「よう、寿也。やっと来たな。」
「ああ。メジャーの事はいつも頭のどこかにあったけど、まさか君と同じユニフォームが着れるとは思ってなかったよ。
話がホーネッツとまとまって行くのを感じながら・・・身震いがした。」
「・・・俺も。お前がこっちに来たら楽しくなるな〜とは思ったが、まさか同じチームでバッテリーが組めるとはな。
これこそ運命?
お前が俺の・・初めての恋女房だったもんな。」
「そうだね。あれから・・・・長かった。」
「早く正捕手の座を奪っちまいな。お前ならすぐだぜ?」
「・・・頑張るよ。」
ニッ・・・と寿也は強気な笑みを見せた。

ホーネッツの攻守の要、キーンはFA宣言をしてレイダースへ移籍してしまった。
繰り上がり式で今までの控え捕手が上がってきた所へ寿也がやって来た。
寿也ほどの実力の持ち主なら、それこそあっという間だろうと吾郎は信じていた。

新天地、アメリカ。
寿也はの胸は夢と希望に満ち溢れていた。

そしてチームにはあの吾郎がいる。
まさに夢のような環境。

しかし・・・。
寿也はアメリカへ来て、すぐに気づいた事があった。
そう、吾郎の様子がおかしいのだ。
勿論、寿也が来てくれて喜んでくれている事に間違いはないようだが
どこか沈んでいるような、元気がないというか・・・。

「あ、茂野か?まーあいつはな〜。今までの女房役が良く出来たヤツでね。
公私共々、ベッタリだったからさ。落ち込んじゃってるの。」
ホーネッツの新監督、ワッツが説明してくれた。
「ジェフ・キーン・・・。」
「そ!キーンの穴を埋めてくれるのはお前だ。期待してるぞ?
ところでお前の噂は聞いてるぜ?」
寿也は日本での成績の事だと思って
「そうですか。」
とだけ答えたが、ワッツは。
「・・・良かったな、キーンが移籍して。お前の敵は遥か遠くだ。」
と耳打ちした。
「・・・・。」
寿也は驚きを隠せない。
「ま、上手くやれよ?茂野は新婚ホヤホヤで色々ヤりにくいとは思うけどよ!」
ワッツは楽しそうに笑いながら立ち去った。


吾郎とキーンの事はなんとなく寿也も気付いていた。
恐らくキーンの方も寿也と吾郎の関係に気付いていただろう。
キーンと寿也とそんな関係にありながら、自分だけさっさと結婚してしまった吾郎。
しかし、寿也は諦めた訳ではなかった。
あの吾郎が。
いつも寿也の腕の中で悶えよがっていたあの吾郎が
そう簡単にあの快楽を忘れられる筈がない。
・・・・多分キーンも同じ事を思っている。
何を考えてFA宣言したのかは知らないが、遥か遠くにいても
キーンが寿也の最大の敵であることに違いはない。

・・・・・とはいえ。
当面の敵さんはあの清水薫だな・・と寿也は溜息混じりに思った。
正直、薫の事などどうでも良かったが
というより、今まで敵だと認識したことすらなかったのだ。
アレが敵だと思うと気が抜けるというか、なんと言うか・・・。
しかし吾郎が寿也に再び目を向けてくれないことには始まらない。

  ま、その点は問題ないかな。あの吾郎くんだから。
  僕等はこれで同じチーム。
  ホームでの試合がない時は敵地へ遠征。つまりホテルで夜を・・・。
  機会などいくらでもある。
  ふふふ・・・。
  別に僕は吾郎くんが誰と結婚しようが何の問題もないと、昔から思っていた。
  むしろ結婚や家庭は最大のカムフラージュになってくれる。
  僕は吾郎くんさえ手に入れば奥さんがいようが子供がいようが構わない。


だから。
吾郎の事は、きっと大丈夫だと思った。
キーンがいない寂しさは、いずれたっぷりと補ってやろう。
そして寿也しか見えないように、寿也の愛にドップリと浸からせてやればいい。

そうなるためにも先ずは、ホーネッツで実力を発揮して実績を作る事。
強い男であること。
そうでなければテクニックで吾郎を落せても
真実、吾郎は堕ちてきてくれない。


  頑張ろう。
  ここ、新天地、アメリカで。
  僕と吾郎くんの夢の舞台で。














end

ワッツの言うようにキーンとは公私共々ベッタリだったでしょうからv。
吾郎の落胆も普通じゃないだろうな・・・と。
当然、寿也も吾郎の様子に気付くでしょうね。
そう思って書いたものです。
それから。
この時、まだ寿也がホーネッツを強く希望した事が本誌で出てなかった時なので
少々、本誌と異なってしまいました。すいません・・。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
(2009.10.11)



 


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