言葉もなく、外を見ている。
「……」
彼は何を考えているのだろうか…?
窓の外は、雨。
何かを覆い隠そうとしているのか、誰かの代わりに泣いているのか、そんなふうにも思える雨粒。
目を細め、遠くを見ている。
灰色の空を…。
「ハボック、私は二度と大切な者を失いたくないんだ…」
突然、言われた言葉に、驚愕する。
「それでも、お前は私を愛するのか?」
彼は、こちらを真っ直ぐ見て、問う。
真剣な瞳で…。
「大佐…」
失うことを怖れていることが伝わってくる。
「そんなにヒューズ中佐が好きだったんですか?」
問い掛けに答えずに問いを返すのは悪いと思いながらも聞かずにはいられなかった。
ロイは、溜め息を吐くと頷いた。
「ああ。そうだ。だが、あいつとのことはお前には関係ない」
静かに言い放つ。
“関係ない…”
確かにそうかもしれない。
けれど…。
「オレは中佐の代わりにはなりません。本気でオレは大佐が好きなんですから」
ハッキリと言った。
ロイの瞳が微かに揺れた。
「代わりになど、しない…」
弱々しく口にする。
白い肌は、薄く朱に染まっている。
瞳には、涙が滲んでいて…。
「大佐っ」
思わず、その身体を抱き寄せた。
彼は、何も言わない。
抵抗を見せることもなかった。
「…オレで、いいんですか?」
耳元で問い掛ければ、ビクッと跳ねる。
「今更、聞くな…っ」
睨むような目も、涙に潤んでいれば、そのようには見えない。
相手を欲情させるには充分な表情…。
「じゃあ…」
クスッと笑い、唇をふさいだ。
軽く重ねるだけのキスを繰り返し、唇をなぞるように舐める。
「ん…っ」
くすぐったさから開いた口内に舌を滑り込ませた。
「んぅ…っ」
歯列をなぞり、舌を絡め取る。
「ふぁ…んっ、はぼ…っ」
深いキスの合間に名を口にしようとするが、それはキスで出来なくなる。
「ん…っ、や…っ」
深すぎる口づけに、身体が震えている。
吐息を漏らす姿に煽られてしまう。
背中に回された手。
その手に力がこもる。
「はぁ…っ」
唇を離せば、床に崩れ落ちそうになり、身体を支えた。
「大佐…?」
乱れた呼吸を整えている姿に顔を覗き込む。
「ハボック…」
困ったような上目使いで見てくる。
「だ、大丈夫ですか?」
思わず、聞いてしまう。
「どうしてくれんだ…」
真っ赤な顔で、目をそらしながら言う。
密着してることもあり、身体の反応は相手に伝わっている。
なのに、気付かないフリをされている。
「キスだけじゃ、足りませんか?」
笑いながら問い掛ければ、キッと睨まれる。
「馬鹿っ」
冷たく言い放ち、自分から重ねるだけのキスをする。
「仕事後に、な。ジャン」
そう言い、腕の中から抜け出した。
ロイの発言に一瞬驚くが、笑みを浮かべた。
「ああ、後でな。ロイ」
そう言い、部屋を後にした。
外は、雨が上がり、晴れていた。
暗い空を晴らせたのは、明るい太陽だった…。
―END―
[後書き]
暗い空はロイの心で、太陽はハボックです。
という話。妙に長い…(汗)
本当は、あのままエロシーン突入!
なぁ〜んてやってみたかったのですが、無理です。
度胸なし(笑)
携帯で、半角2500ぐらいの文章でした〜。