「ここ……か?」
「ああ。ここさ」
二つの顔を持つ男
目の前には。
広大な台地に聳え立つ城。
この21世紀に城……だとはな。
「へへっ!今回もデカイ山だぜ」
「……気に入らないな」
「あ?」
「気に入らない……と言ったんだ」
「おいおい!何言ってんだよ?」
奴は。
僕の言葉に顔を顰めた。
「今回の山をクリア出来たら。オレ達、幹部になれるんだぜ?」
「…………」
「お前だって。ヤツらに顎で使われる事も無くなるんだ」
「…………」
「おいっ!」
「……まぁ良い。仕事は仕事だ」
「フゥ……驚かすなよ」
いつもは飄々としている奴が……
ホッとしたように大きく息を吐き出している。
珍しく……
熱くなっているのは何故だ?
「ジーン」
「なんだ」
「お前……何を隠してる?」
「……何も。隠してねーぜ?」
「フンッ…僕の目が節穴だとでも?」
「……クックック!こぇーな。そうマジになんなよ」
奴はニヤニヤしながら僕に囁く。
「この件が片付いたら……教えてやるよ?」
「…………」
「知りたきゃ、さっさと片付けるんだな!」
僕の肩を叩き
奴は身を翻して車に乗り込んだ。
「じゃあな!良い知らせ待ってんぜ!」
「フン…言ってろ」
相変わらず喰えない奴だ。
ガサッ
……?
ガサガサッ
……なんだ?
ザッ!
「!?」
ジーンが立ち去った後。
足元の垣根から現れたのは……
「見ぃ〜つけた!」
!!
子供……?
……聞かれたか?
「こんな所まで来ちゃダメでしょう?」
瞬時に僕は記憶を探る。
マクリール家に係わる全ての人物の照合だ。
幼い女の子。
栗色の髪に瞳は……
「あっ!……こんにちは」
「……こんにちは」
これは……驚いたな。
マクリール家の御令嬢が泥だらけになって登場……か。
返事をしながら。
彼女を観察する。
この様子だと。
ジーンとの遣り取りは見られてはいないようだ。
そして。
手に抱えているのは……
「それは……君の猫?」
「え?…うんっ!トラウムって言うの」
「……トラウム」
夢……か。
流石はマクリール家のお嬢様だ。
甘いな……。
まあ、それも当然か。
僕と違って。
汚い物、醜い物とは縁が無いのだから……。
……だが。
それも、どうだろうな。
この先も。
そうだとは限らない。
「もう〜トラウムったら!うふふ」
猫と戯れている彼女を見下ろす。
「……無邪気な笑顔も、これまで……か」
彼女に手を伸ばした。
その時。
「姉上っ!」
茂みから小さな影が飛び出して来た。
「カインっ!」
「……!?」
この子は……
カイン=マクリール!
彼女の双子の弟……か。
彼は。
僕を睨みつけながら。
彼女を背に庇った。
フ……ン。
小さいながらも。
彼女のナイト……と言ったところか。
マズイな。
……どこまで見られた?
頭の中で対処法を考えながら。
僕は、にっこりと微笑んだ。
「初めまして。今日から、お二人の音楽の授業を担当するリオウです。宜しくお願いしますね」
不信感で一杯だった彼の瞳が驚きに変わる。
そして。
彼の小さな腕で守られていた彼女の瞳は。
……喜びを表していた。
「初めまして、リオウ先生!宜しくお願い致します」
小さな頭をペコリと下げて。
僕を見上げる笑顔は。
天使の笑顔……そのものだった……。
「…っ!?」
……なんだ?
今の……
胸の……疼き……は?
「カイン、リオウ先生に御挨拶は?」
「……初めまして。リオウ先生……」
「初めまして。カイン様」
渋々ながらも。
彼女に促された彼が挨拶をする。
……面白いな。
決定権は彼女にあるのか。
さて。
どうしたものか……。
余り時間を掛けたくはないが……仕方が無い。
当初の予定通り。
この二人の音楽講師を務めなければ、いけないみたいだな。
事を進めるには彼らの両親に会い、信頼を得るしかないようだ。
これからの予定を考えていると。
不意に僕の手に触れる物があった。
「……!」
「リオウ先生?」
彼女の小さな手が。
……僕の手を握っていた。
「あーっ!?姉上っ!!」
小さなナイトが抗議の声を上げている。
「カイン、ちゃんとトラウムを抱いていてね。また迷子になっちゃ困るでしょ?」
「う…うん。……分かった」
不満そうな声で答える彼は。
両手で抱えた子猫の為に姉と手を繋げずにいる。
「行きましょう、リオウ先生」
「……そう…ですね」
ナイトの気持ちも知らぬ気に。
小さな姫君はニコニコと御機嫌のようだ。
……本当に。
何が楽しいのか。
僕には分からないけれど。
……でも。
この子の笑顔を見るのは……
「……悪く…ない」
恨めしそうな視線を背に。
彼女の温かい手を包み込む。
『何かが変わるのかもしれない』
そんな思いを胸に。
彼女の温もりを……掌に感じながら……。
またまたパラレルです。
アンケートに票を入れて下さった皆様、ありがとうございます!
どうしようかと迷っておりましたが2作目が出来ました♪
今回はリオウです。
双子の音楽講師という無茶な設定にしてみました。
ゲームでは楽士と言うくらいですからね。
彼なら人に教えるのも問題無いかと。
それとチラッとですがユージーンも出してみたり。
どうも、この二人、管理人の中では離せませんで・・・。
多分リオウの攻略時に彼が思いのほか絡んでいるからなんでしょうけど(笑)
ユージーンの隠し事ですが。
ジークの卵と同じ事になりそうな予感・・・(汗)
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