「お前、いつの間に車なんか運転できるようになったんだ?」
寿也が車を持っている、と聞いて大いに驚いた吾郎。
面白いから乗せろ!!と言い出して
現在、二人でドライブ中。
車を動かしてすぐに、寿也は吾郎にそう言われて思い出した。
高校3年の夏の吾郎の怪我を。
「そうか・・。僕等は夏の大会が終わった後、大抵、免許を取りに自動車学校に通ったけど
君はリハビリが大変で、それどころじゃなかったんだったね。
吾郎くんも早めに取っておいた方がいいんじゃない?
アメリカじゃ、車がないと不便でしょ?」
「そうだな・・・。」
それはともかく、だ。
寿也が車の運転をしているのがどうにも不思議、というか・・・新鮮というか・・・。
とにかくちょっとした驚愕であった。
吾郎は車の事なんて全く知らなかったが、こんなカッコいい高そうな車を堂々と・・。
ハンドルを片手にギアを動かす姿に、つい見惚れてしまう。
特にギア。
キャッチャーなんてやっているくせに、しなやかで長い指。
手の平でギアに触れながら、前へ後ろへ右へ左へと動かしていく
その手の動きが、指先の変化が
なにやらとてつもなくセクシーで。
大人の男を、寿也の中に見てしまった、そんな思いで。
「どこか行きたいところ、ある?」
「べ、別に・・・どこだっていい。」
そんな事を考えていた時に、全くいつもどおりに爽やかに訊ねられても、答えに困る。
「どこだっていいって・・・。車に乗せろと言ったのは吾郎くんじゃないか。」
寿也は苦笑いを浮かべた。
「だ、だって・・・だな・・。面白いじゃねーか。
俺のダチが車なんかに乗ってるって。
車を運転するのは大人のする事だって思ってたからよ。つい、珍しくて・・・・。」
すっかり、しどろもどろな吾郎。
「その「大人」に僕達もなったってことさ。誰もが皆・・いつまでも子供のままじゃいられない。」
そんな事を言いながら、またギアチェンジする。
この手、この指だ。
いつもこんな風にしなやかな動きで俺に触れる、俺のそれに・・・触れる・・・・・・。
寿也は吾郎の変化に気付いていた。
だから、口元に笑みを浮かべながら寿也は、ちょっと大胆な提案をしてみた。
「じゃあ・・・ホテルへでも行ってみる?」
「・・・・!!」
吾郎は顔を真っ赤に染めて、寿也のほうへ振り向いた。
「・・・吾郎くんって本当に分かりやすいね。」
と寿也が笑う。
バレてる・・・俺が運転する寿也を見てモヤモヤしてるのが・・・バレてる・・・。
そう思うと、吾郎は羞恥に消え入りそうになってしまった。
しかし、なんとか体面を取り繕って、気付かぬ振りで聞いてみた。
「ホ、ホテル・・って・・・。」
「ラブホテル。一回くらい入ってみたって良いんじゃない?」
ああ、やっぱり・・・・と、今度こそ吾郎は言葉を失ってしまって。
でもなんとか振り絞って言った。
「・・・ラ、ラブホテルは・・・いかにも、って感じで・・嫌だ。」
寿也の顔も見ることが出来ず、俯いてしまった吾郎だが
俯くとまた、華麗にギアチェンジする寿也の手が視界に入り、逆効果だ。
中心に熱が集まってくるのが分かる。
一体どうしたらいいんだ。
「そう?じゃあ・・・・。」
そうして辿り着いたのがこの美しい森。
「ここなら、いい?」
吾郎は答える事が出来なかったが、その無言を承諾と受け取った寿也はエンジンを切った。
「吾郎くん・・・。」
寿也は吾郎の肩を引き寄せ、顎に手をやりこちらへ振り向かせて。
頬を染めつつ、戸惑ったような怒っているかのような表情の吾郎が、たまらなく愛おしい。
唇を重ねる。
舌を差し込み、絡めながら・・・・
寿也は吾郎の中心部に手を伸ばした。
「やっぱり・・。もう、こんなになってる。いつから我慢してたの?」
「・・・・っ!」
吾郎は羞恥に瞳を逸らすが
「ギアを握る僕の手を見て・・・君のここを握る僕の手を思い出しちゃったんでしょ?」
吾郎の瞳が大きく見開かれた。
「ホント、吾郎くんって分かりやすいね。」
寿也はニッコリと笑う。
「いつでも、いくらでも握ってあげる。」
しかし吾郎はあまりの恥ずかしさに、その恥ずかしい事をズバリ言い当てられてしまって
唯でさえ染まっていた吾郎の顔はみるみる真っ赤になってしまって
軽いパニックに陥ってしまった。
「違う・・俺は、そんな・・・恥ずかしい事、俺は・・・・あ・・っ!・・触るな!」
そう言いながらも抵抗はゆるい。
寿也はほくそ笑みながら、吾郎をもう一度無理やり引き寄せて深いキスを交わした。
舌を絡ませるにつれて、吾郎の体から力みが消えていく。
「吾郎くん・・・恥ずかしがる必要なんて・・・ないんだ・・・。」
舌先を摩り合わせて
「僕も・・・同じだから・・・・。」
寿也が言葉を口にすると舌が離れてしまって・・それを吾郎の舌が無意識に追った。
「僕も・・車で・・この密室に二人きりになった時から・・・君に触れたくて仕方なかった・・・。」
そしてまた、唇を合わせて・・口内では水音が響いて・・・・。
「寿・・・・。」
寿也の手が吾郎のズボンのボタンを外し、ファスナーを下ろし
そして下着の中から、それを引きずり出した。
「吾郎くんのご想像どおり、これから運転してみようか。」
「え?」
「エンジンをかけて・・クラッチ、そしてローギア。」
「・・あ・・!!」
寿也は吾郎の肉棒をギアに見立てて動かし始めた。
「スピードを上げるよ?ギアをセカンドへ・・。」
ギアを動かす必要のない時も寿也は「ギアレバー」に巧みに触れていく。
「吾郎くん、ちゃんんと見てて。」
「・・い、いや・・・だ・・・っ!!」
「駄目。ちゃんと君の「ギア」を見て。」
寿也の有無を言わせないこの口調。
吾郎は薄く目を開けてそこを見てしまった。
すると、自らのそれに手をあてて・・・そう、さっきまでギアを操る寿也の手に見惚れてしまったそのままに
吾郎の肉棒を操る寿也の綺麗な手。
・・・ドクン・・・!
「あ、ああ・・・っ!!」
俺のそれを・・寿也の手が・・・。
一度、見てしまうと目が逸らせない。
スピードを上げたり下げたり・・・そのたびに華麗にギアチェンジしていく寿也の手
そして
その美しい手の動きのまま、直に感じてしまう・・・。
「更にギアチェンジ・・・。」
「や・・っ!!もう・・・!!」
「あ、なんだ・・・渋滞してきた・・・。」
そう言いながらもまた、吾郎のそれを操って。
寿也の手が、吾郎のそれに絡まって、前に後ろに、右に左に突然容赦なく揺り動かされて
ギアチェンジの必要ない時でさえ、妖しげに指で手の平で擦られて・・・。
「工事だったんだね、渋滞の原因は・・。
さあ、工事区間を抜けた。スピードを上げよう。」
「あ、ああ・・・・っ!!だ、駄目・・・寿!!」
「なに?」
寿也の「ギアテクニック」と手淫で吾郎はもう・・・限界が目前だった。
いつものように、ただ、サれるのではなく「運転」されるのが新鮮すぎて
そして「ギア」と称される自らから目を逸らせなくなってしまって、更に昂ぶってしまって。
「も、もう・・・頼む、・・だ、駄目・・・だ・・・!!」
「何が駄目なの?」
寿也は瞳を見開いて訊ねた。
「・・も、で、出る・・・車が・・・汚れる・・・・っ!!」
「ギアから何が出るの?」
寿也は手淫を緩めずに素直に聞いた。
「バ、バカヤロ・・・っ!!分かってる・・・くせに・・・!!」
寿也は溜息をついて。
「しょうがないね。」
やめてくれるかと思った吾郎だが、甘かった。
寿也はギアに・・吾郎の肉棒にむしゃぶりついてきた。
「な・・・ッ!やめ・・・あ、ああ・・・・・!!」
爆発寸前だった吾郎自身。
それに寿也のあたたかな舌が、唇が容赦なく・・・・。
「あ、ああ・・・も、や・・・・ああ!!」
ドクッ・・・・ドクドク・・・・ッ・・・・!
寿也の口内に放たれたそれ。
全身が引き攣り、顔を歪ませた吾郎だが・・出し切ってしまうと、グッタリとシートに体を預けてもたれかかった。
寿也はそれを飲み込みながら
最後に「ギア」を清めるように全体に舌を絡ませ完全に舐め取ると、ようやく吾郎から離れた。
「たくさん出たね。」
口元を手の甲で拭いながら、ニッコリと笑う。
吾郎はゼーゼー・・と荒く息をしながらも、悪態をつくのを忘れない。
「この・・・変態・・・野郎・・・・・。」
しかし寿也はそんなセリフはサラリ・・と無視して。
「外に出ようか。ここじゃ、さすがに狭いから、これ以上は無理があるしね。」
戸惑う表情の吾郎に、寿也は
「大丈夫、こんな所へ誰も来やしないよ。」
そして唇付けながら、寿也は吾郎の体をボンネットに倒していった。
「吾郎くん・・・。」
青々と茂った木々、そして木漏れ日。
聞こえるのは時々そよぐ風の音、小鳥のさえずり。
そして何よりも、吾郎のすぐ傍に、至近距離に寿也の顔がある。
深い緑色の瞳が吾郎だけを見つめている。
誰よりも愛しい、寿也が・・アメリカにいた間、恋焦がれて止まなかった寿也が今、ここにいる。
吾郎は放った直後だからだろうか、素直に自らの心の赴くままに
寿也の頬に両手を添えて、今度は吾郎から寿也の顔を引き寄せ唇付けた。
誰もいない森の奥。
いつまでもいつまでも愛を交し合う二人を、大自然が、森の空気が、木漏れ日が見守ってくれた。
「寿・・・。」
「何?」
「アメリカに・・・来いよ。」
それには寿也はちょっと困ったように微笑んだだけだった。
「僕も君の傍にいたい・・・できることなら。
でも・・・このお互いの立場はどうしようもない。FA宣言できるようになるまではね。」
寿也の答えは聞くまでもなく、吾郎には分かりきっていた事だった。
「離れ離れは辛いけど、久し振りに会えた時の喜びは・・・いつも一緒にいたら味わえない。
僕はどんなに離れても、いつだって君を愛しているから・・・。」
それを聞いて吾郎も諦めたように、でも幸せそうに小さく笑んだ。
「なんだかんだ言って、俺とお前って、本当に一緒にいられたのは海堂の時だけなんだよな。」
「いいんだよ。それで。僕はあの時、悟ったんだから。
立ち止まらない・・・どんな時だってチャレンジャーな君だからこそ、僕はこんなにも君が好きなんだ。」
「・・・・じゃあ、離れ離れってのも・・・俺達の定めなのかな。」
「そうかもね。君は君の道を進むのを止められないだろ?
僕だって僕の道がある。
でもそれで良いと思う。
・・・それぞれの道を進んで・・離れていても愛し合えるって・・・凄い事だと思わない?」
そう、サラリと言われてしまって。
吾郎は心からの微笑を浮かべた。
「オフの間・・・・一年分抱いてくれ。それこそ足腰立たなくなるくらいに。
シーズン中、耐えられるように・・・・俺を抱き殺してくれ。」
「・・殺しはしないけど・・・そのつもりだよ。」
寿也もニッコリと笑んで、そして今日何度目かの愛撫を再開した。
森に辿り着いたのは昼過ぎだったのに、もう夕日が美しい時間になっていた。
それでも止まらない。
求め始めたら、止まらない。
逢魔時。
二人の逢瀬は更に激しさを増す。
やがて全てが闇に紛れるこの時間。
いつまでもいつまでも・・・・永遠に愛して・・・・・・。
end
私の運転免許は「ATのみ」なので、ギアチェンジとか全く分からないんです(苦笑)。
「MT車の運転方法」等で検索してみたけど
専門用語がいっぱいで何がなにやら・・・これは日本語なの?状態で・・。
そんな訳で、ギアチェンジの所はなんとか検索して出てきた超初心者向けサイトを参考にしました。
ボロが出るのを恐れて詳しい描写は避けたつもりですが
それでも色々違ってるかも・・ご容赦願えると助かります。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました!!
(2010.4.13)