「赤か、青か」(VS 木村拓也)



私の中での古畑ベストワンがこの作品。
とにかく全編やたらめったら面白い。この面白さは「ラヂオの時間」とぶつけても全く引けをとらないと思う。三谷幸喜の面目躍如たるケッサク。


三谷はもともと舞台出身の作家であり、以下のような物語を最も得意としています。

1、密室劇(舞台空間が狭い場所に限定されている)
2、めまぐるしく展開するサスペンス

彼が脚本を書いた大傑作「十二人の優しい日本人」にしろ、前出の「ラヂオの時間」にしろ、彼のベストクラスの作品はこういった条件を満たしている。そしてこの「赤か、青か」も見事にこの条件に当てはまります。


物語のプロットは実に単純です。
「正午まで」に、観覧車に仕掛けられた爆発物を解除するため、「赤か、青か」どちらかの導線をきらなければいけない。間違って切断したら爆発する……という、中心だけ取り出したら子供でも考え付くようなプロット。しかし、こういう単純なお話を扱わせると三谷という人は本当に巧い。単純なプロットの傍ら、観覧車に閉じ込められた今泉刑事、爆発物処理班として呼ばれた犯人……という、幾らでも転がせそうな舞台を設定しておいて、三谷は物語に次々とドライブを加えてゆきます。


この作品は本格推理ではなく、サスペンスです。
しかし、本来「動の作家」である三谷は従来の「本格推理としての古畑モノ」よりも遥かに面白い作品をサスペンスという舞台で生み出してしまった。伏線の張り方も素晴らしく、特に赤か、青かを選ぶ古畑の最後の決め手はシリーズを通しての白眉でしょう。

三谷は本格推理を書く際に伏線が露骨になってしまう……といったポカを何度もやらかしていますが、それは彼が「動の作家」だからです。この作品の伏線が素晴らしいのは、彼の書くサスペンスが面白すぎて、観客の目をそっちに向けることに成功しているからです。このような比較は無意味ですが、多分彼がこの伏線を「静の物語」、「本格推理としての古畑もの」に盛り込んだとしたら、通常通りの陳腐なものになってしまったでしょう。そういう意味では力業の作家といえるかもしれません。


三谷が全編サスペンスに取り組んだ本作は本当に素晴らしいできばえ。キムタコの憎らしいキャラクター設定もナイスです。最初から最後まで見せ場のオンパレード、とにかく見れ!


2003年8月8日



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