「なんで・・・なんでだよ!!俺、そんな事、一言も聞いてな・・・・!!」
「これは俺の問題だ。お前には関係ない。」
「9年だぞ?お前とバッテリー組んで!なのに俺が知らないうちにそんな話・・・・!!」
「この世界ではよくある話だ。」
「・・・・!!」
冷たく言い放つキーンに吾郎は悔しさに唇を噛み締めた。
「話はそれだけか?なら早く帰れ。可愛いワイフが心配してるぞ?」
「話を逸らすな!!」
「逸らしてなんかない。お前はこのマンションを出て、彼女と結婚した。その時全てが終わったんだ。」
「・・・・!」
「どうした。早く帰れ。」
「・・・・キー・・・ン・・・!」
怒りと、言いたい事、伝いたい事が言えないもどかしさ。
吾郎はキーンを睨み付ける事しかできない。
「その・・・顔、その目だ。
俺はそんなお前を見ていると押し倒して滅茶苦茶にしてしまいたくなる。そうなる前に早く出て行け。」
「俺が・・・結婚したのが・・・FAの理由かよ・・・。」
「言ったろ?お前を見てると抱きたくなる。俺はマゾじゃないからな。さっさと移ってスッキリするさ。」
「・・キ・・・・!」
「・・それとも抱かれたいのか?お前。」
ニヤリとキーンが笑む。
「ワイフがいるのに・・まだ男に抱かれたいのか。」
気付けばキーンは吾郎の目の前に。
その頬を指先で撫で上げて。
「・・・・っ・・!!」
「フン・・・相変わらずの淫乱め。昨日はワイフに突っ込み、今日は男に触れられてそんな声を上げるとは・・・救いようのない淫乱だ。」
「・・・って・・・めー・・・・・!!」
「ふふ・・・しかし・・・・。お前が忘れられるとは思えんがな。
気持ちで納得して結婚しても・・・お前のココ・・・そしてこの中・・・・疼くだろう・・・・。」
キーンは吾郎のそこを鷲づかみにして迫る。
「ホラ・・もうこんなに硬い・・・久しぶりに抱いてやろうか?」
フフン・・と侮蔑の笑みを浮かべた。
「ば、馬鹿にすんな!!・・・俺は結婚したんだ!もう・・・男の慰み者になんてならねー!!」
「・・・・。「慰み者」・・・か・・・・。」
キーンの顔に一瞬だけ哀愁の色が浮かぶが、すぐに挑発的なものに戻った。
吾郎はそれに気付いただろうか。
「そう言いながらも、求めてきたのは誰だったかな。」
「な、なんだと・・・!?」
「・・・まあ、いい。こんな話などいくらしても時間の無駄だ。帰れ。」
「・・・・。」
憮然として納得できない吾郎がいたが。
「帰らないと犯すぞ?弁解できないくらい、その体に痕跡を残してやる。」
静かに、しかし確たる意思を持ってそう断言するキーンの息がかかるほどの至近距離。
吾郎の瞳が揺れた。
体の奥底にキーンに抱かれたい気持ちが・・・全くないと言えるだろうか。
結婚したからといって、キッパリと切り替えることなど・・・・。
あんなに濃厚で激しい時間を・・この男以外に誰が与えてくれると言う?
「これが最後通告だ。・・・帰れ。」
その瞳は野獣・・・そう、黒豹のようだ。
なんて美しい・・・
こんな状況だというのに吾郎はそんな事を思ってしまった。
そして、豹に見据えられた獲物のように・・・動けない・・・・・。
「・・・・・・・・。」
どうなってもいい・・・・そんな言葉が一瞬、脳裏を過ぎる。
弁解できないくらいの痕跡、を与えてくれる・・・キーンとの時間。
頭より先に体が反応してしまう。
そういうふうに仕込まれた。
他の誰でもない、キーンに。
そこを握られていては、すぐに気付かれてしまう。
いや、もうきっと気付いている。
どうしたら・・・・いい・・・・・・!
しかし先に瞳を逸らし、突き放したのはキーンだった。
そして背中を向けて。
「失せろ。」
ハッ・・・と正気に戻る吾郎。
「・・・。馬鹿野郎・・・。」
吾郎は捨てゼリフを吐いて立ち去るしかなかった。
ホッ・・としているのか、残念なのか・・・
胸に釈然としないものが残ったまま・・吾郎は帰路につく。



部屋にはキーンが一人残された。
その口元には不気味な笑みを浮かべて。

  ふふ・・。あの様子では無理だな。
  待てばいい。
  待てば・・・あいつは勝手に戻ってくる。
  離れれば離れただけ、欲望も募る・・・そういうものだ。


幸せな結婚にひっそりと仕組まれた、黒豹の罠。
その胸に秘められた蒼い炎。
決して消える事のないその炎は、ゆらゆらと揺らめき
少しづつ、大きなものとなってゆく。

  やがて罠の発動と共に一気に燃え盛り・・お前を飲み込むだろう。
    
  その時を・・・待てばいい・・・・。
  何年でも・・・待つさ。
  あの茂野が俺を忘れられる筈がない。
  その時は・・・その年数分・・・たっぷりと可愛がってやろう。


  ふふ・・・ふふふ・・・・。









end


サンデーの新展開があまりにもショックで
暫く・・今もですが呆然としちゃって
でもこのまま、って訳にも行かないので・・・
リハビリの意味で、何も考えず、頭に浮かんだままを日記に書いた話がこれです。
キーンの移籍にはショックでした。
しかもサンデーは既に移籍後、過去の出来事になってましたし。
その辺のドラマも見たかったよ〜!
という思いから書けてしまった話です。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
(2009.10.9)



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