リアル・メルト・ダウン--京クロ? 触手ネタR-18







 


 
 俺は廃屋に立っている。あたりを見ても換気扇しか見えないということは、ドアを背にして立っているんだと思う。後ろ手に壁に触れると、コンクリートの冷たさよりいっそう冷たい気がした。ざらりとした感触。鉄製の、案の定ドア。
 うう、と唸る声がして、足元に視線を送る。転がっていたのは人。俺とさほど体格の変わらない、オレンジ色の髪の、そう、歳もさほど変わらない、男。ああ、よく知ってる。
こいつはクロウ。俺の仲間だ。

 そのクロウが、素っ裸で転がっている。トレードマークと変わらない青みがかったグリーンのヘアバンドもどこかにやってしまったようだ。猫みたいに丸くなって眠っているから、程よく筋肉の付いた均整のとれた体がいつもよりずっとやわらかそうに見える。

「えっ?」

 眠るクロウを見つめていた俺は、思わず声を上げた。クロウは目覚めない。相当疲弊しているのだろう、なんて思ったまではいいが俺はそのまま動けなくなってしまった。
 クロウの頬と派手な髪、それから、ちょうどいい曲線を描く尻から腰にかけてを汚す白濁と赤。どちらも何であるか、俺には安易に想像できた。だけど俺は、動かない。

「んっ……ぅ……」

 暗がりの中、ひくりと震える身体。眉間にぐっと皺が寄り、薄く開かれた唇から洩れ聞こえる呻き声。視線をクロウの足元へ移すと、腿の上、日に焼けたクロウの肌の上を何かが這っていくのを見えた。蛇。違う、それよりももっと粘着質な、そう、色を考えても、サテライトじゃほとんど見ないが、あれだ。巨大なミミズによく似てる。
 俺がそいつに名を付ける前に、クロウの目が開いた。サテライトの夜の色。汚れた空気に透ける夜空と廃屋の色が、ゆっくりと光を帯びていって。

「あ……っ」

 その光が、自分の体を這う物体に気付いて大きく揺らいだ。それでもクロウは首を振るばかりで、体を這いあがろうと蠢くそれを蹴りはらおうと動いた足にも、力はない。見開かれた瞳から、ぼろ、と涙が落ちるのが鮮明に俺の眼に映る。

「っくそ、来るな、来るな来るなよッ」

 必死の声を聞いて、俺はあろうことか、迷う。今すぐ駆け寄って、あのわけのわからない物体を引きはがして、弱りきったクロウをここから助け出すのが先だ、仲間なら。
 だけど俺の手は震えている。足は、前に踏み出そうとしない。必死に体を捩って逃れようとするクロウの足や腕に、その巨大なミミズはぐるりと巻きついた。一匹、二匹。数えてみれば、全部で六匹。クロウの喉から引きつった声が漏れる。首筋を這うミミズが、柔らかいあいつの頬に先端を擦りつけた。

「いっ、やだ、もうっ、……鬼柳っ!」

 涙声でクロウが叫んだ瞬間、頬を撫でていたミミズはクロウの口の中に飛び込んだ。うわ、と思わず俺が叫ぶ。吐き気もした。あんなの、ゼッタイ無理。どんな味がするのかあれこれ想像までしてしまったものだから、逆流しかけた胃の中身が出てこないように、両手で口を押さえる。

「ぅう、……はっ…ぅ…」

 閉じた目の端から、涙が零れる。ぬめった液体で濡れた唇を精一杯開いて喘ぐクロウを見下ろせば、もう嫌悪感なんて消えていた。伸ばしかけた手を握って、振りあげられたクロウの足の先を目で追う。くぐもった悲鳴と一緒に爪先がぴんと伸びるのを、じっと見つめる。その足をずるずると、滑ったものが絡み這うのを、じっと。

「かふ、……ぐっ」

 ずるりと口からそいつが抜けだして、顔を横に向けたクロウが口内の滑った液体を吐き出した。唾液よりも粘質な液を必死に噎せて吐き出しながら、力のない両手を下肢に集い始めたそれに伸ばす。止めようとしている。分かっていても、俺は黙って立っていた。クロウの顔はもうぐちゃぐちゃで、上げる声も制止なのか悲鳴なのか、きっとクロウ自身にも分かってない。
 蠢く濁ったピンク色のそれが巻きついて隠したクロウの性器がどうなっているのか、俺の位置からはちょうど見えない。けれど髪を振り乱して断片的に声を上げ続けるクロウの頬の紅潮と瞳の潤み方からして、与えられているのは苦痛に限りなく近い、快楽だ。
 クロウが発言をしないのが、証拠。嘘をつくのが嫌いなクロウは、快楽を拒絶する言葉すら、飲み込んでる。
 嫌だと首を振るのは本当だろう。でもそれは、快楽を拒む言葉じゃない。怯えているのだ。未知と、快楽に。それに狂いかねない現実に!

「ぃ、あぁあっ……」

 ぐちゅり。音がする。
 滑りを帯びた先端がクロウの引き締まった尻の間に潜り込む。クロウは身を強張らせていたがもう抵抗なくそれを受け入れていく。おそらく先ほど同じ場所を散々に弄られたからだ。俺はごくと生唾を飲んだが、クロウもその肌を這うやつらも、どれひとつとして俺に向かってくるものはない。沈黙し立ち尽くす俺に見せつけるように、そいつらは行為を進めていく。
 いつだって勝気なクロウの瞳が、切なげに潤んでいる。必死に拒絶をしたところで、言葉も手足もすべて絡め取られることに絶望すら感じ始めている。諦めたくないだろうに、抗えない。必死で歯を食いしばり、引きずり込まれることだけはないようにと耐える。
 その姿に俺は同情より、明らかに興奮を覚えていた。

「ふぁ、ああぁっ」

 突然大きく跳ねたクロウの体を見て、開いた唇から上がった高い声を聞いて、俺は自分の体に走った感覚に震えた。混乱しているんだと思う。唇の端がひくついて、表情が上手く浮かべられない。俺だけじゃない。クロウなんて余計に。
 ぐちゃぐちゃと中を掻き回されて、ぬるぬると体を撫でられて、あまつさえそれらと行っているのが明らかに性交だなんて理解できちまうだけの頭脳があるんだから、混乱して当然だ。
 でも、そんなんだから。そんなんだから、余計俺の中の熱は止まらなくなっていく。
 
「いっ……ぁあ、ぐ、……も、やぁら……めっ……」

 爪先が震える。吐息交じりの声は、舌ったらずで甘ったるい。切なげに潜められた眉、時折強く握りしめる手、瞬きのたびに睫毛を濡らす涙。
 クロウは仲間だ。大事な仲間。それに男だ。同じ男。それなのに俺は欲情してる。それも、自分の手でなく、あの得体のしれないものに好き放題に弄ばれるクロウを見ることで、満たされている。
 強張った両足が、おそらく、無理矢理開かれる。張り詰めてもさほど大きくは見えないクロウの性器が顕わになった。
 巻きついていたはずの一本は、鎌首をもたげて少し上からクロウの性器の先端を撫でている。
 よく見れば、気色悪いピンクの先端がパックリ開いて、そこから幾本も、モップの繊維みたいなものが飛び出ている。それが絡みついて、クロウを翻弄しているようだった。
 クロウの中に潜ったままの奴がさほど動きを見せないにもかかわらずクロウの反応が止まないのは、その中でも何かが行われているからだろう。人間には考えられないような、何か。

「あがっ、あっ、ぃっふ、うぅっ」

 あのミミズどもは、結構な重さがあるらしい。両手、首、肩。上に乗られて、床に縫いとめられた上半身はほとんど動かず、面白いほど腰から下が大きく跳ねる。
 悪戯を仕掛けるように、肩に乗ったそいつらが、先端をクロウの胸の上に乗せた。先は見なくても分かる、みんな、同じ構造だとしたら。

「ひ! やああ、無理、無理だそんなんっ、む、りぃいいっ」

 感じているのか抵抗なのか、それともねだってるのか。がくがくと揺れる腰、振られる首、クロウの中に潜った一本が、のたうつクロウの真似をしてびたびたと床を叩きながら更にクロウを蹂躙する。 

「ふは、ぁ、しぬ……やだ、も……こんな……たすけ、ぇ」

 喘ぎ、しゃくりあげながら、潤んだ目から零れる涙も止めず、ぬちゃぬちゃ、びちゃびちゃ、耳が痛くなるほど嫌な音ばかりする狭い部屋に、たった二人。正気は、ゼロ。

「ぁんっ、だ、っめ、き、きりゅっ、鬼柳、っ」

 甘い切ない声が呼ぶ。俺は、自然に緩んだ頬をそのまま、クロウに顔を向けた。潤んだ目がこっちを見ている。薄く笑う俺を。
 俺の仲間。たまに素直じゃなくて、嘘が下手、でもデュエルは強くて、自慢の親友。俺のクロウ。可愛い可愛い俺のクロウ。
 あいつらも、それが分かるんだろう。クロウの性器を甚振っていたやつが、ちょうど尾にあたるらしい部分を蛇みたいに揺らしながら、先をクロウの尻に押し付けた。既に一本が入り込んだ穴に余裕はないにも関わらず、きっと、あれは同じ道を選ぶだろう。


「ったすけ、きりゅ……」


 後ろ手に、ドアを開ける。クロウの手が、ドアの向こうから射す光に向けて伸びた。かまわずドアの隙間から外に出て、力いっぱいドアを閉めた。俺の名を呼ぶ声が悲鳴に変わった瞬間に、何も聞こえなくなった。
 最後に耳に残ったのは、鉄のドアの錠をかける音。









「鬼柳」

 遊星の慌てた声がして、俺はばっちり目を開けた。ベッドの上に仰向けに倒れて、そのまま眠ってしまっていたらしい。
 酷い夢を、見た。思いながら体を起こせば、もうドアを開けて遊星が息を切らして立っている。

「あ……あぁ? どうしたん、だ、……遊星」
「起こしてしまって、すまない……」

 どもりながら答えたのは、夢を悟られたくなかったのと、何より寝起きでまだ覚醒しきってない頭で紡げる言葉に限界があったからだ。遊星は特に気にすることもなく、眉をハの字にして心底困った顔で訊いてきた。

「クロウを、知らないか?」

 座ったまま、何気なく手を突っ込んだズボンの横ポケットの中で、軽い金属が擦れて音を立てる。部屋の引き出しにも、部屋のドアにも大きすぎる鍵。

「いや……知らねえな」

 どこまでが、夢なのか。考える気も起きない。
 俺は首を振り、落胆した遊星が背を向けた瞬間、ポケットの鍵を取り出し腿の上で握りしめた。自然と唇が歪むのに気付いていたので、二度寝の振りで、ベッドに伏せて隠した。
 





 隠し通路なんて洒落たものじゃない。もともとあった地下への階段を家具で隠しただけのお粗末な通路。しかし、知らなければ気付かない。ほとんど物のない木製の棚の裏。
 鉄の扉。真新しい錠前に鍵を突きさす。カチリ、軽い音がする。床に転がった肢体を見下ろして、俺は薄らと笑った。

 ぶっ壊れた街には、案外何でもあるものなんだよな。







「……そろそろ、素直になれそうか? クロウ?」

 蕩けた瞳が、床の上から俺を見上げた。

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