新月の闇の中。
全てが狂わされていく…。
戻ることなど出来ない処まで…。
“DARK MOON”
「ぁは…っ、ひゅぅ…ず…」
白い身体に散る紅の華。
小刻みに身体を震わせ、欲に潤む瞳で彼を見る。
「愛してる…。ロイ…」
ふいに意識は現実へと覚醒した。
乱れた呼吸を整えようとするが、夢の中での行為のせいか、身体が疼く。
熱を持ったまま、治まることはない。
「なんで、こんな…っ」
思わず、口にした。
夢の中で抱かれることなど、今日が初めてではない。
欲求不満であるかのように、毎晩、見る。
どうにかしようと、ズボンを下着ごと引き下げ、先走りに濡れた自身を握り込んだ。
「ん…くぅ…っ」
強弱をつけ、扱き擦り上げる。
その手の動きは、徐々に速さを増していく。
濡れた音と共に…。
「ぅん…っ、あぁっ!」
先端の窪みに爪を立てた直後、白濁を放つ。
自分の手とシーツに散った白が目に入り、なんとも言えない虚しさに襲われた。
「ヒューズ…」
彼は、もういない…。
そう実感したせいか、涙が込み上げてきた。
「ヒューズぅ…」
そう名を口にしたときだった…。
カタンと音がして、音のした方を見れば、そこには見知った者の姿があった。
「ハボック…」
そうして、気付く。
此処は司令部の仮眠室であったことに…。
彼は、妖しい笑みを浮かべ、此方を見ていた。
「随分、やらしいっすね、大佐…」
その言葉に見られていたことは、容易に読み取れた。
ギシッとベッドが軋む音…。
「どうせなら自分でヤるより、誰かにヤッてもらった方がいいんじゃないですか…?」
低い口調で言われ、背筋が粟立った。
だが、それは新たな快楽を求めているようで…。
「…頼む。ハボック…」
理性では嫌と思っていても、欲望に身を任せるしかなかった…。
だが、彼のやり方は尋常じゃなかった。
けれども、そんなやり方でも身体は反応を返す…。
「ぁあ…っ、やあ…ん」
目元を隠され、張り詰めた自身には細い紐が巻き付き、更に苦しみと快感を呼ぶ。
胸元の小さな突起を執拗に指と舌で攻め立て、肝心の中心には触れない。
「はぼ…っくぅ、もぉ…」
嫌と言う言葉を口にしようとするが、出ていくのは喘ぎだけ。
刺激を与えられている乳首は尖り、膨らんで赤く熟れている。
自身からは少しずつ、透明な液体が溢れていた。
小刻みに震える白い肢体を見ながら、彼は冷たく言い放つ。
「何処が嫌なんすか? 後ろ、ヒクついてますよ…」
まだ触れられていないはずの秘口は、最早次の快楽を求めるかのように律動していた。
「そんな、こと…っ」
ない、と否定しようとすれば、入口をなぞるかのように触れられ、身体が跳ねた。
「ほら、オレの指、飲み込もうとしてる…」
随分、ヤラシイんですね。
耳元で言われた言葉に、身体が熱を増した。
と同時に、痛みが走った。
「はぼ…くっ」
声を上げれば、クスッと笑われるだけ。
ひたり、と熱いモノが押し当てられたと思った瞬間、慣らされていない場所に熱塊を埋められた。
「ひぃ…っ」
引き裂かれるような苦痛。
白い喉を仰け反らせ、渇いた声を発す。
内部を擦られ、広げられる。
が、痛みが上回るためか必要以上に中のモノを締め付けていた。
「…っ、これでも、あの人の名前を呼べますか?」
息を乱しながら、聞いてくる。
「やぁ…、イかせ、てぇ…」
中が濡れてきたのか、濡れた音が耳に響く。
後ろから快感を感じるようになった身体には、自身を戒めている紐は痛みを呼ぶ。
その痛みがまた、深い快感を呼んでくる。
「ぁく…っ、ぃあっ」
中を行き来するモノの動きが速くなり、苦しさに眉を寄せる。
「仕方ないなぁ…」
そう言われた直後、戒めは解かれ、掌に包み込まれた。
「んぁあ…っ、ひぅ…っ」
前後から与えられる強い快感に彼が最奥まで突き上げた瞬間、絶頂を迎えた。
「ひぁあ…っ!」
絞り出すような手の動きに、何度も何度も吐き出す。
内側に熱い飛沫を感じながら。
全て吐き出すと、身体の力が抜けたせいか、意識が急激に遠くなるのを感じた…。
室内を照らす、月の光などない…。
この闇から逃れる術は、あるのだろうか…?
―END―