クゥクゥクゥ
ぺたぺたと頬を摺り寄せ、ぎゅうと抱きしめて。
クゥクゥクゥ
時たまクツクツ笑いながら、それでも一定の音階で紡がれる名前。
頭を心配したくなるような、鬼柳の行動。しかし腕の中に抱き込まれているクロウもまた、クフクフ笑っているからしょうがない。
さらさらの長い髪は、触るととても気持ちがいい。昔は始終触ることの出来なかった薄水色のその髪が、今は触りたい放題で。一房ぎゅっと握っては離し、握っては離しを繰り返している。
ずっと鬼柳が寝泊りしていた部屋に連れ込まれ、すぐにやるのかと思えばずっとこんな感じで。でもお互いに、触れられる距離という無上の喜びを感じているのだから、なかなか先に進まない。



クゥクゥクゥ
「おまえ、そんな名前呼んで楽しいの」
何度も何度も耳元で囁かれ。その低い伸びやかな声を楽しみながらも、クロウは少し意地悪な顔で鬼柳を見上げた。
見上げたといっても、その距離は少し縮まっている。ほんの少し、ずっとずっと鬼柳を見上げてきたクロウが、あれ?思うくらい。
今更そんなことで、得意になったりはしないけれど。
「なんで背伸びしてんの」
クツクツと笑う鬼柳の顔がアップになった。鬼柳が屈んだわけではない、クロウが背伸びしたから。
「してねぇよ」
明らかにしているのに、クフクフ笑うクロウは気にしない。
「大人んなったんだよ俺も」
ちゅっと触れた唇に、鬼柳の目が見開いた。前は絶対に自分からしなかったキス。
クロウが笑う、全然余裕だとでもいうように。
ちゅっちゅっと、何度も何度も子供騙しのキスだけど。触れるたびに鬼柳の腕が強くクロウを抱きしめて、ずるずると身体を引きずって行く。向かう先はどうやらベッドで、目の端でそれを確認したクロウは、ニィと笑って鬼柳の身体を強く押した。
「っ」
マットレスの上にぼすと跳ねた鬼柳の身体。その上にクロウが覆いかぶさって、もう一度ちゅっと唇に触れた。仕草はまだまだ幼いけれど、昔よりもずっと積極的で。
「何これ、大人の行動?」
「大人の行動ですよ」
ですよ!
たまらず声を上げて笑い出した鬼柳に、クロウは一瞬だけ不服そうな顔をした。それでも思い直したように、すると擦り寄って。かぷりと、鬼柳の鼻に噛み付く。
まるで猫のような仕草。そこは変わっていないところで、でも大胆な行動には磨きがかかった様子。
違うところと、同じところ。確かめたい気もするけれど、きっとクロウはそんな暇をくれないし、鬼柳だって与えない。





「大人な行動ですか」
「ですよ〜」
クツクツクツクツ
するりとクロウの手が、鬼柳の股間を撫で上げる。その間にも鬼柳の手がクロウのアンダーに潜り込み、まだ若干丸みを帯びた背の感触を楽しんでいた。
「クゥクゥ、クゥって言って」
「意味わかんねぇ…クゥは欲求不満です?」
「やべぇ満足させねぇと」
クツクツクツと、密やかに笑い合いながら。どうしようもないことを囁く合間にも、鬼柳はきっちりズボンを脱がされたし、クロウの上半身はいつの間にか裸になって。
「あっ…」
かぷりと乳首に噛み付かれ、一瞬だけ上がった声。でもすぐに口の端が吊り上り、お返しとばかりに直に触れたペニスを扱かれる。こくと鳴った鬼柳の喉が、それでもまたクツクツ鳴り始め。
「ふああぁっ?!」
本格的に舌が動き出す。同時にクロウのズボンのチャックが下ろされ、隙間から冷たい手が入り込んできて。
「きつ…」
アナルの入り口をやんわり押した鬼柳が、乳首を口に含んだまま嬉しげに囁いた。
「使ってねぇ?」
「ふぁ…っ俺…」
「クゥ」
何のポリシーだろう?
ややきつくなったクロウの目が、それでも諦めたかのようにやんわり細まる。
「クゥは、鬼柳京介と名のついた奴にしか入れさせねぇ…です」
クツ
「じゃあ俺貰っていいのな」
クツクツクツ





ズボンが勢いよく降ろされて、露になったクロウの下半身を抱きこんで。ほとんど鬼柳の胴体に乗りあがったクロウの身体。至るところに唇が触れ、クロウの喉をひくと鳴らす。鬼柳のペニスは、それでも確りとクロウの手に握られて、確実にその固さを増していった。
暫くして、ベッドに備え付けられた小さな棚から取り出されたジェルにクロウの眉が一瞬潜まる。でもそれが未開封だと見て取ると、満足げにいまだ足に引っかかっていたズボンを脱ぎ捨てた。
するりとペニスから手を離し、額が触れ合う場所まで伸び上がって。
「ジェルぶちまけて、お…クゥのケツに指突っ込んでかき回して、早くお前の頂戴」
早く早く
囁きながら鬼柳の腹部に自身のペニスを擦り付けるクロウは、幼さを残しながらもどこか艶やかだ。だから、次に眉を潜めたのは鬼柳。
「…俺と離れてる間に、随分いけない子になったんじゃねぇ?」
きゅぽと蓋を開けながら、どこか納得できない顔の鬼柳に。クロウもまた、納得の出来ない顔。
「精子出るもんは入れてねぇ!…です」
だから欲しくてたまらない
また早く早くとうわ言のように呟かれ、それで苦笑するなという方がおかしい。
「っっ…冷たっ」
どろりとしたジェルが、ぼとぼととかけられる。それはクロウの尻を伝い、ペニスを通って鬼柳の腹部を汚した。
「じゃあ、精子出してやんねぇとな?」
「ああっん!」
「チンポのが気持ちいいって、もう一度身体に教え込まないとだ」
「あぅっ…っ、っ…!ゅ、び…っすご、あっ指もっ…」
ぐちゅぐちゅと、ジェルを流し込むように指でかき回したクロウの体内。熱くて締りのいいそこが、鬼柳の指を銜え込み奥へ導こうとうねる。無意識なのだろう、ゆらゆら揺れるクロウの身体が、時々びくりと震えるのは前立腺に触れたからか。
「ひぅっ!」
暫くして、大きく仰け反った喉。鬼柳は一瞬驚いたように目を見開き、びくりびくりと震えるクロウの身体を眺めて。それから、やんわりと笑った。
いや、やんわりというよりは、少し含みのある笑み。
「ドライでいけるんだ」
「ぅぅ…っしら、な…っ」
「知ってんだろ、これ」
お前の身体は
ずくずくと3本の指を突き入れて、内壁の一点を引っ掻くたびにクロウの肩が跳ねる。全身は既に燃えるように熱く、いつもは意志の宿った青灰の目がとろりと蕩けそうで。
「ぁんんっ…ぁ!ゃ、も…っいれ…っきょう、すけぇ」
とろとろの目がやんわり笑う。その笑みはあまり性質のいいものではなくて、普段のクロウからは想像も出来ないような種類の笑み。甘ったるく鼻にかかった声も、ちろりと覗く赤い舌も。
「京介のチンポ、おれのケツ…っいれて、もっかいお前の身体、覚えさせてくださ…っい」
はふと吐き出される熱い息も、ほんのり色付いた身体も。
「おまっ、も…お…クゥでしかいけない身体んなって?」
たまらない





ひゃ
小さな声が上がったけれど、鬼柳は気にせずクロウをベッドに静めた。気遣いなんて言葉は、随分前に消えていて。理性なんてものは、とっくの昔に煙を上げてぶちギレている。
「クゥもうおまえ、マジでやばい!」
「ぃうっ!…っあ、あっ!はい…っすご、きょうっ…!」
「っ!…っお前こんなエロいのに、他の誰食いたくなるって!」
久しぶりに入るアナルは、覚えている感触よりもずっと熱い。ずっとずっと熱い。
纏わりつく内壁が、鬼柳のペニスの形を覚えようと蠢き、銜え込む。
ペニスが入った瞬間から激しく震え出したクロウの身体は、跳ねるたびに鬼柳の背に回った手が爪を立てて。
「やぁっ、おれ、の…っこれ、おれのだっ!」
駄々をこねるように首を振るたび、オレンジの髪がシーツに散る。恍惚としたクロウの表情は、上気した頬や潤んだ目も相俟って驚くほどに幼く見える。それでもずっと口元に浮かぶ笑みが、そんなものではないと伝えていて。
「いい、ん…っいっちゃ、ケツでいっちゃうっ」
「いくらでもっ、いけんだろ!」
ガツガツと内壁を抉るたびに、それこそいくらでも。
いくらでもいかせてやりたいと思うのはクロウだけで、どんなに爪を立てられても愛おしいと思うのもクロウだけ。
「熱っ…ひぁっ!すごっ、中でまたおっきく…っ」
想えば想うほど、身体もそれに従いクロウのアナルを埋め尽くす。届く限界まで突き入れれば、クロウが悲鳴じみた声を上げた。その仰け反った首に犬歯を立て、まるで獣じみたセックスになったってお互い気にしない。
「も、クロウ…クゥ、出るっ」
「あ、っはやく、ちょうだ…っ精子、京介の!」
「ああ、全部!全部出してやる」
ギリギリまで引き抜いて、最奥まで突き入れて。
クロウの体内に精子が注ぎ込まれた瞬間、鬼柳の肩にギチと歯が食い込んだ。強すぎる快感に耐えられなくなっての行為か、それは血が流れるほどに深いものだったけれど。お互いそれに気付いたのは全てが終わった後。まだまだ先の話。





何度か内壁を擦り上げて、言ったとおり全て吐き出して。鬼柳がほうと息を吐いた途端、クロウがシーツの上にぱさりと落ちた。随分と無理な体勢で抱きついていたのだろう、指がふるふると震えている。
それでもまだ、繋がったまま。下を見れば、クロウはまだ達していない。とろとろと先走りを流し続けるペニスは、まだまだ先があるのだと期待しているようで。
「あっ…」
とくんと、内壁の中で血が通う。すぐにまた硬さを取り戻しつつある鬼柳のペニスを感じたのか、クロウがうっすらと笑った。
「もっと、く…ださい」
「もう止めようぜそれ」
思わず苦笑を漏らした鬼柳に、クロウはクフクフ笑って。
「クゥってのは?」
悪戯にゆらりと腰を動かして問うから。
「クゥは、続行」
鬼柳もやんわり笑いながら、緩く腰を振り始めた。



END




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