興行に関する与太話



とりあえず最近のK-1について考えていたことなんですが、もうちょっと風呂敷を広げて「興行全般」について考えて見ます。全部知ったかで語りまくるので厳しいツッコミは禁止ね。まあヨタ話として聞いてくらさい。なんか長い文章が書きたかったので必要以上の長文になってます。



何でもいいのでひとつ興行を取り上げてみると、それを構成している要素は大きく三つに分けられる。

  1、興行主
  2、ファン層
  3、一般層

また、これらを別の視点から見つめる「マスメディア」という集団も存在する。
「マスメディア」は興行に対する話題、ネタを売ることで食うための手段としており、ポジティヴな話題であってもネガティヴな話題であっても同等に取り上げる。「興行主」は「一般層」への啓蒙のために「マスメディア」を通してポジティヴな話題を流すが、逆にネガティヴな話題が流れてしまった場合、「一般層」は離れていく。



「興行主 - ファン層 - 一般層」という三層構造はどんな興行でも基本的には一緒で、常に「一般層」が圧倒的多数を占める。興行の商業的・世間的成功は、この一般層をいかに多く取り込むかにかかっている。
当然、一般層を取り込もうとするのはダイレクトに利害が絡んでくる「興行主」になる。
また、「話題」を燃料にするマスメディアはとりあえず興行主と結託し、「ファン層」、「一般層」を煽ることで商売とする。
そして、商業的に成功している興行では、しばしば、「ファン層」が「興行主」の代理となって「一般層」の取り込みに走る……という現象が見受けられる。

例えば、近年最大のスポーツイベントとなった昨年のワールドカップ。
サッカーなんぞ見てても大して面白いスポーツとは思えないが、当時興行主とマスメディアから鬼のように打たれた宣伝と、「ファン層」の「ワールドカップ見なきゃ人生の損」的な熱心な布教により、「一般層」の間で「見なければ駄目」的空気が形成された。結果、ワールドカップは日本人の8割以上が見たと言われる熱狂を博す。あの熱狂は、「ファン層」によるサッカーの布教がなくてはありえない光景だったといえる。
ちなみに、このような熱狂状態では、「3の層」にいる人間がしばしば「自分は「2の層」である」という擬態を行うので、「2の層」が「3の層」に知識合戦を挑む光景が各地で繰り広げられたりする。



もうひとつ成功例を。
先日、一時的に盛り上がったバレーボール(もしくは、4年に一度盛り上がる冬季オリンピックのラージヒルとかでもいい)。
マイナースポーツと呼ばれ、競技人口の数もサッカーや野球にはるかに劣るこれらのスポーツが、なぜ一時的な熱狂を集めることが出来たのか。それは「興行主」による、ダイレクトな形での「一般層」の取り込みが成功したからである。

これらのマイナースポーツでは、「ファン層」による代理布教は望めず、「興行主」は「マスメディア」と結託し、コマーシャルを打つことで直接「一般層」に働きかける。「一般層」は物珍しい物件に飛びつくという習性があるので、この習性を興行主が巧く利用し、「バレーボール見なくっちゃ!」的空気が形成されれば興行は成功に終わる。

ただし、「一般層」は先に記したような空気が霧散すれば興行に対する興味を失う。
「興行主」は「一般層」を「ファン層」に引き上げようと画策するものの、もともと「ファン層」の少ない競技でそれを行うことは難しく、一時的にマイナースポーツはピックアップされるものの、「マスメディア」による話題の供給が収まることで「一般層」が離散するのが常になっている。
「興行主」が「ファン層」を暑い層するには、一時的にピックアップされた期間で信じられないくらい面白い興行を見せるか、長年にわたって戦略的に「ファン層」を拡大していくかの二つの方法があるが、見ていてつまらないからマイナースポーツであると言えるし、継続的に商売にならないからマイナースポーツであるとも言え、なかなか実現しない。

ちなみに、「興行主」による「一般層」の取り込みに失敗した例が「世界水泳」であり、「世界柔道」であり、11月3日にテレビ朝日でやってた「IQテスト」なわけだが、成功と失敗の間にどのような因果関係があるのかは正直よくわからないので今回はパス。

構造だけを抽出してみると、「ワールドカップ」と「バレーボール」における、「興行主・マスメディア」の姿勢は一緒である。
爆発の規模の違いがどこで発生するかというと、やはり「ファン層」の絶対数になる。ファン層が多ければ多いほど、一般層への物理的な布教量があがると同時に、「3の層」の人間に「自分も2のステージに上がりたい」という欲求を喚起させやすくなる。そして「3の層」の人間が「2の層」に擬態し、更に「3の層」への取り込みを図る。この鼠算が発生した時に、観客の数は莫大に膨れ上がる。



ここでひとつ失敗例を挙げてみよう。例題は先日のt.A.T.uの公演。

1stアルバム『t.A.T.u』が発売された時、当然ながら場にいるのは「興行主」と「一般層」、それを見つめる「マスメディア」だけである。
「興行主」は「一般層」への布教を開始し、「マスメディア」がそのベクトルを取り上げる。「一般層」は「とりあえず話題になってるみたいだし買ってみよっか」程度の気持ちでCDを買う。この時、買った人間の何%かが「ファン層」に入り、何%かは興味を完全に失い、残りは2に行くか3にとどまるかの様子見状態に入る。

ちなみに、「マスメディア」の広告パワーがなくなり、完全に実力勝負の状態に入った時、様子見状態の人々を「2の層」に引き上げられずに見捨てられてゆくアーティストは山のように存在する。これがいわゆる「一発屋」にあたる。

t.A.T.uに関して言えば、様子見状態の人間が圧倒的に多かったにも関わらず、ドタキャンやら何やらの騒動を起こし、一気に「一般層」から見放されてしまったことが最大の失敗だった。ミュージックステーションで彼女らがすべきは、様子見状態の人間を「2の層」に引き上げるためのプロモーション(つまり歌うこと)であり、ドタキャンをしてbloggerの酒の肴になることではなかった。
当然ながらこのネガティヴな話題に「マスメディア」が食いつき、わずかに存在した「ファン層」が離反してゆく。結果、東京ドーム興行大コケという噂が現実味を帯びるとともに、その惨状がまたしても「マスメディア」のネタとなり、一斉に報道される。残存していた「2の層」は「若さゆえの過ちなのよー」てな具合に「3の層」に帰化し、結果的に興行は大失敗になった。



さて、ここまでが前置き(笑) ここからはK-1のお話。

K-1はもともと、日曜の昼にグランプリの録画を放送しているようなマイナーなコンテンツだった。ただ、「立ち技世界一を決める」というコンセプトと、試合のクオリティの高さにより、もともと格闘技好きであった「ファン層」に受け入れられる。また、マスメディアであるフジテレビが「ラスタ・とんねるず」へのアンディ・フグの派遣やら何やら「一般層」への働きかけをじっくりと行い、次第に「3の層」から「2の層」への人々の流入が始まる。そして十年経った現在、K-1は安定して数字を取れるコンテンツへと成長させた。

しかし、石井館長が脱税で捕まり、谷川Pがトップに収まることにより、K-1は変質する。
谷川Pの方法、例えば「タイソンと曙を対戦させる」とか、大晦日の「Dynamite!」のゲテモノカードの布陣からは、かつて存在していた「興行主→ファン層」という働きかけよりも、ダイレクトな形での「興行主→一般層」への働きかけという姿勢が伺える。具体的には、既に一般層に浸透しているタレントをリングに上げることで興行を打とうというものである。

このような直接的な働きかけは、物珍しさに飛びつく「一般層」の取り込みに一時的には成功するものの、その「一般層」を「ファン層」に引き上げられない限り、「一般層」はその場限りで離散する。「興行主」がこのような方法で興行を成功させ続けるには、

 1、クオリティの高い商品を提供し、「ファン層」を拡大していくことでリピーターを増やす。
 2、延々と物珍しい物件を提供し続け、「一般層」の離散→集合を繰り返す。

の二つしか方法がない。
しかし格闘技の世界において、「物珍しい物件」とはイコール「素人」になるので、玄人同士の白熱した試合(かつてのK-1のような)が行われる確率は低い。
レベルの低い、しかし話題性の高い興行に「一般層」が熱狂しているうちに、「ファン層」は次第に離れてゆく。やがて熱狂が収まったとき、「ファン層」が次々と離反していく姿だけが目立つようになり、この民族移動に「マスメディア」が食いつくことで、一般層の間に「K-1ってもう有り得ないよね」的な空気が形成される。結果的にK-1の商品価値はゼロになる。

私たちは今、その最初の地点に立っているといえよう。
今後同じようなスタンスを取り続ける限り、K-1は「ファン層」に見捨てられてゆき、「物珍しい物件」が無くなったなった時に「一般層」にも見捨てられる。
ボブ・サップはミルコ戦→キモ戦→ボンヤスキー戦という流れで、「強いと思ってたけど穴だらけジャン」という理由で「ファン層」から完全に見捨てられた。「一般層」的視点から見てみても、「野獣。でも実は一流大学出身で、あれは全部演技なんじゃよー」などと、隠しておけばいいのに一気に自分の手札を使い切ってしまい、完全に飽きられつつある。

彼こそは未来のK-1の姿であると言えよう。そういう意味でも、もうサップのことをミスターK-1と呼んでもいいんじゃなかろうか。ウムウム。


以上、最近の谷川Pを見ながら文章を書いてみました。久々に長文書きましたんで、感想などをいただければ。


2003年12月25日


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