?顔色が悪いわ」
「…だ、大丈夫だよ。少し…胸が…痛かっただけ…」
「胸が?」
「うん…」





…そう。
痛かったんだ……


姉上が…
僕の………

……家………族……
……と…言う事…に……




どうしたんだろう?
僕は…姉上が大好きで…
その大好きな姉上が。

僕の…
大切な家族で……



僕は…
凄く…嬉しいはずなのに……?




この…胸を…
締め…付ける……
痛み…は……



……何……?






黙り込んだ僕を。
心配した姉上が見上げてくる。

その顔を見ていると…
堪らなくなって…!


…………………………!!

気が付けば。
僕は…姉上を…



抱きしめていた……





「……カ…イン……?」





姉上が息を呑む程
驚いている事は分かっているのに…


……………………

姉上を僕から…
離さなきゃいけないのは…

…分かっているのに……




何故…僕の腕は…

姉上を…離さないんだろう……?







「…大丈夫……大丈夫よ…カイン」
「!?」






姉上を…
抱きしめたままの僕を

姉上は静かに……
その暖かな手で…

 



……僕の背を

…優しく…撫でてくれた……






「お父様も、お母様も…貴方を心から愛していたわ…勿論……私もよ?」
「…姉…上…」





姉上の声を聞きながら…

僕は縋るように姉上を抱きしめ続けた…




僕の手から姉上が…

離れて行かないように……












僕は。
この日の事を。

一生忘れないだろう。





僕の背を…
優しく撫でる姉上の…

……暖かな手を……





その手が僕に齎した…


更なる…胸の…痛みをも………


 

 

 

 





そして。

僕は知る事になる。





あの胸の…痛みの訳を……

姉上を家族だと…

思う度に込み上げる…切なさの意味を……






 

 




えーオフィシャルでアンケートに答えると素敵な壁紙を頂けるんです・・・が!
その壁紙を見て思わず妄想してしまった産物でございます(苦笑)
サントラではピアノを弾いているカインですがヴァイオリンも良いですね♪
・・・でも。
カインなら何でも似合うかなvv


 



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