パタンと扉を締めた。
部屋から出れば、コツリと足音が聞こえた。
「ロイ、いつまでやってるんだよ。理由は解らなくもないが…」
暗闇からかけられた声。
「お前には、関係ないことだ」
冷たく言い放つも、ズキンと胸が痛む。
思わず、胸元の服を掴んだ。
「関係ない、ね…。そりゃあそうかもしんねぇけど、それであんたはいいのか?」
声の主は、自分の前に立ち、問う。
頷くつもりが、何も出来ない。
「どうなんだ、大佐?」
言葉を促すように聞いてくる彼に、普段の表情を作る。
「ヒューズ、これは俺の問題だ。君には関わってほしくない…」
そう顔を変えずに言った、つもりだった。
相手の溜め息をはく音。
「そんな顔して言うセリフじゃないぜ、大佐」
困ったように笑い言う。
ロイの瞳からは、涙が伝い落ちていた。
「なら、お前はどんな顔ならいいんだ…?」
真っ直ぐに彼の目を見て聞けば、一度戸惑った表情を見せ、その涙を指先で拭い、キスをした。
「俺はあんたを守る。あんたの下で見守る。だがら、らしくないことするのはやめな」
小さな子供をあやすかのような柔らかい声に、マースの身体に抱きつく。
「お前は、どうして…」
彼にだけは通用しない。
何もかも見透かされる…。
「素のお前でいいんだよ。作る必要なんてねぇだろ?」
軽く彼の黒髪に触れる。
「ヒューズ…」
名を口にするしか出来なかった。
「ったく、困ったヤツだな…」
そう言い、彼の身体を壁に押し付けた。
「おいっ…」
驚いたように発すれば、彼は笑った。
「冗談だよ。さすがにココじゃあなぁ〜」
思わず、ムッとした顔を見せれば、普段と同じ顔を見せた。
「やっと、ロイらしくなったな…」
何処か、安心したように言われた言葉に息をはく。
「…いいから相手しろ。お前から、やってきたんだからな」
冷たく言い放ち、自分から唇を重ねた。
どれだけの闇を抱えているのだろうか…。
禁忌を犯してまで“ホシイ”ものは、一体何なんだろう…。
−END−