約定
第二北男子および、桜花女子合同学校祭の開催
学校祭期間中は双方の学校を行き来する事がある程度可能とする
経費面において、双方合同ということで最高約35%のコストダウンが可能
同学級同クラスの企画を合同にする事で、1クラス分経費を約20%までアップさせることが可能
それに先駆け、親睦会として4月入学シーズンに合同宿泊学習を提案
学校という限られた箱から他校のシステムを学び、一極化を避ける狙い
合同宿泊とする事により、最大約40%のコストダウンが可能
あらゆる分野に対する柔軟性、社会に出るための最高の教養を身につける事を目標とする我が校に、必要不可欠な要因となるものと憶測
9月前半校内選挙
「とまあ、しち面倒くさい事書いてるけどさ、基本これ先生方用の餌だから。美味しいだろ?」
にっと笑って見せた京介に、ユーモアととる教員は少ない。ただ実際、この不況の今この提案が美味しいのは確かで。
「その他色々、俺に任せてくれれば一年で黒字にしてみせるぜ?好きだろ日本は、改革ってやつがさ。んで生徒諸君、お前らは問答無用だろ。来年だけじゃねえ、俺らがいる間にシステムを完全に組み込んでやる。言ったからにはやってやる、完璧にな」
「お前達は今、伝説となるだろう第一歩に立ち会っている!光栄と思うことだな、勝利となる第一歩だ。鬼柳京介の無駄な頭と話術、それに俺の偉大なる頭脳とカリスマ性が加われば負けはない!」
京介の宣言を受けて次を述べたジャックは、何処までも不適にぐると講堂を見渡す。ある意味その発言はカリスマ性を感じさせる気もする。
勿論、観衆が全て男子だからであって、女子が入ればそのカリスマ性は絶大だと、それは全員がわかっていることだ。
京介とジャックが組んで、平穏無事である事は皆無。しかし最高に楽しくなる事必須。約定演説を2人でやってのける時点で、既に型破りなのだから。
「この学校に入学して良かったって思える、盛大な祭りを開催してやるぜ!」
「俺達が言うなら絶対だ!Roll the dice, take a chance, a chance on me…否、サイコロの目は常に1だろう!!」
「安心してついて来いお前ら!」
「不可能など可能以外に有り得ないと見せ付けるぞ!!」
まあそもそも、女子高との合同学校祭以上に魅力的な約定などないという話し。
むぅと不機嫌そうな顔で、クロウが京介の頬を抓る。物凄く可愛い仕草だが、捻るまで行くと涙目になるので止めて欲しい。
「クゥ痛っ、ちょ、本気で」
「お前のせいでなぁ…本当に、お前のせいでなぁ!」
「クロウと俺、強制的に生徒会に入る事になった…」
なるほど、敵(教員)もさるもの。
ジャックと京介相手に生徒会入りを阻止する事は不可能、約定を撤回させるのも不可能。ならば桜花の方に封じ手を導入させればいい…合理的だが詰めが甘い。
「クソ、誰が俺のバイトを肩代わりするんだ!生活かかってんだぞ!それにタイムバーゲン!大抵3時から4時までなんだよ!ただでさえギリギリだったのに、ガチで無理じゃねえか!!クソ、クソ!!合同学校祭?やってやろうじゃねえか!!」
目前の怒りは見事に教員達に向く、強制にしたのだから罪状はそっちが上。
「生活費に関しては、俺がなんとかする。プログラムが売れるからな…あとは生活補助、それにクロウは鬼柳がバイトを回すから大丈夫だろう。折角の学校生活なのだから、楽しまないと…先生方にも、多少思うところあり、だしな…」
密かに遊星も腹を立てているようだ。これは好都合。
「アキも生徒会に入るだろう。アキが書記、クロウが体育委員長、俺が会計になりそうだ」
「こっちは予定通り、俺が生徒会長で京介が副会長だ。なんだ、楽しくなりそうじゃないか」
「なってもらわないと困る」
憮然とした顔のまま、遊星は6個目のチーズケーキに手を伸ばした。
この頃恒例になりかけている、日曜の京介宅訪問(ケーキ的な意味で)。因みに夕食は大量の冷やしラーメンだ。カーリーは本日もきゅうりとハムと卵を大量に刻み、ご丁寧に茹でる用の麺を袋から全部出して(その数10玉分)用意していった。これはもう食べるしかない。
「でもこの頃は、姉ちゃんいないときはクゥが作ってくれるから有難い〜。父さんもすっげぇ楽しみにしてるんだぜ?」
ルドガー家、男2人は家事全般壊滅的。今まではだからこそ、文句も言えず大量の(そして大抵1品)料理に挑んでいたのだが。クロウが恋人になってからは、泣きつけば3回に1回は渋々作りに来てくれる。飛びぬけて美味しいわけではなくても、心温まる家庭料理を。
京介どころかルドガーでさえ帰宅時間が早くなった事から、その有難さが伺えるというもの。
「…その分うちの食事はちょっと貧相」
「お前が作れば良い事だろう!何故クロウがいない時はオールカップラーメン!」
「……食べるだけまし」
「俺が言うからな!言わなければ食わないだろうな!お前もクロウを見習って、いい加減嫁入り修行のひとつでもしておけ!」
「………お嫁いかないもん」
「おまっ!!!」
この頃京介が結婚結婚言うからか、認めないながらもジャックが感化された様子。
クロウは嫁云々に関してはまだ渋っているものの、なんだかそのせいで幼馴染カップルに溝ができた気がして、困ってしまう。
クロウの家事能力は遊星のおかげと言っても過言ではないから、その辺考慮してあまり遊星を追い込まないで欲しい。出来る事にこしたことはないけれど。
問題は、京介が全く全然2人の状況に無関心という事。面白そうに眺めるだけなのは、幼馴染ではないにしても友達甲斐がないのではないだろうか。一度など俺の問題じゃないからと、ばっさり切り捨てたこともある。
クロウはその辺も少し心配。
それでも、不安を感じたとき、真っ先に気付くのはいつも京介だ。
抓られた頬を摩りながらも、クロウと喧嘩中の2人を交互に見て。
「あの2人、99%別れないぜ?」
あっけらかんと言い切るから。なんだか、そうなのかなとも思うわけで。100%じゃないところがリアルだから。
100%を出せない京介にも、少し不安は感じるけれど。
「まあ、そうだろうな」
とりあえずは、信頼する事にした。
「これからもよろしくな、体育委員長兼未来の嫁」
「…嫁はまだ保留だ」
END
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