猫耳パーカーというものが存在していることを、京介はネットの情報として知っていた。
しかし今、物珍しそうに京介の白く長い髪を掴み、くいくい引いている小動物(サイズ的な意味で)はパーカーを通り越して着ぐるみパジャマだ。黒い猫耳のついた大人サイズのパーカーで足まで隠れているわけだから。
とりあえず抱き上げて、フードの奥から覗く青灰を一生懸命ぱっちり開き、きょとんとした顔の少年をマジマジと覗き込んでみる。
「…なんで?」
「いや…わかんね」
返答は、腕の中からではなく横から戻ってきた。髪が引っ張られるのも気にせず横を見れば、途方に暮れた顔のクロウ。
…クロウ、そうクロウ。
もう一度腕の中の少年を見る。…マーカーがなくて、幼すぎるクロウ。細胞分裂かと思うほどにそっくりな。
「…俺の」
「産めるか!!」
即座に返って来たツッコミに、漸く京介も軽くない混乱の渦から抜け出してきた。
そもそも最初から、クロウが産ませましたという選択がないのだ、京介の頭の中には。だからクロウが産んだという発想しか出ることがなく、混乱する。
マジマジと少年クロウを見て、それからマジマジとクロウを見て。すっと伸ばした手が、クロウの身長を目見当で測ってみる。そこでなんとなく、原因がわかった気がした。
どう考えても、頭半分ほどクロウが縮んでいたからだ。
「闇のデュエル系?」
でも本人が気付いていても、縮んだ?なんて言ったら確実に殴られるので。非現実的な現象において最も最適な原因となるだろう非現実行為の名称をあげれば、クロウの視線が泳いだから多分間違ってはいないのだろう。
「…どうしたもんか」
呟いた京介に、連れてきたクロウも困り顔。でもその時京介の腕の中で、少年がもぞと動き。困り果てた大人(彼から見たら)を、その大きな青灰で交互に見つめ。
「にゃあ…にゃ?」
京介とクロウに向けて、ご機嫌に鳴いたから。
「「にゃあ」」
とりあえず、保留にした。










コクロと呼べば、パーカーを引き摺りながらもぱたぱたと歩み寄ってくる少年クロウに、京介はやんわり笑みを見せる。
ニコとウェストには説明するのが面倒なので、とりあえずご近所に一晩お泊りさせることにして。それからずっとコクロを構い通しの京介に、クロウは呆れた顔。コクロという名もひどく満足げな顔で京介がつけたのだから、その愛着振りがわかるというもの。
因みにアクセントは、クではなくコ。
「よし、よくここまで来れたな!!」
上機嫌でコクロの頭をわしゃわしゃ撫でる姿なんて、一応付き合いが長い部類のクロウですら見たことがないくらい。
「次はクロウまでな!」
「くろまで〜!」
なんてひっそり過去のあれこれを思い出している間に、いつの間にか遊戯に組み込まれていて。慌てて椅子から立ち上がれば、既に足元には動く黒い猫耳パーカー。
最後の最後でかくんと躓いた身体を慌てて受け止め抱き上げれば、子供特有の笑顔が目の前に溢れている。
たとえ自分と同じ顔だって、可愛いものは可愛い。
「すげぇなコクロ!」
両手が塞がっていたのでこつんと額を擦り合わせ褒めれば、キャラキャラと笑い声まで華やかだ。うっかりクロウも笑顔にだってなる。
いつの間にか傍に来ていた京介が、なんだか物凄く幸せそうな顔をしているのはとりあえず無視。
「よし、次は俺と遊ぼうぜ!何しよう?」
問えば、んんんと考え込む素振りで。しかしクロウはその時点で、コクロのふんわり高い体温に気付いた。
熱ではない、これはあれだ。
「の、前に。昼寝か?」
おねむ。
「やだぁ」
猫耳がかくんかくん動くほど首を振っても、コクロの目はとろとろと塞がりかけていて。コクロの顔を覗き込んだ京介も苦笑を漏らし、ぷにと柔らかい頬に触れ、宥めるように何度かぷにぷにと優しく押した。
その後京介が用意したのは、ニコ愛用のブランケットで。ソファだと落ちたら危ないからと、床に平たいクッションをふたつ用意し、その上に受け取ったコクロを横たえて。
「起きたら飯!そのあとクロウにいっぱい遊んでもらおうな?」
フードを払って額に唇を落としたその姿は、まるでパパだ。コクロもゆると手を伸ばし、京介の髪を掴んだ仕草がなんだか安心しきっている。
「おやすみな、コクロ」
ブランケットをかけながらそう囁けば、コクロの視線がすいとクロウに向けられて。ふうわり笑うものだから…俺のポジション何マ…まで考えて、強制終了。余計なことを考えるよりは、あっという間に寝入ってしまったコクロの寝顔を見つつやんわり幸せに浸る方がいい。
「…さて」





さて。
くいとクロウの袖を引けば、残念そうな顔をしながらもひっそりとその場から移動して、隣の部屋。台所。先ほどまでキャラキャラと子供の笑い声を聞いていた分、食卓はとてもひっそりとして寂しくすら感じるけれど。
この非現実的な状況。いくら黒猫パーカー着ぐるみコクロが可愛いからといって、放置しておいていいわけがない。
「どうする」
「わかんね…」
その通り、わからない。
京介はたとえ闇のデュエルであろうと、クロウが負けたなどとは全く考えていないので。クロウが分裂してしまったのなら、相手はもっと酷い目にあっているのだろう。それでも分裂が戻らないのだとしたら、それはもうどうしようもない。
「なら、とりあえず色々やってみるしかねぇな」
呟けば、クロウが心底困った顔で見上げてきた。コクロに愛着を感じ始めたのは、京介だけではないということ。
でも仕方ない、京介にとっては縮んだクロウもコクロもクロウだ。本来はひとりのクロウ。二人いることは、それはそれで幸せだけれど、色々と困ってしまう。
………二人?
「…効果発動」
「は?」
「同じ属性が相手フィールドに表表示で二体以上存在する場合、手札からカードを一枚墓地へ送ることで、一体を選択して破壊」
「なんだそれ」
「クロウ属性が二体以上存在するので、俺はこの効果を発動する。俺が捨てるのは…理性?」
ちょ
は、聞かなかったことにした。
食卓テーブルに寄りかかっていたクロウを押さえテーブルの上に抱き上げる。縮んだクロウはコクロ分体重も減っているので、思った以上にあっさりと。
「なっ!なんでお前が黒羽の効果発動できるんだよ!!」
「目の前に狩る相手がいるから?」
答えになってねぇ!の叫びごと、唇に噛み付く。せいぜい獣戦士らしく、荒々しい感じで。
非現実的という意味では、京介だってダークシグナーだった過去を持つ。もしかしたら、もしかするかもしれないではないか。
かちりと歯が当たったけれど、気にしない。押し戻そうとするクロウの手も、両方掴んで後ろに纏め押さえつけた。獣戦士に守備表示など存在させてはならないから、攻めるだけ攻める勢いで。
というか、ディフェンスなどないも同然なので。










「ゃああ!ぅぅッ」
くちゅりと音を立てて入りこんだペニスは、普段より多少きついくらいで。少し辛そうに眉を寄せるクロウの表情も、それほど酷いわけではない。ほっと息を吐きながら、京介は少しだけ安心した顔。
先ほどまで散々弄られていたクロウの身体は、テーブルの上でほぼ全てを晒していて。力加減がわからないからか、何時もより抵抗も弱弱しく。
ふるりと震える肩がとても愛おしく感じ、ぎゅっと抱きしめた。
「ちゃんと入ったな」
「うぁ…ッふかいぃっ!」
あやすな言葉とは裏腹、抱き込むことによって結合が深くなったのは、不可抗力…ではなくて。
「クロウ今軽いから、抱き上げてもできるよな」
ククッと笑みを漏らしながら抱き上げれば、重力に従いクロウの身体がずずと落ち、より深くまで。
ぎりと腕に立った爪も気にせずに、大きく揺らせばクロウが仰け反り喉を晒す。唇を落としそれから歯を立てると、ふるふるとオレンジの髪が揺れた。
獣戦士に、ディフェンスはないから。
「やうっ!あっっ!きつっ、いぃ!きりゅ、ゃ!」
待ては、聞こえない。
宙をさ迷ったクロウの腕が、傍のテーブルに触れ少しでも体重を逃そうと掴んだ。おかげで体勢が安定し、腰を確りと押さえることが出来て。勢いをつけて打ち込めば、ぐちゅりと思いの他大きな音。
それだけ激しく揺さぶっている、久しぶりだから尚更。
「ああっ、あっあっ!ひぅっ!」
クロウはもう、悲鳴に近い喘ぎ声。今まで体験したことがないくらい深くまで抉られているのだから、しょうがないこと。
クロウの喉が鳴る。拒否の言葉すら口に出せず、ただ揺すられるまま。それでもひくりと立ち上がったクロウのペニスは萎えることもせず、たまにぴちゃと液を飛ばして。
「やぅ…も、やぁっ」
いつもより掠れ、高い声は。否定しながらも、どこか縋るようにも聞こえ。ぬれぬれと涙で濡れる青灰は、確りと熱を帯び。
ああ、なんて可愛いんだろう。
「クロウ、やばい…ッ」
もう一度確り抱き上げ抱きしめて、テーブルから離れた腕が確りと京介の首に巻きついた事にすら感じるなんて。なんで離れて暮らしているのかわからないくらい。
「っ!クロウっ」
「ひぁあああっっ!」
強く深く打ち込んだペニスがクロウの内壁に精液を撒き散らした瞬間、どくりとクロウ自身も自分の腹に精液を散乱させていた。



闇のデュエル系のアクシデントでも、コクロがいてくれるならクロウもいてくれる。それならこのままでも、別にいいかな。
とくとくとクロウの中に精液を吐き出しながら、京介はふとそんな事を思っていた。
まさか、それが失敗の原因ではないと思うけれど。











「馬鹿ッ」
小さな声で、先ほどからクロウが同じ言葉を繰り返す。
馬鹿ッ馬鹿ッ馬鹿ッ
彼の目の前では、コクロが上機嫌にチャーハンを頬張っていた。その横では、スプーンを持ち上げるたびに袖にご飯粒をつけるコクロの世話をしながら、京介がクツクツ笑っている。
「可能性のひとつだろ?」
それが駄目だっただけの話
つらっと言い切って。食卓テーブルに用意されたチャーハンは、勿論クロウの分もあるけれど。先ほどまで散々貪られていた場所で、クロウが悠長に食べられるわけがない。
冷めてしまったチャーハンほど切ないものはないけれど、後で肉でも焼いて居間で食べさせればいいだろう。たんぱく質の摂取は、今後にも大きく拘わってくる事であるし…。
「だから次は…墓地に送られたターンの最後に、手札かフィールドから獣戦士族、獣族、鳥獣族のどれか一体を生贄に…」
「ちょま…」
「俺は鳥獣族を選択…」
「マンティコア復活早すぎだろっっ!!」
「まんてぃ?」
思わず叫んだクロウに、幼い声が返って来た。コクロだ。スプーンを咥えながら、きょとんとした顔で小首を傾げている。それにあわせ、フードの猫耳もへなっと伏せる。
クククッと押えきれない笑みを漏らす京介と。コクロの前で怒鳴れないクロウと。よくわかっていないコクロと。
よくわかっていないコクロは、楽しそうな京介と顔を真っ赤にしたクロウを交互に見つめ。説明がないことに気がつくと、首を傾げたまま一声鳴いた。
「にゃ〜ん?」
「いや、デュエルの話。コクロはデュエルわかるか?」
「でゅえる!」
聞いた途端嬉しそうに叫んだコクロの頭を撫で、ついでにほっぺについたご飯粒を摘み口に入れながら。
「コクロ、何のカードが好きだ?」
聞けば。
「こくぅ、げきりゅうそ〜!!」
これまた元気良く叫んだ。
こいつ、ガチだ…
二人が同時に思ったとしても、仕方のないチョイス。しかもトラップカードが一番好きとはどういうことだ。
「ゴドバとかじゃなく、か?」
「んん、げきりゅうそ〜!!」
クロウの問いにも頑なに首を振り主張するコクロは、最後ににっぱり笑って京介を見た。
「いんふぇるにぃとたっぐ組むならひっす〜!!」





あ、とクロウが小さく声をあげた。
「インフェルニティ、な?」
そのすぐ後に、コクロの言い間違いを修正してやり過ごしたつもりらしいけれど。
墓地復活が多いインフェルニティ、激流葬はさほど怖くないわけで。
「タッグ組んでくれんの?!」
それは初耳。思わず叫んだ京介に、クロウの視線は向かなかったけれど。
「可能性の問題、だろ!!」
顔を真っ赤にして叫ぶから、もう笑うしかない。可能性の問題として、デッキに入れるカードまで確り考えていてくれたのだから。
「クロウ、コクロ、大好き」
笑顔で何度も、宣言するしかないではないか。



END




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