私が御仕えさせて頂いております姫様は前髪で瞳を隠されておいでになります。

それは何故かと御訊ねしましたら姫様はこう御答えになられました。


「御母様に言われたのよ。生涯連れ添う方が現れるまでは髪で隠しておきなさい……と。貴
女の顔を見なくても本当の貴女を愛してくれる方が現れた時。その時こそ、その方に貴女の
瞳を、お見せなさい……と。」


なので姫様の御顔全てを私は存じ上げません。
姫様の御顔を知る方は弟君であられるカイン様、姫様が幼少の頃より御傍におられる典医の
ジーク様くらいではないでしょうか。


たまたま通りかかった部屋の前でエミリオが誰かと話していた。
見ると相手はリオウのようだ。

何の話をしているのかと思えば姉上の前髪の話で。
……とは言っても本題は姉上の瞳の話みたいだけど。

そして僕は愕然とした。
僕は……姉上の瞳を見た事が無いっていう事に……。

昔の……
記憶を失くす前の僕なら姉上の瞳を見てはいたんだろう。

けれど。
今の僕は……

記憶を失くした今の僕には……姉上の瞳は想い出せない……。


「姉上……」


そう思うと無性に姉上に会いたくなった。
その瞳を……見たくなった……。

姉上……

今度こそ忘れないようにするから。
だから……

もう一度。

僕に、その瞳を……見せて?


気がつけば僕は姉上の部屋へ向かう為、王宮の廊下を駆け出していた……。




「どうされました、リオウ様?」

廊下の気配を読んでいた僕にエミリオが声を掛けた。

「いえ……何でも。唯、姫の瞳に御目に掛かれる方はどんな方だろう?……と。」
「そうですね。ですが姫様の御眼を御覧になられる方は、御幸せな方だと思いますよ。」

「ええ、本当に……。」


幸せ……か。

廊下の気配はカイン様のものだった。
慌てて駆けて行かれたようだが……多分。
姫の部屋にでも行かれたのだろう。

姫と双子の弟君……カイン様。

そして。
次期国王になられるだろう……カイン様。

ふっ……
僕と歳も余り違わないのに随分と差が有るものだ。
それは生い立ちだったり、生業だったり……。

そして、なにより……君に愛されている。

姫……。

君の瞳を見られる者は幸せな人なんだそうだよ?
じゃあ……

僕は幸せ者なんだろうか……?

過去に一度。
幼い頃に出会った時。
僕は君の瞳を見た事があるよ?

……涙を溜めた瞳だったけれど……。

それでも。

そんな僕は。
君の瞳を見た数少ない一人なんだね?

ふふふ。
そう思うと、なんだか嬉しいな。

例え涙を溜めた瞳だろうと君の瞳を見た事には変わりはない。

……いつか。

いつか涙で濡れていない瞳も見てみたいな。

……だけど。

そんな日なんて。
絶対に来ないだろうけれど……。


……僕が。

君の大切にしている弟君を手に掛けたら……。

君の瞳をまた涙で濡らしてしまうんだろうね。

そして今度は。

それに憎しみの色が加わる……。

だけど、それすらも……。
僕は見てみたいと思うんだ。

だって、こんな僕を……。
王女の君が見てくれる訳がないもの。

だから。

だから、その時は。

君の瞳に僕を焼き付けて?

君の大切な弟君を手に掛ける僕を……
憎しみに燃える瞳でも構わない!
君が僕を……見てくれるなら……。

その時の僕を……。
君の瞳に焼き付けていて?


永遠に……。



 




・・・なんて。
思いっきり捏造(汗)





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