honey beans





 人数分の恵方巻き、大きな袋一杯の炒り大豆。
 少々調子に乗って準備しすぎたか、そう思いながらもマーサハウスの裏にブラックバードを停めたクロウは、ただ純粋に笑んでいた。
 
 2月3日、節分の夕方。
 サテライトでは見たこともなかったような大きな巻き物を食べ、サテライトでは出来なかった贅沢として、厄払いのため豆を巻くという習わしがある日。
 名だけは知っていたが、夢物語だった。
 それが今なら実現できるのだ。胸が躍らないはずがない。
 恵方巻きと大豆は、配達業を経て知り合った人々が事情を知って分け与えてくれたものだ。表向きには『ブラックバードデリバリーへの依頼として、マーサハウスの子どもたちへ届けて欲しい』と頼まれたものだった。
 彼らは、サテライト出身だというクロウに対し、ゼロ・リバースで知人を失ったのだと語ったことがある。その中には幼い子供もいたようで、クロウが育ててきた子どもたちに、その影を重ねていたのかもしれない。
 いつかはデュエルアカデミアに通う日が来るのだろうかと、談笑までした。それこそ、家族のように。

「マーサ」

 台所の位置にある窓をたたくと、窓を開けて家主の女性が顔を出した。そしてクロウが差し出した袋を引き上げながら、苦笑する。

「…随分仕入れてきたんだね、あんた」
「片付け手伝うって」

 マーサは肩を竦め、さっさと窓を閉めてしまった。予定通りだ、これからマーサが豆を持って子どもたちを玄関先に集めてくれる。
 道中仕入れた鬼のお面をしっかりと顔に固定し、クロウは玄関へと回った。家の中から、はしゃぐ声がする。初めて経験する豆まきだ、当然だろう。
 よし。
 気合を込めて、ドアを見る。これから飛んでくる豆鉄砲を、全て受け止めてやらなければ!


「おらあーっ!悪い子はいねえかーッ!!」


 クロウは鬼というものをさほど知らない。ジャックや遊星に相談した結果、どうやらこうやって襲いかかるものらしいと断片的な知識だけを得て今日を迎えた。わーっと子どもたちが目を丸くして慄いたので、間違ってはいないようだと、面の下で笑う。
 出来るだけ威圧的に、と両足を開いてしっかり地を踏みしめ、両腕を振り上げてぐるりと彼らを見回す。
 一番幼い少女、ココロが、面の穴から覗く目を合わせた時、ゆっくりと首を傾げた。

「クロウ兄ちゃん…?」

 うっ、とクロウは動きを止める。
 ココロの発した一言は瞬く間に伝染して、ホントだ、ホントだ、と子どもたちの表情は瞬く間に恐怖から喜びへと変わっていく。
 これはまずい、そう思ったクロウは改めて両手を振り上げた。

「お前らみんな頭から食っちまうぞー!豆じゃねーと追い払えねえぜー!」

 可能な限り低く出した声に、子どもたちは困惑して互いに顔を見合わせる。慌ててマーサが子どもたちの手に豆を握らせ、鬼は外、と見本になるべく豆を二粒だけ投げてきた。
 たどたどしく、子どもたちは手を持ち上げる。しかし、ココロの手の中の豆は、ぱらぱらと床にこぼれてしまった。

「…だってこのお豆硬いよ…」

 クロウ兄ちゃん、当たったら痛いよ。
 呟いて、しゅんと俯いてしまう。聡い年長の子たちが、どうにか雰囲気を変えようと、首を捻り始めた。

 慕われているのは純粋に嬉しいところだが、どうしたものか。
 クロウが自然顔を持ち上げ、マーサと目を合わせた時。マーサは、おや、と目を丸くした。

「…えっ」

 何が起きたのか、一瞬だけ分からなかった。黒に包まれた腕が、クロウの首をとらえて抱きこむ。咄嗟に背後へ攻撃をはかった手は、腕の感触に覚えがあることに気付いてギリギリの位置で止まる。
 子どもたちの顔が一瞬で塗り替わる。驚愕と恐怖。クロウの視界に、背後の男の右腕。その手にあったのは、このご時世で見るとは思わなかった、少し型の古い拳銃、型の――
 鬼の面をはぎ取られて、視界はますますクリアになる。子どもたちが揃って、緊迫した声でクロウを呼ぶ。拳銃、を突きつけられてなお。

「鬼ってのは怖いぜガキども。大事な兄ちゃん、食っちまうぜ?」

 どうにか首を捻ったクロウには、ゴムマスクの端しか見えない。どくろのようなそれは、見慣れたものではない。
 インフェルニティ・デス・ガンマンのマスクであるとクロウが知るのは、それからしばらく後。

「クロウ兄ちゃんを返せー!」
「鬼は外ー!クロウ兄ちゃんはうちー!!」

 さりげなく『鬼』がクロウを家の外に押し出すと同時に飛んできた、無数の豆鉄砲を見送っている時だ。
 正体など分かりきっている。唖然と立ち尽くすクロウの横で、最後の豆鉄砲を受けてわざとらしい悲鳴を上げて倒れた男。子どもたちはわっとクロウの周りに集まって、落ちた豆をまた拾って投げつけようとしている。はっとしたクロウは、慌てて彼らの手を止めた。

「も、もういいぜ、鬼柳!」

 きょとんとした子どもたちが、視線を倒れた男に戻した。起き上がった彼は、マスクをずるりと真上に引き抜く。マスクの下にはみでていた長い青みの銀髪は、中では随分乱れていた。

「…お前ら、いい投げっぷりだったぜ。鬼なんてみんな出ていっちまったな」

 肩を竦める彼を見て、数人の子供たちが恥ずかしそうに視線を逸らした。チーム・サティスファクションのリーダーを、まだちゃんと覚えていたのだろう。



「ったくよ…ビビらしてんじゃねーよ、お前自分とこはどうしたんだよ」
「朝イチでな、町中で豆まいて満足したぜ。で、真っ直ぐ走ってきた」

 お前も満足できたろ?
 鬼柳はサティスファクションタウンに起きっぱなしにされていたというバイクに軽くもたれながら、やや悪戯っぽく笑って見せる。
 日も落ちて、薄暗い中では鬼柳の髪が一番鮮やかだ。
 ブラックバードに跨ったクロウは、手の中のゴムマスクをぐちゃぐちゃと丸めながら口をとがらせた。

「連絡くらい寄越しとけよ」
「悪い、ギリギリに思いついたんだよな」

 鬼柳は手の中で、シンプルなデザインのメットをくるくるとまわしている。クロウの方は、ほとんど見ていない。

「つかこれ何だよ、リアルすぎんだろ」
「サティスファクションタウンの土産物にどうかって試作品寄越してきた。悪人退治の主役モンスターだからな」

 インフェルニティ・デス・ガンマンのゴムマスクを突きつけても、鬼柳は見もせず苦笑した。意図していることに、気付かないクロウではない。

「……おれには理解したくねえ」
「こっちのが悪役っぽいよな」
「自分で言うなよ」

 だからクロウも見なかった。鬼柳がなぜこちらを見ないのか、薄々感づいていたから。
 見せたくないものだ、どこか薄汚れた欲望を滲ませた瞳なんて。まして、ここで。これから羽ばたいていくだろう子どもたちがすぐ壁の向こうにいる場所で。
 靴底が地を擦る音がした。クロウは動かない。
 開いたままの瞼に手の平が重ねられて、突然の視界の変化に跳ねた身体に構わず、目元を押しつけられた顔は僅かに上向かされた。次を予測して、手の平の下でクロウは目を閉じる。

「いくつだっけ」
「…あ?」

 鬼柳は、小さく笑った。ぽかんと口を開けたクロウを見下ろし、乾いた唇をつつく。

「歳」
「…あ、ああ、19……た…ぶん」

 耳を赤くしてクロウは返す。想像していたものとは随分と違う展開に、ひたすらに動揺を隠そうとして、声は小さくなっていく。これがデュエルであれば一大事だ。
 く、と笑いを呑みこんで、鬼柳は身を屈めた。

「つか自分でく、ん?」

 転がってくるかと思った豆の味も感触もなし。
 クロウは、まだ唖然と口を開けたまま。

「え、」

 同じ感触。頬を擽る何か。目を覆っていた手は離れて、頬にかかる。ひんやりとした手が、クロウの頬を包んだ。いつの間にか開いていた目に移るのは、元サテライトの、随分きれいになった夜景と、白っぽい髪と、鬼柳の、顔。

「んあ、……っ」

 ぺちんと、力なく頭を叩いたところで何になるのか。自身でもそう思いながらも、クロウはそのまま、身を任せた。3度目。4度目。触れるだけのキスを繰り返す。
 5、6、7度目。8度目が触れるより先に、クロウは鬼柳の首に手を回した。

「…クロウ、あと10回くらいある」
「知るか。オトナってのは強欲なんだぜ」

 背筋を伸ばして、唇を押し当てる。鬼柳は口とは裏腹に、クロウの髪を撫でて受け入れた。
 
「……歳の数で止まるかよ」

 一度離した唇を舐めて、クロウは鬼柳の胸を叩いた。続けて、ずっと手の中にあったゴムマスクを同じ場所に押しつける。
 そうだな。わざとらしく、首を傾げたクロウは、空いた両手を打ち合わせた。


「鬼さんこちら、手のなる方へ、だ」 

 鬼柳はくいと唇の端を上げた。
 追い出された鬼に、どうせ行き場はないんだと。








 心身共にスイッチの入った状態でさほど遠くに走れるはずもなく、転がり込むように飛び込んだのは、クロウと子どもたちがかつて暮らしていた廃屋だった。シティと繋がったサテライトも、まだBADエリア周辺までは改築、整備の手が届いていない。旧モーメントにはあらゆる意味で触れたくないのだ。


 少し埃っぽくなったベッドに転がり込んでから数分、クロウは今、火照る身体を持て余し困惑していた。

「ん…」

 身じろいだところで、鬼柳は変わらない。捲りあげたインナーシャツの下、ぷくりと膨れた左の乳首だけを、執拗に唇で攻めるばかり。

「鬼柳、何だよ…しつけえ」

 足を持ち上げ軽く相手の身体を打って、クロウは急かしたつもりだ。しかし鬼柳はゆっくりと顔を持ち上げて、わざとらしく目を丸くする。

「歳の数だけだろ?」
「へ、ぇ?」
「豆は、歳の分だけ」

 それだけ言って、また沈む。今度は右。数度食まれて軽く舌で突かれて、簡単に形をつくる体を憎み、クロウは唇を噛んだ。

「だったらもう充分、だろっ」
「まだ3つ分…」
「ヒ、っ吸ってんじゃねえ!」

 両手を鬼柳の後頭部に打ち落としたが、鬼柳はさほど反応することもなく、唇で撫でていた突起を小刻みに吸い上げ続ける。ダメージがなかったはずはないが、口内に引き込んだ先端に舌を押しつけ、転がすように弄ぶ。

「んぅっ…」

 刺激や快楽と呼ぶには弱い。しかし、戯れにしては過ぎている。クロウが求める場所まで染み渡るにはどれほど時間がかかるか見当もつかないほど弱いくせに、いざ離れると物足りない。
 諦めて吐きだした息に溶かした疑問。無意味な行為ほど、意味があるように思えるのは何故だろう。
 鬼柳が不意に、舌を離した。

「4つ分な」
「……1回分が、しつけえよ」
「味わって食わねえと」
「豆なんてすぐ飲み込んじまうくせ、にっ」

 そうだな、言いながら鬼柳は『5つ分』を喰らいにかかる。歯を立てられ、痛みに息を詰めるクロウを宥めるように、空いた突起を指の腹で撫でる。それはもう、節分に乗じてふざける手つきではなかった。
 意図を持って続く行為には、意味がある。

「き、りゅ」
「…ん。もう無理」

 顔を上げた鬼柳の手が、クロウの額を撫で上げて、髪を押し上げるバンドを抜き取った。汗の滲んだ生え際を指でなぞって、苦笑。

「余裕、俺にねえもん」

 今更。
 そう動いたクロウの唇を、鬼柳が塞ぐ。
 クロウにとって何度目か、鬼柳にとって何度目か。歳の数にはまだ遠くて、それきりで満足できる予感などどちらにもないことだけがはっきりしているキスは、そのまま二度、続いた。
 惜しみながら離す。目と目をしっかり合わせて、言葉はなく、先を求めて促す。けれど互いの求めるものは、ほんの少し、ずれてしまったようで。

「んなッ…」

 鬼柳は顔色も変えず、裂く勢いでクロウのベルトを外して下着ごと下肢の衣服を引き下ろした。そこに触れられることまでは予測していたが、唐突に露出させられることなど想定していなかったものだから、クロウはがばと身を起こす。

「急ぎすぎだろ間を取るって選択はねえのかよっ」
「だから言ったろ、余裕ねえって」
「だったら最初から、」

 ひくんと喉が震えて、クロウはその瞬間、抗う手段をひとつ奪われた。鬼柳が発する言葉も止まる。彼が己の唇を、言葉を放つためでなく、クロウへ快楽を与える手段として選んだために。
 生暖かい口内に捕らわれた雄の象徴は、それだけで形をより確かに変えた。奥まで咥えこまれ、ざらついた舌を押しつけられて、自身のみでは得ることのできない快楽を直接受け止めた結果だ。

「く、あ、ァあっ…!」

 悲鳴にすらならない声を押し殺し、クロウは両手で鬼柳の頭を、少し根元の湿った髪を掴む。眉を顰めはしたが、この程度で解放するつもりは毛頭ないようだ。強く吸い上げ、一度唇を開いて、深く息を吸って。可能な限り根元まで、また、飲み込む。

「っく…っふぁ…、ぃ、ゅっ」

 芯をもった部分は口内の全てを使って。根元の袋は指で撫で上げて。先端まで唇を引き上げてじっくりと舐ったあと、半分ほどを咥えて吸い上げる。
 巧みであるのかどうかを判断するための、比較対象はクロウにはない。自身の感覚のみで言えば、彼の技巧は十分どころか、あってはならないほどのものだといえるだろう。押しつぶした声を震わせて、クロウは首を振った。

「ぁ、ゃ、っべ…!」

 濡れた音が響く。目を閉じたから、余計に。
 まだ駄目だと必死で首を振るが、そんなものは抵抗にすらならなかった。貪欲で正直、与えられる快楽に陥落した体は、クロウの声などもう聞きはしない。
 昇らされるままに昇りつめて、鬼柳の口内で熱を放つ。爪先を丸めて、クロウは悲鳴を押し殺した。
 ちかちかと点滅する視界、瞬きが原因ではないものを瞬きで打ち消して、荒い呼吸を宥める。髪を掴みっぱなしだった指をほどいて、クロウはその手で両手を覆った。

「あ…、ぅ…悪ぃ……」

 蚊の鳴くような謝罪の言葉は、届かなかったのだろうか。鬼柳はゆっくりと口を開き、クロウの体液と己の唾液の混ざったものを、とろとろとクロウの性器を伝って流していく。とろみを帯びた液はすぐに茂みと袋に届き、その奥、下にまで流れ込んだ。

「ぅ」

 指でなぞられるのとも違う感触に、クロウは奥歯を噛みしめる。鬼柳の指は、クロウの性器を覆う液をすくっては後の穴へと塗り込め、唇はまた、かぷりと先端を咥える。
 過ぎたはずの感覚が、逆走する。神経を引きこまれる。クロウは両手をどこにやることもできずに、額の上で交差させて鬼柳を恨めしげに見下ろした。

「あ、そ、れぁ…ずりぃ、だ、ろ」
「んん?」

 視線が絡んだ。鬼柳は口を開いて、わざと舌の全体で先の凹凸をなぞってみせる。途中でぱくん、と一気に口を閉じたのは揶揄か、煽るためか。どちらにしても、クロウにとってはたまらない。
 一度絶頂を迎えた身体は、このままでは容易く二度目を、その先まで許してしまうことをクロウはよく知っている。頬を赤らめて、濡れた唇を必死に開き、腕でベッドを叩く。しばらく使っていないベッドは、力いっぱい腕を落とせば埃が舞った。
 しばらく味わっていなかったサテライトのにおいに、余計煽られたことを悟られたく無くてクロウは紡ぐ。

「きりゅ、おれ、も、……口、する、から、待、」
「いい」

 久しぶりにはっきりと、鬼柳の答え。ぐり、と濡れた穴へ指を押し込み左右に割り広げて。
 
「ここ、つっこみてえの、俺は」

 未だ慣れきらないその穴に、一本だけ指を飲み込ませた。柔らかな内壁を押しつける指、愉悦の笑み。
 押し広げていけば十分な広さを持っていることは、鬼柳もクロウも、身をもって知っている。
 その後こそ一大事だと、勿論分かっていて言うのだ。この廃屋の奥のシャワー室はまだ生きているのだろうか。確かめる暇など、与えるつもりなどないと目が語る。

「ッ…こンの、本物の鬼かてめーは!」
「呼び寄せたのはお前だろ?」
「くうぅ…っ」

 言い返せるはずもない。鬼柳を突き飛ばすつもりで伸ばされただろう手は、胸の上で握られた。唸るクロウを見下ろす鬼柳は、乾いた唇を舐めて動き出す。投げ出されたままのクロウの右足を、ひょいと肩に担いだ。
 高く上がった足の付け根が痛んだが、クロウは唇を尖らせるだけ。鬼柳はわざとらしく背筋を伸ばし、ゆっくりとベルトを外す。中途半端に脱げたズボンから、互いに晒す秘部。
 羞恥に似た感情が渦巻いて、胸の底に沈む。吐きだしてしまいたくなったのは、ねだる、甘える、他人のような声。
 くぷ、と、鬼柳はクロウの中に押し入った。

「は…ぁ」

 ため息はふたつ。強張る体を解そうとして、霧散しかねない気を抑え込もうとして。
 
「……う、っん!」

 ゆっくりと半分まで、その先は一息に。男同士であれば通常触れることなどないだろう位置で肌が触れあって、クロウは身を震わせた。
 腰を押しつけ確かめて、左手でクロウの腰を、右手で腿を掴んで固定した。衝撃を予測して目を閉じたクロウに、容赦なく叩きつける体と欲望。逃げを打つ腰も、掴まれたまま。中途半端に浮かされた臀部を片足で支えて、クロウは喉を反らせた。
 
「ぐ、…っんく…!!」
「口開けてろよ」

 呆れ顔で、鬼柳はクロウに腰を打ちつける。今のクロウに僅かにのこる矜持を打ち壊すには、器用に身を捩る必要などない。身を乗り出せばそれだけで、強すぎるほどの凶器になる。

 鬼さんこちら。
 そう言って打ち鳴らされた手の平は、いつの間にかシーツを握りしめていた。肘は浮き上がる体を支えて、髪はベッドに擦れて、鳥の巣状態だ。
 ズボンが足に絡んでいるせいで、互いに楽は出来ない。脱いでしまえば早いのだが、それすらタイム・ロスだとお互いが判断した。 ぴんとそそり立ったクロウの雄を腹に擦りつけるほどに彼の足を押しつけて、身を乗り出した鬼柳がくっと息を呑んだ。
 根元まで入り込んだ自身を抜ける寸前まで引いても、最初ほど抵抗はない。これが快楽だと、鬼柳は覚えてしまっていた。だから、予感がして。噛みしめた。

「あ、ぅ…ぁ…、中、ッ……!」

 馬鹿、と最後にクロウが叫んだ。彼にとっては叫んだつもり、だ。押し殺してかすれたそれは、声と呼ぶのも疑問だが。
 繋がったまま、クロウの額に浮かんだ汗を手の平で拭ってやりながら、鬼柳は機嫌良くほほ笑んだ。クロウの胸元に散った白濁を見下ろすと、つられてクロウも視線を落とす。
 そうして、うわあ、と色気のない悲鳴を一つ。
 慌ててそれを拭い取ろうと上がった手を、鬼柳はとっくに読んでいた。ベッドに縫いつけた両手、指をからめて、ゆるく握る。

「クロウ、まだ、な」

 唇を舐めた。それだけの仕草で、今度はクロウが読んだ。
 慌てて鬼柳の手を逃れ、両胸を隠す。

「もうコレは無しだからな!?」
「……満足できねえ」
「ッ突っ込んどいて、っあう」

 鬼柳の肩の上の足が跳ねた。クロウを揺さぶる鬼柳の視線が、クロウが両手で隠した位置から更に下へ移ったことに、クロウは気付かない。
 偽物の鬼が狙うのは、今度は腹部の小さな窪み。
 触れられることなどそうはないであろう臍、さて、どうしてやろうかと首を捻った。




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