寿也が、入ってくる。
俺の中に、ゆっくりと・・・・。
いつの頃からか、俺は・・・・この瞬間が一番心地よいと思うようになった。
この腹黒野郎には死んでも言えねーけど。
でも・・・きっと寿也も気づいている。
俺のこの気持ち。

「入った・・・・。」
「・・・・・。」

寿也が中にいるだけでたまらない。
そんなこと、絶対に言えないけど・・・たまらないんだ。

「動くよ?」
「・・・いちいち確認すんな!」
「だって吾郎くん、この状態に浸っていたそうに見えたから。」
「・・!!馬鹿か!お前は!!」
図星されて慌てた。
また憎たらしいセリフでも吐くかと思ったら唇を押し付けてきて。
生暖かく柔らかい舌が俺のそれに絡まりつく。

「僕も・・・この瞬間がすごく好きだよ。君の中に入っていく、この時が・・・。」

やはり、この男には適わない。
俺の事なんて何もかもお見通しだ。

「馬鹿・・・野郎・・・。」
離された唇をもう一度押し付けるべく寿也の後頭部に腕を回した。
長い長い唇付け。互いの舌を絡み合わせ、ちゅく・・と時折響く濡れた音。
そして寿也の熱く剛直なそれが俺の中でドクンドクンと脈打ち
密着した胸からは寿也の鼓動を感じ、足も腕も絡みつかせて。
・・・全身で寿也を感じる。

寿・・・・・寿・・也・・・・。

この感情は、一体なんなのだろう。
内から溢れかえるような、愛しくて嬉しくて暖かで・・・。

───吾郎くん・・・愛・・してる・・・。
瞳でそう言う寿也。

───ああ、俺もだぜ?寿。
俺も瞳で返事をする。


寿也が腰の動きを開始した。
最奥に押し付けるように動くそれ。
それが押し付けられる度にたまらない心地よさが押し寄せる。

次第に激しくそれは突き入れられて。
それに合わせてそこから響く水音も俺の声も大きくなってしまう。

苦しくて、甘くて
激しくて、たまらなくて。

初めの頃は、寿也の下で女のように悶える自分に疑問を感じた。
俺は一体、なんなのだろうか・・・・と。

だが、寿也に見つめられると俺は何言えなくなってしまう。
こういう時の寿也の瞳はとても不思議な色をしていて
なんと言ったらいいのだろう・・とても綺麗だ。
寿也が触れる場所からは愛おしさが沸き起こるようで
それだけで満たされた思いになってしまう。

俺は・・男だ。
だが、俺は・・・・寿也が好きだ。
もう、どうしようもないくらいに。

お前は知らないだろう。
初めてお前と会った時。
初めておとさん以外の、それも自分と同じ子供とキャッチボールできた時の俺の喜びを。
おとさんが死んだとき、最後にお前に投げたあの一球。
あれがあったから俺は野球を続けてこられたんだ。

小学生の時、中学、高校。
いつも俺の前には寿、お前がいた。
どんな時も最大のライバルで、強くてすごくて、最高の男で・・・。

お前といるだけで楽しくてワクワクして。最高の時間だった。
それが恋だと気づいたのは・・・お前がたまりかねてキスしてきた、あの時だったっけ・・。

だが、俺は・・・俺も、男だ。

「吾郎・・・くん・・・・!」
寿也の声に現実に引き戻された。
見上げると寿也の切羽詰った表情。
何度見ても、いつ見てもドキッ・・とする。

大きすぎる寿也のそれに攻め立てられて
俺のそれは寿也と俺自身の腹で摩られて
俺ももう・・・甘美な痺れに我慢の限界が近づいていた。

だめ・・・・・だ、も・・う・・・・・・!!



互いに荒い息を漏らし、きつく抱き合いながら崩れ落ちた。











「なあ、寿。」
「なに?」
「俺ってなんなんだろうな。」
「どういう事?」
「・・・・なんて言うかな〜。時々分からなくなるんだ。」
俺は悪い頭でなんとか寿也に言いたい事を伝えようとするが。
「俺、男だよな?」
「うん。」
「なのに男に抱かれて・・・その・・・・。」
だが、これ以上言葉に出来ない。
「吾郎くんは間違いなく男だよ。それも最高にカッコいい、ね。
その辺の無気力な連中よりずーっと男らしいよ。」
ニッコリと宣言する寿也。
「・・・・。」
なんだか誤魔化されているような気がする。
「なんなら交代してみる?」
「交代?」
「そう。吾郎くんが僕に挿れるんだ。」
「・・・なっ!!」
「僕なら別に構わないよ?」

俺が・・・・寿也に・・・・?挿れる・・・・??

頭の中が真っ白になった。
「吾郎くん?どうかした?」
「・・・・・どうかしたって・・・お前、とんでもない事言っておいて、その爽やかスマイルはないだろうが・・・!」
胸の高鳴りが収まらない。
「なんで?男なら当たり前の事だろ?」
なのに寿也はさも当然、と言わんばかりのこの表情。
「いいよ、おいでよ。」
寿也は俺の腕を引っ張りながら自らは仰向けに横たわった。
自然、寿也の顔の両側に腕をつき・・・・そう、セックスを始める前の体勢。
寿也がゆっくりと目を閉じる。
整った顔立ち、長い睫、そして形の良い唇。
改めてみると本当に綺麗な顔立ちをしている、と思った。
こんなに綺麗なんだ。寿也はかなり女の子にモテるだろう。
性格も温和で優しいし・・・ま、たまにブラックに豹変するけど・・
野球やってる時の寿は誰よりもカッコいい。間違いなく最高の男だ。
なのになんでよりにもよって男の俺なんか・・・と思わないではない。

「どうしたの?早くおいでよ。」
ごちゃごちゃ考えていたら寿也が急かしてきた。

「なあ、寿。お前、なんで俺なんだ?」
「え?」
「・・・だから・・・お前なら可愛い女の子を・・それこそ、よりどりみどりじゃねーの?」
「・・・・・。どうしたの?何を今更・・・。」
「男の俺なんか抱いて楽しいか?」
「・・・・・・。」
寿也が俺を見つめる。
俺は言うべきことを言ってしまって、まさに天命を待つ心境。
「吾郎くん・・・・。もう、とっくにわかってると思ってた。」
「え?」
「僕の初恋は吾郎くんなんだ。知ってた?」
「し、知るかよ・・・・!」
俺は顔が赤面するのを感じた。
「そして僕の初恋は今も続いている。」
まただ。寿也の、この瞳・・・・吸い込まれる・・・・・。

その寿也が俺の首に腕を絡めてきた。
俺は寿也の瞳にすっかり酔わされて
そして引き寄せられるように交わされる、柔らかな唇付け。

寿也はその後俺を胸に抱きながら続けた。
「あの日、君が僕に声をかけてくれて、そしてはじめて野球というものを知った。
僕ははじめて受験やテレビゲーム以外の世界を知った。
新しい世界へ、君は僕を連れ出してくれたんだ。
僕には君が・・そう、まるで天使に見えた。」
「や、やめろ・・・!照れくさいだろうが・・・!」
ふふふ・・・と寿也が笑った。
その振動を頬で、手の平で感じて。胸の鼓動を耳に感じて。
全身で寿也のぬくもりを感じて、ずっとこうしていたいと・・心から願ってしまって。
「でも僕が君を好きになったのは君が僕の恩人だからだけじゃない。
それならただの憧れ、目標、親友で終わりだ。
・・・・最初は確かに憧れだけだったかもしれない。
でも、君はどこまでも真っ直ぐで純真で。無邪気で可愛くて。」
「だ、誰が可愛いって?」
俺はムキになって寿也の胸に抱かれながら見上げると、クスクス笑いながら
「ほら、こんなに可愛い。」
見上げた俺にまた唇付けてきた。
「憧れが恋だと気付いたのはいつだったかな。
小学生の時、君が涼子ちゃんにドキマキしている姿を見て
嫉妬してる自分に気付いた時だったかな。
嫉妬したのは君に、じゃなくて涼子ちゃんにね。」
「涼子ちゃん・・・。」
懐かしい想いが俺の胸に蘇った。
はじめて経験した淡い恋心。
でも・・・。
何もかもが一気に醒めてしまったあの瞬間。
「多分、僕ははじめて君に会った瞬間、君の事が好きになったんだと思う。気付いてなかっただけで、ね。」
「・・・・・・。」
「可愛い女の子は僕だって好きだよ。でもそれだけさ。
僕が本当に好きなのは君だから。
君だから抱きたいんだ。
僕が好きな君が男だから僕は男を抱いている。
男が好きなんじゃなくて、君が好きなんだ。
本当の意味で好きでもない可愛い女の子なんて、抱いても意味がない。
勿論、好きでもない男にも興味はない。」
いつの間にか寿也に組み敷かれていた。
寿也の綺麗な瞳が「君だけなんだ」と断言している。

俺は・・・・・・。
どう答えたら良いのか分からなくなった。
自分で問いかけておきながら。
でも目をそらすのは癪だし卑怯だと思った。
「・・・・ありがとな、寿・・・。」
そして逆に俺が寿也を組み敷いた。
「・・・・じゃ、今度は俺の気持ちをぶち込んでもいいんだな?」
言葉にするのは得意じゃない。
だから、さっきの寿也の言葉への返事は行動で示そうと、たった今、決めた。
「・・・お手柔らかに願えるとありがたいんだけど。」
寿也が苦笑気味に言う。
「お前が言うか?いつもいつも、これでもかってくらいに・・・・。」
色々なシーンが思い出されて、なんだか俄然ヤル気が出てきた。
ふふふふふふ・・・・・と笑う俺に、しまった・・!という顔をする寿也。
だが、悪いが寿、もう止まらない。
止める気もない。
俺もお前が好きだ、寿─────。

俺は勢いのまま、寿也に唇を押し付ける。
舌をねじ込んで、良く知った寿也の舌に絡み付ける。
すると負けじとばかりに寿也の方からも絡み付いてきて。
暖かく柔らかなそれが擦り合わせられ、甘い痺れが体中に広がる。
長い沈黙の後、唇だけを離すと熱い瞳が俺を見上げていた。
「吾郎くん・・・。」
吐息が熱い。
突き上げるような衝動を感じ、俺は寿也の首筋に唇を落とした。
いつも寿也がしてくれる事を思い出しながら、ゆっくりと下へ下へと降りていく。
不意にイタズラ心が疼きだし
胸元の、服で隠れて見えそうで見えない場所を意識的に吸い上げ痕をつけた。
「ご、吾郎くん!」
「へっ!いいじゃねーか。たまには。」
いつも寿也が吾郎に刻み付ける、紅い印。
その印が次第に薄れていくのがなんだか悲しくて。
鏡に映し出される自分の姿、その印に触れてみて
それが消える前に会いたいと、つい願ってしまって。
何日か後に寿也もそう思ってくれたら嬉しい。

そしてその場所に辿り着いた。
片方は指で、もう片方は舌で触れ・・、いや、触れようとした時。
「・・・っ!と、寿・・・っ!!」
寿也は俺のそれを握りこんでいた。
「どうしたの?早く続き。」
ニッコリ笑う寿也。
・・・ンのヤロ〜!
見てろ?絶対アンアン言わせてやるからっ!!
指で、舌で。寿也のそれを弄る。
が、寿也も容赦なくそれを握り摩り。
俺はそれに耐えるためにも必死に寿也の乳首を吸い上げた。
すると。
「・・・ん・・・っ!」
初めて寿也が声を発した。
嬉しくなって俺は夢中で吸い上げた。
ぴちゃ、ぴちゃ・・・。
だが、寿也も俺の先端を親指でクルクルと摩りつけながら握りこむ指を躙らせて。
たまらない・・・・。
「うっ・・・、あぁ・・・っ!!」
思わず寿也の胸元で声を上げてしまった。

こ、これじゃ、どっちが攻めてんだか・・・!
そっちがその気なら、俺だって・・・!

俺は寿也のそれを咥え込む。
寿也は相変わらず俺のそれを握ったまま。
いわゆる69の体勢に近い形でお互いを弄り続けた。
寿也のそれを口いっぱいに頬張って舌を這わせながら吸い上げると
寿也の息が詰まる音が聞こえて嬉しくなった。
が、寿也は寿也で負けじとばかりに俺のモノを握り込み
もう一方の手で袋をやわやわと弄る・・
たまらなくなり俺は夢中になって寿也自身にすがり舐めまわすが
寿也も容赦なく。
先に放ったのは俺のほうだった。

はぁ・・・・はぁ・・・・・・。

俺の白い液体が寿也の胸に放たれて脇に流れている。
それを見ていたら、妙な感情が俺の中を支配した。

───もっと寿也を俺で汚してやりたい。

そんな俺のドス黒い感情など知る由も無い寿也は、何食わぬ顔でティッシュで自らの胸を拭っていた。
「随分たくさん出たね。さっき出したばかりなのに。」
そしてニッコリ笑う寿也。
「お前のはまだ、パンパンに腫れ上がったままだな。」
「・・吾郎くん?」

俺のは今出したばかりで萎えてしまった。
だけど、すぐ腫れ上がるさ。
お前が、俺を奮い立たせてくれるんだろ?寿・・・・。

俺は寿也に跨り寿也の怒張を自らの蕾に押し当てた。
「ちょ、ちょっと待って!君が挿れるんじゃ・・・!?」
「ああ、いいんだよ、これで。お前の張り詰めたものは俺の中でだけ感じて欲しい。
そして一滴残らず、俺の中に出してくれ。そして俺のモノは・・・。」
そう言いながら、俺はゆっくりと腰を下ろす。
寿也の、いつもより大きく腫れ上がったそれがゆっくりと俺の中を侵食していく。
やっぱり・・・・この瞬間が、この感じが・・・俺はたまらなく・・好きだ、寿・・・。
根元まで入りきった。
中に寿也がいるだけで、たまらない。
寿也の鼓動を俺の中で感じられる。
一つになれたと実感できる、この時が俺は一番・・・・。

ゆっくりと動きを開始する。
腰を上げて、そしてストンと落とす。
いつもと違った体勢だと、いつもと違った場所を摩られ突かれて、なんだかたまらない。
少しづつ、自らの快楽を求めて寿也のモノがいい場所に当たるように動きを激しく繰り返していく。
寿也は寿也で俺の腰を掴んで下から突き上げる。
そのリズムがピッタリと一致してギリギリまで引き抜いては最奥の限界まで力強く突き上げられてたまらない。
甘い痺れが、居ても立ってもいられないような、でももっと欲しいような、そんな感覚が俺を襲う。
寿也の顔を伺い見ると寿也も結構キている様だ。
もう少し・・・もう少しだ。
もう一度、寿也の分身を俺の中に・・・・。
俺は更に激しく腰を動かす。
寿也も更に激しく突き上げて・・・・・そして・・・・・・。
「っく・・・・・・!!」
寿也が放つ瞬間の、この顔。
たまらない。たまらなく・・・・好きだ。
この顔も寿也が放つあの液体も、俺だけのものだ。寿・・・俺だけの・・・・。

そして俺も限界が。
俺は後ろの蕾から寿也を引き抜き、少し前へ体をずらして
寿也の顔をめがけて俺のそれを放った。
白い液体にまみれる端整な顔。
寿也自身も放った直後でその表情は恍惚状態。
荒い息に火照った顔。
そこに流れる白い液体。
たまらない。
出したばかりだというのに異様な興奮が収まらない。

寿也は息を切らしながら途切れ途切れに言葉を紡いだ。
「・・・酷いな・・・・僕に挿れない代わりに・・・こういう事が・・したかったの?」
そして寿也は手の甲でその整った顔を拭い、指についた液体をぺロッ・・と舐めた。
「・・お前のその顔、すんげ〜そそる。」
俺も興奮収まらぬまま、寿也のその顔をぺロッ・・と舐めてみる。
「・・・まっず〜〜〜!お前、こんなもんいつも飲んでるのかよ!」
あまりの不味さに俺は一気に正気へ戻ってしまった。
しかし寿也は今度はティッシュで顔を拭いながら、ニッコリと断言する。
「まずくなんかないさ。僕で君が感じて出したモノだから。とても美味しいよ。」
「・・・・・・。お前、なんでそんな恥ずかしいセリフをいつもシレッ・・と言えるんだよ・・・。」
「だって本当の事だもの。それより、ベトベトになっちゃったからお風呂に入らない?」
主導権を握ったと思っていたのに、なんだか気付けば寿也のペース。
「一緒にかよ・・・・。」
「当然。僕も君の顔にかけたくなってきたしね。でもお風呂ならすぐにきれいに出来る。」
「ど、どんな理由だ!俺はお前に挿れる代わりにぶっかけたんだ!これで差し引きゼロ!」
「どんな気持ちだった?」
「え?」
「だから、僕の顔にかける時、何を考えてた?」
「・・・・・・。」

お前を俺でもっと汚したかった、なんて・・・言えるかよ。

「ま、いいか。大体分かるから。でも確信に変えるために僕も実践させてもらうよ?」
「な、なんでそうなるんだよ!!」
「さっきの吾郎くん、すごく男っぽくてセクシーだった。あんな顔も出来るんだね。
新しい君を発見できて嬉しいよ。」
そう言いながら、ずるずるとバスルームへと俺を引きずって行く寿也。

結局・・・俺は寿也には逆らえない。
そして寿也には適わない。

でも、きっとそれでいいんだ。


誰よりも誰よりも・・・愛しいお前になら。















end


最初の一行を書いてから一体何ヶ月放置したんだろう・・・。
これを書くのに随分長い間かかってしまった。
この話の原型は・・随分前に頂いたバトンで
吾郎の襲い受けネタみたいなのを書いたのですが、それが元だと思います。
ずっと「そのイメージで書きたいな」と思っていました。
で、何が書きたかったかと言いますと・・
なんとなくトシゴロだと、どちらかと言うと
「トシ→ゴロ」みたいな感じが多かったのですが
吾郎の気持ちも書きたかったんです。
吾郎も寿也が大好きなんだよ、と。
それならエロである必要はないのかも知れませんが
まあ、私も書くものですから・・(汗)。
それにしてもココはどこなんでしょうね?
ホテルの一室?とするとW杯の最中でしょうか?
それともラブホ?
あまり考えませんでしたが・・すいません。
それではここまで読んで下さりありがとうございました!
(2009.1.20)


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