覚
「早く……起きねーかな」
溜息を吐きつつ、目の前の女を見る。
「……なかなかの別嬪さんだよな。さすが……お姫さんだわ」
そう、お姫さん。
でも、唯の貴族のお姫さんじゃあねぇ。
この国の……
ローデンクランツのお姫さんだ。
「人形……みてぇだな」
眠ってる、お姫さんの顔を眺めてたら。
……ふと、思い出した。
以前、エシューテの港市場にある店で見た人形に似ている。
その店は舶来品なんかを扱っていて。
金があるヤツらでないと出入り出来無ぇ店だ。
そこの店のオヤジが奥から人形を抱いて出て来やがったんだ。
多分、客引きの為に飾るつもりだったんだろーが……
スゲェ似合わねぇから。
腹を抱えて笑っちまった。
……だがオレの目は。
その人形に……
……釘付けに……なっちまってた。
舶来の人形が珍しかったってのもある。
それとは別の意味で。
オレは、その人形から……目が離せなくなっていた。
昔……ガキの頃。
一族の一人が。
偶々、持っていた本をガキのオレに読んで聞かせてくれた。
その本には絵が描いてあって。
……綺麗なお姫さんの絵だった。
その絵の、お姫さんが。
形になったような……
……そんな人形だったんだ。
オレなんかの手で触ったら……汚れちまう。
綺麗な……人形。
……このお姫さんも、そうだ。
極上な絹糸のような髪。
陶器のような白い肌。
整った目鼻立ちに小さな唇。
何度か、リオウと話しているのを遠目で見た事がある。
その唇から発する声は。
……やたら澄んでいて……
「ふーん。……やっぱ良い女だわ」
綺麗で。
汚いモノとは無縁の……お姫さん。
オレとは正反対の……
……別の世界の……生き物。
そんなオレが。
なんで今、お姫さんと一緒に居るのか?
「……拾っちまったんだよなー」
また一つ、溜息が出る。
このお姫さん。
何、考えてんのか知らねぇけど……
一人でブラついてたんだよな。
……こんな極上の女。
手を出さねぇヤローなんて、いねえっつぅーの!
それをフラフラ歩いてんだもんなぁー
お持ち帰りしてくれって言ってんのと同じだぜ?
案の定、ヤロー共がワンサカやって来て。
あっと言う間に、お姫さんを囲んじまった。
それも、さっさと逃げりゃあ良いもんを。
連中が口々に声掛けて来る度に、ちゃんと返事してやっててさ。
下々の声も聞くように…って育ってんのかねぇ?
こりゃ王女さんも大変だわ。
お姫さんとヤロー共の遣り取りが、あんまり面白れぇから。
ついつい、見入っちまって。
困り顔のお姫さんと……バッチリ目が合っちまった。
……それに。
お姫さんの顔が……
……あの人形と重なって……
気が付いたら。
いつもの調子で声を掛けててさ。
ヤロー共を口八丁で丸め込んで。
お姫さん連れて……此処に来てた。
……今のオレの塒に……
結構、走らせちまったから疲れたんだろう。
暫く話し込んでたら眠っちまった。
お姫さんだもんなぁー
街中、走るなんて事、無ぇだろーし。
……それにしても。
「よく寝てるなぁ」
お姫さんってぇーのは警戒心とか危機感ってやつは、ねぇのかね?
こんな場所で。
「……よく眠れるな?」
だけど……
クッ!
「お姫さん……寝起きにオレを見たら驚くんだろうなぁ?」
くっくっく……
喉の奥から笑いが込み上げる。
「寝起きの王女様を拝むのも……悪くねぇな」
……そしてオレは感じてる。
オレの中の奇妙なモンが……目覚めようとしているのを……
ザワザワと。
……胸の中を這いずりながら。
「これが何なのか……? お姫さんが起きたら……解るのかもな?」
それまでは……
「お姫さんの寝顔を。……堪能させてもらうか」
今回はユージーン。
パラレルの方では出ている彼ですが。
単独で書いて(描いて)みたかったんですよね。
随分前に書き上がっていたんですがUPするのが遅くなっちゃいました(汗)
話的には同じなんですが台詞とか終り方が違う物が何本も出来上がりまして。
どうしよう?と悩みながら、この話になりました(苦笑)
・・・でも。
ドラマCD聴いてビックリ・・・
・・・姉上、寝てるんだもの(焦)
オフシャルとは全然!
無関係な話なんで気になさらないで下さいね!!(←当たり前)
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