小林よしのり 「戦争論3」
☆☆☆☆★



最近の「SAPIO」を読んで小林は発狂しちゃったんじゃないかと思ってた私ですが、この作品を読んで安心した。小林健在どころか、彼の思想の集大成とも言われるべき重厚な大作になっていて読み応えがありました。もともと小林の巨大な思想を、「SAPIO」の7ページかそこそこに収めようとすると論理がポンポン飛んでしまい、電波っぽくなってしまうのが違和感の原因なんでしょうね。


とりあえず今作で小林はその思想の結論に達したのではないか。「ゴーマニズム宣言」という漫画は、この地点に辿り着くまでの軌跡だったのではないか。
私が書こうとするとどうもステロタイプになってしまい、余計な先入観を与えてしまいかねないのでやめておきますが、反米の先に彼が見ていたものの正体がわかり、私としては大いに満足。命に代えても守らなければいけないものがあって、それが何かという地点に向かい論を構築していく構成のダイナミズムは本当にすごい。これを50歳で書いちゃうんだからなー。エネルギーの塊のような人ですよ彼は。
人間死んだら終わりなどとしたり顔で言う人がいるけれども、死んでも周囲の人間との関係というものは残る。死んだら終わりじゃなくて、何のために生きるのか(=死ぬのか)ということはもっと個々人が考えるべき問題だと思いましたわ。


「戦争論」シリーズは、思想的立場がどうであれ、現在を生きる日本人として読んでおかなければいけない作品です。毛嫌いして読まない輩、読んでもいないのに「小林は右翼だから」と敬遠する輩は器が知れるというものです。総員必読の作品。


2003年7月26日




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