「殺人公開放送」(VS 石黒賢)



石黒賢のタガが外れた爆演が楽しめる怪作。ほんとにブットビすぎです。あまり好きな俳優じゃないんだけど、この演技にはただただ参った。脱帽。


ミステリとしてどうなのかという話題から先に片付けますと、今回は親切すぎたかねえ。見ている人の98%は判ったんじゃないですか?
ばらしちゃいますと、今回はよくある「色盲の犯行」のバリエーション。しかしとにかく判りやすい。
犯人はずっと黄色いサングラスをかけていて、そこから矛盾が発生 → 古畑が指摘というプロットなのですが、黄色いライトのフィルターを解決編の直前で古畑が調べだしたり、矛盾した瞬間の犯人の証言を何度もリピートしたり、「ほら、これだけ教えてやればテメーにもわかるだろ。たまには答え当ててみろよ底辺野郎」とニヤニヤしてるスタッフの顔が浮かんできて辟易。多分ニヤニヤしてない。


これだけ判りやすいと、途中から「何かどんでん返しでもあるのかしら?」と深読みしながら見てしまうわけですが、それにあたる指紋の件は唐突すぎていただけない。確かにそうだけどさあ、途中に伏線が一本も張ってないんだもん。そんなら長々と犯人と話してないで最初から指紋とれよ、そんなことで解決すんなよ! って話ですよ。


やはり今作は石黒賢の怪演につきるだろう。 彼が演じるのはインチキ霊能力者なのですが、その電波っぷりはとにかく凄まじいの一言。大槻教授みたいなのに完全に論破されたあと、床にのた打ち回って踊り狂うシーンは爆笑。
石黒賢って俳優は何をやらせてもコテコテにしてしまうベタ(下手)な俳優だと思っていたのですが、今回の演技はそれが100%よい方向に出ているという稀有なケース。とにかく彼の演技だけで一見の価値はある。

古畑が解決編でしか石黒と話さないというスマートな構成もいい。
そして、これぞ三谷幸喜! と膝を打ちたくなるシニカルな結末。野島伸治程度の凡庸な作家だったら正反対の結末にしてたでしょう。やっぱり三谷は凄いですよ。

「ミステリの部分以外」は古畑作品中ベストを争えるほど面白い作品です。古畑モノではなく、天才霊能力者の軌跡みたいな形でドラマにしてもらいたかった。


2003年7月29日



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