「クロウ」
呼ばれたので、返事をしようかと思ってやめる。
だって、なんか気持ちいい。もうちょっと寝たい。
「クロウ、何甘えてんだよ」
あまえてなんかいねえよ、ばーか。
おれは眠いんだ。寝かせろ、ばーか。
毛布を掴んで引っ張って、潜り込む。
「ばぁか、起きてんだろ?」
バカって言う方がバカなんだってガキどもが言ってたぞ。
あ、でもこっち暖かい。取りあえず、そう思った方に近づいてみる。
「っちょ、起きろって、クロウっ」
暖かいのは塊らしい。でも、肩に触れたものは冷たい。
こんなんじゃ満足できねえ、なんて、どっかの誰かみたいなことを考えながら、その暖かい物体にしがみついた。
とくとく。おとがする。
眠い。ここ、安心する。
溜息が聞こえた。
「…………ったくよお、人の気も知らねえで……」
頭の上に触れたのものは冷たい気がして、でもやっぱり暖かい。
あ、これ鬼柳だ。
そういえば、鬼柳の声だ。
鬼柳が頭を撫でてる。ガキじゃねえっつーの。
でも、おれはたぶん、嬉しかった。
嬉しいって思ってるうちに、良く分からなくなって。
「 」
名前を呼ばれた気がして、でも、何も言えないまま、何も聞こえなくなった。