生きればこそ、酔狂。






 酔っ払っていた、自覚はあった。
 鬼柳京介は、数十分前、そう、おそらく数十分前の出来事を必死に思い出そうと記憶の糸を辿る。しかし、先程から続いている感覚と光景、声が邪魔をする。

「きょお、す、け……ぇ」
「ッ、くろ、」

 チームメンバーで一番小柄な、それでいて一番強気な少年が、涙目で自分を見上げながら甘えた声で呼んでいる。全地区制覇で盛り上がって年も考えず酒盛りになって、「クロウ愛してる!」なんていったのは確かに自分だったけれど。京介は心中でだけ頭を抱える。

 発言は確かに本音だったのだが、何でこうなってる?

 疑問は浮かぶが、体はひたすら正直だ。クロウの体奥へ自身を突き入れて、内部の熱を貪る。幼さの残る顔が歪むと、僅かなりとも存在したらしい背徳心が、疼く。
 京介は組み敷いたクロウの体を更に折り曲げながら、顔を近づけた。浮いたクロウの足先が暴れて空を蹴る。苦しげに呻く声もどこか甘くて、ますます京介の思考を鈍らせる。
 そんな罪悪感などどうでもいいと思ってしまったらそこまでだ。分かっているのだ、分かってはいるのだが。

「きょぅ、すけ、うぅぅ、や、やあ……」
「クロウ、苦しい?」
「くる、……ぃ、う、でも、わかんね、わかんねえよお」

 目元や口元を隠すように彷徨っていたクロウの腕が、近づいた京介の首に回される。触れた肌も熱くて、思わず重ねた唇も熱くて、京介はそこで思考を諦めた。

 やっぱり、もう、どうでもいい。

 性急に舌を差し入れて絡めて、すぐに引き抜く。撫でるだけで過ぎていったそれでは物足りないといわんばかりに、クロウが自ら頭を起こして唇を近づけてきた。拒む理由はないと、受け入れる。濡れた音が鼓膜を這う。そこから伝わる振動に誘われるように体も震えた。

「ん、は、きょぉ、すけ」
「どした、クロウ」
「おれ、平気だっ……から、も、」

 首の後ろにあったクロウの手が、京介の髪を逆立てるように撫でながら頭へ移る。その際髪を掴まれた痛みはあったが、京介は明らかに欲で濡れたクロウの瞳を見つめることで精一杯だった。

「もっと、って、いいっ…からぁ」

 濡れた唇でそんなことを紡がれてはどうにもならない。京介は唇の端を持ち上げて、震えるクロウの腰を掴んだ。
 本来であれば何も感じないはずの相手を、こういった対象としてみてしまったらそこまでだ。些細なことにも煽られて、結局ここまで来てしまった。
 結局堕ちるしかなかったなと、頭の片隅で最後に思案する。クロウの身を抱えなおせば、中の感覚が強まったのだろうか、クロウが裏返った悲鳴をあげた。

「…ん、いくぜ?」
「んぅ、こいっ…よ、きょう、ぅ、ひッ、ぁ、ぁあッ」

 余裕ぶろうとしたのだろうが、そんなもの無意味だ。これから辛うじて残っているクロウの思考も快楽に塗りつぶされて、同じ答えに行き着くんだろうと京介は思う。もういい。どうでもいい、と。
 それは決して酒の勢いなどではなく、結局自分たちは自分に正直にしか生きられないという、ひとつの証明だ。

「ぁあ、あ、やっ…ぁ、きょぉす、けぇえ……ッ!」
「何だよ、痛いのか? それとも、気持ちい?」
「い、ぅう……ッ痛い、も、いッ……!」

 クロウが首を振れば、瞳にたまった涙もパタパタと落ちる。それが駄々っ子のようで、京介は思わず笑ってしまった。面倒を見てる子供たちの前では絶対にしない顔だ。幼いのに淫らだなんて。不安定で、こんな鉄砲玉なら簡単に突き崩してしまえそうだった。
 思いつけば、実践してみたくなる。京介はますます強く自身をクロウに打ち付けた。背を反らせて、見開いた目から涙を、かみ締めることを忘れた唇からは涎を溢してクロウは啼いた。

「俺は満足してる、すげー、……気持ちいい」
「あぁ、う、あ、じゃあ、あ、おれも、それで、いい……っあ、い……っ」

 シーツもクロウもぐちゃぐちゃで、見れたものじゃない。それでも目をそらせずに、それどころか、その有様に余計興奮を覚える自分に半ば呆れながら、京介はクロウを呼んだ。クロウの浅い吐息に、小さな声が混じって返る。

「なあ、クロウ……ぐちゃぐちゃで、お前、綺麗だな」

 生きて乱れる彼は、こんなに綺麗だ。




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