クウェンティン・タランティーノ 「キル・ビル vol.1」
☆☆☆☆★



ネットでの評判が押しなべて悪かったので、正直全く期待しないで見に行ったのですが、以外や以外実に面白かった。

見終わった印象としては、時代劇を現代に置き換えたトンデモ映画、という感じです。
恐らく「キル・ビル」批判派が真っ先に指摘するであろう様々なポイント、例えば、

・なんで主人公の女はわざわざ刀なんかで戦うのか。銃使えよ。
・日本の暴力団はピストルで武装してますー!(ププー!)
・なんでこんなにチャンバラが出てくんの? 日本人向けサービスのつもり?
・何十人も死んでるのに警察が一向に来ないのはなぜか。
・刀持ったまま飛行機には乗れません。

といった辺りは、「これが時代劇だから」で片がつくんですよ。黒沢映画で切りあいの最中に警察が来ますか? 時代劇では往来で侍たちが刀を帯同してますよね? etcetc...

「キル・ビル」で最も力の入っていたアクションシーンにしても、ワイヤーワークなどを使ってはいますが、基本的に様々な時代劇のフォーマットがそのまま出てくる。
「キル・ビル」を見終わって、私はどうしてもタランティーノが時代劇をやりたかったとしか思えんのだよなあ。でも純時代劇は無理だし、現代劇にするとリアリティがなくなってしまう。
それならば敢えてリアリティを完全に無視し、パラレルワールドの日本を作り上げてそこに全部ぶちこんじゃえ、という逆算で、このいびつな映画は誕生したんじゃないか。日本人向けのサービスなんかではなく、やりたいことを合理的につきつめていったら結果的にそうなってしまったのではないか。見ながらそんな風に感じました。


「やりたい」先行で世界までを作り上げてしまった映画なので、当然見る対象は選びます。選ばれた人間が偉いとか、ハイセンスだとかそういう選民思想とは関係なく。
まず、タランティーノとはどういう人なのか、というエクスキューズを踏まえることは絶対
出来るなら「パルプ・フィクション」、「レザボア・ドックス」辺りを見て、この監督がどれだけの才能の持ち主かを知ってからの方がいい。
「なんか最近話題になってるみたいだし、よく知らないけどひとつ見ておくかな」とか、「ほう、ゴミどもがそんな信奉してるタランチーノってのはどんなやつだ、ひとつ粗を探してやろう」みたいなスタンスで行ったら間違いなくつまらない。タランティーノの感性に好意的で、メッセージ性皆無のB級馬鹿映画だということを踏まえて見れば多分楽しめると思います。


私はタランティーノみたいな才能のある作家が、こういう日本リスペクトの映画を撮ってくれたのは嬉しい。
逆に、50年後にハリウッドの作家に影響を与えるような邦画が今撮られているだろうか……と思うと哀しくなってくる。まあそれはまた別のお話。


2003年10月28日



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