「なんで結婚なんかしたの?」
「なんでって・・・。」
「こうやって君は僕に抱かれてばかりいるのに。」
「・・・・。」
「なんで?」
寿也は吾郎の脇腹の辺りから首筋までを指で辿りながら
その疑問を口にした。
「・・・・。夢だったんだ。」
「結婚するのが?」
「・・・っていうより・・・俺の子供を持つ事が。」
そう言われて、寿也は吾郎の不幸な境遇を思い出したが。
「でも・・・奥さんがいるのに僕とこんな事ばかりしてたら・・
それが夢だって言われても・・・なんかね。」
寿也は苦笑する。
「ま、僕はそのほうが嬉しいけど。」
うるせー、とぼやく吾郎だが、真面目な顔で続けた。
「おとさんも・・おかさんも死んじまって・・・。
かーさんや親父のお陰で俺はすごく幸せだったけど
でも俺は血の繋がった俺の息子が欲しかった。それだけだ。」
「それだけのために彼女は犠牲になったの?酷いな・・。」
「それだけって・・犠牲って・・・なんだよ、その言い方。」
「だって。また言わせて貰うけど奥さんがいるのに・・・。」
「・・・結婚するから・・・もう終わりにしようと思ってたのに
強姦みたいに俺の事無理やり抱いたのって寿くんじゃなかったっけ?」
ジト〜〜〜っと見つめる吾郎に
「・・え?あ・・・あれは・・・・はははは・・・・・。
だって・・・酷いじゃないか。
清水さんがいようがいまいが、今までなんの問題も無く僕達はこういう関係を続けてきたのに。
僕は当然、君が結婚してもこの関係は続くものだと思ってた。
なのに、いきなり結婚するから終わりにしようって・・・・。
それで結婚式の招待状、渡されて。そんなの、許せると思う?」
「・・・そりゃ、簡単に許してもらえるとは思わなかったけどさ。」
「それにしても酷い男だね、君は。
僕という者がありながら、アメリカではキーンという相手ができたり
そうかと思ったら「結婚するから終わりにしよう」って。一体僕をなんだと思ってるの?」
「キーンとは・・・もう終わった。知ってるくせに!お前と入れ替わりでホーネッツを出て行っただろ?」
「だからって、終わったとは限らない。
それより・・・僕にはあっさり出て行ったキーンが不気味でならない。
あんなに君に執着してたのに・・・結婚したからってさっさと切り捨てるような事をするだろうか?」
「あいつはなー、計算高いんだよ!計算どおりに進まなかったから、別のプランに切り替えた。それだけさ。
それに・・・嫁さんがいようがなんだろうが関係ないなんってーの、おまえくらいだっつーの!」
「・・・あたりまえじゃないか。僕にとって彼女なんて初めから眼中に無かったんだから。
敵だと認識した事すらないよ。
それよりキーンだけど、別のプランに切り替えたって・・・それって・・・・。」
「なんだよ。」
「一旦君から離れてみる計画なんじゃないだろうか?押してもだめなら引いてみな、ってヤツ。」
「・・・んな訳ねーだろ?」
しかし寿也は考え込んでしまっていた。
「レイダースにはJr.もいる・・親父さんの方も。」
「ああ、そうだけど?」
「・・・・3人がかりで来る気じゃ・・・。」
「お前、何考えてんだよ!!」
「それに僕も加わったえら・・・5Pだね。吾郎くん、大丈夫?」
「何がだよ!!何考えてんだ、5Pってなんだよ!5Pって!!」
「時期はどう考えたってこのWシリーズが終わってからだ。どちらかのシャンパンファイトの後・・・・。」
「あのなー!!キーンとは終わったんだ!!Jr.とは勿論、ギブソンともそんな事したこともないっつーか、あり得ねえ!!」
「・・・・相変わらずお気楽な頭してるね、君は。君がどれだけ男を惹き付けるか・・君は未だにわかってない。」
吾郎はなんとなく寿也に圧倒されてしまって、何も言えなくなってしまった。
「そんな君が・・・結婚なんかしたって・・・無駄かもね。周りが君を放っておかない。」
「な、なんだよ・・それ・・・・。」
「少なくとも君は奥さんがいながら男に抱かれ続けている、とんでもなく酷い男だって事さ。」
「それはお前の・・・。」
「僕のせい?本当に?僕が無理やりあの時君を抱いたから?」
まただ、と吾郎は思った。
寿也に迫られると吾郎は何も言えなくなってしまう。
この・・・吸い込まれそうなこの瞳。
深い深い海のように深い・・・この瞳。
気付けば寿也の術中にはまっている。
「君は本当に・・・彼女だけを見て生きる事ができると思っていたの?」
寿也は吾郎の中心を指で撫で上げた。
「・・っ、あ・・・・!」
「ここに触れる事くらいは彼女にもできる。でも君を突き上げる事はできない。
道具があれば挿れる事くらいできるけど・・オモチャはやっぱりオモチャだからね。」
そして術中にはまってしまっても構わないと・・・心のどこかで思っている吾郎がいた。
突き上げられる感覚だけが欲しいんじゃない。
俺を抱きしめる太く鍛え抜かれた腕、厚い胸板
無理やり絡め取られる舌、唇。
囁かれる愛の言葉、時に揶揄する言葉。
熱く激しく・・時に酷く・・・濃厚な時間。
そんな時間は薫とではとても得られない。
俺は・・・結局、どうしても・・・・そんな時間を捨てられなかった・・・・・・。
「吾郎くん・・・。」
気付けば指でそれを撫で上げていた寿也は、それを咥えようとしていた。
それを止めもせず、魅入ってしまう。
寿也が俺のそれを咥えて・・・舐め上げて・・・。
見ているだけで熱が集まり爆発しそうになる。
そんな吾郎の様子など手に取るように分かっている寿也は咥えながら瞳を吾郎に向けた。
咥えられる吾郎と、咥える寿也の瞳が合う。
寿也が咥えながら笑った。
吾郎は消え入りそうなほどの羞恥に襲われるが寿也を押しのけようとはしなかった。
顔を背けつつ、それを受ける。
俺はやっぱり・・・寿也を求めている。
そして・・さっき寿也にはああ言ったがキーンの事も・・・俺は多分・・きっと・・・・。
「君は奥さんがいながら男に抱かれ続けている、とんでもなく酷い男だって事さ。」
先程の寿也の言葉が頭を過ぎる。
ホント、俺は最低だ。とてつもなく酷い男だ。
だから俺は・・こういう関係を断ち切りたかった。
普通に生きたかった。
普通の・・男のように生きたかった。
だから結婚を選んだ、という部分は確かにあった。
しかし・・・やっぱりダメなのか?
俺は・・・・やっぱり・・・・こんな時間を捨てられない。
切り離す事ができない。
やはり・・・抱かれたい。突き上げられたい。
酷くされたっていい。
いや、むしろ・・・酷くされたい・・滅茶苦茶にされたい。
「あ、も・・・・だっ・・・・・イッ・・・・!!」
・・・・・・。
寿也はいつものようにそれを飲み込むと。
「吾郎くん・・・何を考えてたの?」
「え?」
「何か・・・考えてただろ?僕に咥えられながら。」
「・・・・。」
目を丸くして頬を染める吾郎。分かりやす過ぎる。
「言えない?」
そう言いながら吾郎の足を持ち上げて後ろの穴を顕にして
寿也はそこを解しにかかった。
前のものを握りながらそこに指をゆっくりと押し進めて。
「・・・っつ!!」
そして寿也は中の良く知ったある部分を指先で掠めた。
「あ・・・っ!!」
「何を考えてたの?」
今度は確たる意志を持ってその部分を擦り・・。
「や・・・そこ・・・・も・・・っ!!」
「知ってるよ。ココが好きなんだよね。で、何を考えてたの?」
的確に中のイイ場所を弄られて、甘美過ぎる痺れが広がっていき、たまらない。
「ねえ・・・吾郎くん・・・・。」
出したばかりなのに既に立派な姿のそれも寿也は握りこんで指をにじらせて
「あ、ああ・・・っ!!」
「吾郎くん・・・言って?」
中と外、同時に的確に攻められて、じわじわと押し寄せる快楽の波が吾郎を支配して。
「あ、ああ・・・もう!お、俺は・・・やっぱり・・・お前に・・・あ・・っ!・・抱かれたいって・・・思って・・・・熱く・・・酷く・・抱かれたいって、あ、ああ・・・っ!!」
「酷くされたいの?吾郎くんってやっぱりMだね。」
「あ、や・・やめるな・・・・!」
「酷くされたいんでしょ?じゃ、焦らされるのも好きだよね?」
寿也は中を攻めていた指でその入り口辺りをかき回し、外のそれは指先で辿るだけにとどめてみた。
「好きじゃ、ねえっ!は、早く・・・・!」
「でもホラ、入り口で出し入れしてるだけなのに中がこんなに溶けてきた。」
「や、も・・・早く・・・とし・・・っ!!」
必死に懇願する吾郎のこの顔。この中。
この顔を見たらどんな男だってもっといじめたくなるだろう。
吾郎は男の欲望を引き出す天性のものを持っている。
そんな吾郎が普通に結婚して普通の生活を送ろう、というのがそもそも間違っている、と寿也は思った。
でもまあ・・・結婚してても僕には関係ないけどね。
ニッ・・と微笑む寿也。
「吾郎くん、どうする?このままイかせて欲しい?それとも・・・・。」
「と、寿が・・・欲しい・・・!!」
次の案を言う前に吾郎に即答されてしまった。
「・・・・。仕方ないね。」
寿也は指を引き抜き握りこんでいた手も放して吾郎に唇付けた。
ねっとりと舌を絡み合わせながら、唇の合間に揶揄するように寿也は囁いて。
「お望みどおり、酷く激しく君を突き上げてあげる。
いくらでも・・・何度でも・・・これからもずっと・・・僕は君を突き上げてあげる。」
吾郎の瞳に喜びの色が浮かんだ。
今の吾郎には寿也しか見えていない。
今の吾郎の中に彼女はいない。
ほうら・・思った通りだ。
彼女など初めから僕の眼中に無いよ。
敵はただ一人。
遠く離れて機会を伺っている、あの男。
ジェフ・キーン。
寿也は吾郎のそこに自らを設置して息を詰めながら押し進めた。
ぐ、ぐぐぐ・・・
と押し進めるごとに吾郎の顔が快楽に歪んでいく。
吾郎の腕が寿也の背中に回された。
しがみついていたその手、しかしあまりの良さに寿也の背に爪が食い込む。
寿也は少々痛みを感じたが、そんなことはどうだって良かった。
そう、そんな事はどうだっていい。
そんな事より・・・・君は僕のものだ・・・誰と結婚しようと、どこに行こうとも。
寿也の口角が吊り上る。
悶え喘ぐ吾郎と対照的に微笑みながら自らを、杭を打ち込み続ける寿也。
この感じ・・・この感じが・・・俺はどうしても・・・・寿・・・・・!!
もっと・・・もっと・・・欲しい・・・寿也!!
吾郎くん・・・吾郎くん・・・・・・僕は何があっても君を手放しはしない・・・・。
終わらない。
永遠に終わらない。
二つの螺旋が絡み合い、地の底を越えて奈落の底も越えて・・・ただ、堕ちる。
end
「アンバランス」と同じ出だしです。
冒頭が先ず浮かんで、2〜3会話を交わさせたら二通りの会話が浮かんできたので、書いてしまいました。
こちらはブラック寿也です。
「アンバランス」でも書いたように・・吾郎は捨てられないと思う。こういう関係を。
奥さんと子供がいながら寿也との関係も続ける吾郎。最低な男。・・・そうあって欲しい!!
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
(2009.10.23)