ポップス小説「池袋ウェストゲートパークU」



石田衣良の「少年計数機――池袋ウェストゲートパークU」が面白い。久々に小説を読んで感動。いい作家だなあ、ほんとに。
石田衣良というと、「池袋ウェストゲートパーク」で非常に感心し、「うつくしい子ども」で死ぬほど泣かされたという、言わば私の感性のツボを押しまくってくれる作家でして、それはこの作品でも同じようです。

その明晰な頭脳と行動力のおかげで、ヤクザからもストリートギャングからも警察からも一目置かれている真島誠という少年が主人公。
ネットアイドルのストーカーの退治、風俗強盗の犯人探し……。
トラブルシューター・マコトの元には、自由に動ける人間でないと解決できないような難題が次々と持ち込まれる。そしてそれは時に、深刻なトラブルへと発展する。物語はそうしたトラブルを主軸に、池袋という街を鮮やかに活写してゆく。

なんといっても素晴らしいのは表題作。
手に常に計数機を持ち、世の中のあらゆるものを数で計ろうとしている少年、ヒロキ。
物語は、彼がウェストゲートパークでマコトと親交を持ち始めるところから始まるのだが、この少年がとにかく魅力的。
簡単に言えば、何かの原因で心の一部が壊れてしまいそれを必死に取り繕っている少年というキャラクターで、「池袋ウェストゲートパーク」でも、「うつくしい子ども」でも散々繰り返されてきたテーマなんですが、こういうキャラクターを書かせるとこの人は本当に巧い。恐らく作者もそれなりに鬱屈した人生を送ってきて、こうした人々に対する理解、愛情があるからだろう。異端を異端として排除するのではなく、共存しようじゃないかという視点がそこにはある。

物語の運び方も巧い。ゼロワンの絡み方など、少しメカニックすぎる嫌いはあるが、必要最低限の人数を巧い具合に配置し、サスペンスを盛り上げ、結末に落とす手法は既に確立している。これほどの実力があれば、流行作家の仲間入りをするのは時間の問題だと思われる。

そして、なんといっても結末。
この充足感をどのような言葉で表現したらいいのだろう。長年離れ離れになっていた友達と再開した時のような、なんともいえない満ち足りた気持ちにさせてくれる。人物の置き方から見せ方までが全て完璧で、一枚の絵画を見ているかのよう。これはお読みくださいと言うしかない。

この作品をジャンル分けするとしたら、ポップスと呼ぶのがもっとも相応しいと思う。
ただ、そこには産業ポップスのようなノーテンキな明るさはない。残酷な話もたくさん転がっているし、人も驚くほどあっさり死ぬ。そういったものを傍目に見つめつつ、上を向いて明日を見つめる視点。それが本当のポップスなのだと思う。傑作である。





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