今宵もまた。

暗闇の中、靴音が響く。




「あの音は……カイン様…か……」


唇の端を手で拭う。
近衛兵から受けた傷口は……もう塞がっていた。



「本当に凄いな。ジークの身体は」


投獄されてから幾日経ったろう。
それでも。
カイン様が此処へ訪れぬ日はない……。




「また傷口が治っているんだって?フフ……どういう事なんだろうな、ジーク?」



松明の灯りが。
カイン様に影を作る。



「さぁ……。どうしてでしょうね」


毎日、繰り返される問答。


一体……いつまで続くのか……。




「……まぁ、いいさ。今更お前の正体を知ろうとは思わない。今日は一つ、報告があるんだ」


カイン様が片手を挙げ近衛兵を下がらせた。

そして底知れぬ笑みを湛えながら近づいて来る。



松明を背にカイン様はニヤリと笑った……。



「……他の者は皆、認めたぞ?」
「……え?」
「……エドガーは反対していたがジペルディ家の存続と手を打った。これからは何かと協力してくれるらしい」
「……カイ……ン様」
「皆……命と名は惜しいらしいな?クックック」
「カイン様っ!!」
「残るはジーク……お前だけだ」
「…………」




……姫への愛ゆえに。

慟哭を選ぶか…………






カイン様が。

私の部屋を訪れたのは何時だったろう?

頬を紅潮させ瞳を輝かせながら私に放った言葉は……恐ろしいものだった。




「俺、決めたよ」
「……?」
「姉上を。……姉上を俺のものにする」
「なっ……!」


何を……

何を言っているのだ?

……この方は…………?



「これで煩わしい事とはオサラバだ!毎日、毎日!姉上への求婚者を追っ払う事も!俺の王
妃候補とやらの連中とも!綺麗サッパリ縁が切れる!!」
「!?……カ……カイン様!!」
「……これが一番良い方法だと思わないか?ジーク」



蝋燭の明かりが。
カイン様の瞳を暗く映し出した。



「何を仰っておられるのですかっ?!あの方は!あの方は貴方の姉君なんですよ!!」
「…………だから?」
「!!……カ…イン……様……?」
「だから何だって言うんだ?言ってみろよジーク?」



これは……

これは一体、誰だ?



これが。

これが、あのカイン様か?


あの姫と……
同じ血を分け合う……


!!

いや……違う。

此処に居るのは姫の弟君ではない。


独占欲に駆られた……一人の男。


そして。


私が創った……カイン……だ……。





「そのような事、許される事ではございません!!」
「……誰に……」
「……?」
「誰に許されなければ……ならないんだジーク?」
「!?……カイ……ン様……」
「俺が姉上を想う気持ちを……誰に許されなければならない?」
「カイン様……」



射抜くような鋭い眼光……

狂気さえ浮かぶ……瞳を持つ男

この男を……

この人間を……

創ったのは本当に……

……私……なの…か……?




「……俺は。ジークだから話したんだ。他の誰でも無い。……ジーク……だからだ」
「カイ……ン…さ…ま……?」
「我が師でもあるが……。記憶の無い俺にとっては。……兄とも……父とも慕う……ジークだからだ」
「カイン様っ!」
「ジークにだけは……祝福してもらいたかったんだ。……だが。無理のようだ……残念だよ」




……カイン様……



「協力を得られない今。姉上の事を話した以上……お前を放ってはおけない」
「カイン様?」
「姉上の事。守れるのは……俺だけなんだ!」


カイン様……!貴方はーーー!!


「近衛兵っ!!」
「はっ!!」
「ジークを……。ジークを……連れて行け」
「は?ジーク様を……ですか?」
「ああ……。そうだ」
「カイン様……」
「……王家に対する……呪詛の疑いだ」
「!!」






その日から。

私はカイン様の手によって投獄された。




「……お前だけが残ったよ……」
「…………」
「ジーク。お前はどんな手傷を負っても治ってしまうな。だから怖くはないか?俺が?」
「……いいえ……カイン様。」
「……?」
「私は恐怖を感じております……貴方の想いに。貴方の姫への愛に……」
「……ジーク……」
「そして貴方の姫への想いに気付けなかった……私に対しても……」




……覚悟を決める……時なのかもしれない。

長い年月を生きながらえてきた。

この先。

この罪を背負い。

また長い年月を彷徨い生きて行くには……重過ぎる罪だ……。



私の手で。

……幕を閉じなくてはいけない。



カインは。

私が創ったのだから…………。




姫……!

お許しを!!

あの事故の日。。
辛い決断をされたというのに……

そして私が与えてしまった、このカインを。
愛し、慈しみ育てて下さったのに……!

今度は私が。

貴女から……


このカインを奪ってしまう……!




ですが!
このままでは!

この国が!
ハインツ様の憂うローデンクランツの未来が……!!




「カイン様……」
「……なんだ?」
「この鎖を。お解き下さいますか?」
「ジーク……?」





さぁ……
ジーク=イーヴェイン

幕を下ろそう。

己の罪を今……

命を賭して償うのですーーー!!




「祝福を……カイン様。姫とカイン様の愛が……永遠に続きますよう」
「!!……ジークっ!!」



瞳を輝かせ。

私の側に近づいて来るカイン様。



……そう。

そのまま。
私の手の届く位置まで……




ハインツ様の願いで。

創ってしまった……私のカイン……



終わらせなければ……!


……この命を創った事が。


私の……罪なのだから……





……あと少しだ……





愛しい子よ



その罪は。

私の命で償われる…………。









う〜ん・・・益々、暗〜い話になってしまった・・・
・・・困ったな(汗)
俺カインだと暗い話が付加してくるのは何故?











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