ロサンゼルス郊外の球場。

「おう。久しぶりだな、吾郎。」
「お、親父〜〜!?」
驚いた。何故こんな所に?
「喜べ吾郎、代表入りだ。故障で辞退した野呂君に代わってお前が選ばれた。」
「な、なに〜〜〜〜〜〜っ!?」
「代表入りおめでとう、吾郎くん!」
「と、寿・・・・・。」
沖縄で寿也と別れてからまだ数週間、といった所だというのに
それが途方もない昔に思えた。














─────その晩。

「浮かないね。」
俺の部屋へ寿也が尋ねてきた。
部屋に入れないのも不自然だ、今までの俺達の関係を考えると。
だが、今、そういった事になる訳にはいかない。
大体、つい数時間前まで思ってもいなかったんだ。
寿也に再会するなんて。
わかっていたら・・・・。

事前にわかっていたら、違っていた・・・だろうか?
昨日が、一昨日が違っていた・・・・だろうか・・・・?

「当初はあんなにワールドカップを楽しみにしてたのに
なんでそんなにテンション低いのさ?
選ばれたからには燃えるのが、いつもの吾郎くんじゃないか。」

燃えたい。
燃えたいさ、俺だって。

「自分の中で代表入りに一旦、見切りをつけたせいもあるが・・・。」

確かにそうだ。
俺にはまだ力がない。
それに俺のようなマイナーリーガーなどいてもいなくても
日本チームに何の問題があるというんだ。

だけどそれだけじゃない。
代表入りしたくない一番の原因は・・・・・・。

「え・・・・?何言ってんの、吾郎くん?」
「?」

一旦部屋を出た寿也はノートパソコンを持ってもう一度俺の部屋へやってきた。

「なんだよ。」
「吾郎くんは本当になんにも知らないんだね。」

寿也に見せられたDVD。
日本の現状、世界の現状。
メジャーリーガーが大半を占めるドミニカやベネズエラを含めた二次リーグで
上位二カ国に入らなければ決勝トーナメントへは進めない。
そんな現状を見せ付けられて
いつしか、俺は「そんな事」など忘れてしまって、寿也の話に聞き入っていた。

俺は無意識に拳を握り締める。

「いやでも燃えてきたぜ。
こいつらを倒さねえとギブソンに会うこともできねえんだからな!」

俺の中の野球魂に火がついた。
やってやる。
俺にどこまで出来るかわからないが、とにかくやってやる。
日の丸を背負い、ギブソンと戦えるかもしれないなんて
これ以上の夢の舞台はない・・・・!

「やっと吾郎くんらしくなってきた。」
寿也がニッコリと笑った。
「ああ!寿、お前とこんな舞台で一緒に戦えるなんて最高だぜ!」
「そうだね。こんなに小さい時に「いつかまた、きっと一緒に野球やろうね!」って誓ったもんね。」
寿也は幼い日、吾郎が引っ越す事になったあの別れのキャッチボールの事を言っているのだろう。
「・・・覚えてたのか?」
「忘れた事ないよ。」
「そうか・・・・。」

実は俺が右肩壊して抜け殻みたいになっちまってたあの頃。
俺を奮起させてくれたのは親父の言葉と・・・
寿・・・・お前との遠い日の約束だったんだ。(『夢の途中』参照)
そんな事、恥ずかしくて言えねえけどよ。
お前はとっくに忘れてると思ってたのに。
でも覚えていてくれた。
それがやけに嬉しかった。

「でも俺が神奈川に帰ってきてからの寿くんは、すんげ〜意地悪だったっけな〜!」
「・・・・!」
「俺の渾身の球を軽々場外にぶっ飛ばしといて、爽やかスマイルで「いけてるいけてる〜」だもんな〜!!」
「あ、あれは・・・・!」
寿也が慌てる。
俺はそれがなんとなく嬉しくてさらにイジメてみたくなって。
「友ノ浦戦の直前なんて、寿くん、特に怖かったぜ?俺、金玉縮み上がっちゃったもんな!」
「だからあれは!!もう、いいよ。吾郎くんがそんなに根に持つタイプだとは思わなかった!」
「あ、怒った!あはは!!」
俺は寿也を指差して笑う。
だが、寿也はホッとしたような表情で、ベッドに腰掛けていた俺の隣に腰を下ろした。
「安心したよ。やっといつもの吾郎くんになったね。
さっきまで別人みたいだったから何かあったのかと思って心配したよ。」
「・・・・・。」
「吾郎くん・・・。」
寿也の手が俺の顔と後頭部に伸びる、いや伸びようとした時
「あ、あのさ、今日はもう疲れたから寝たいな〜、なんて・・・。
昨夜いきなりボスからロスへ行け!って連絡があってよ
そんで飛行機がすんげ〜早朝しかなくって昨日ろくに寝てねえんだよ。
お前も早く寝た方がいいぞ?寝る子は育つってな!ははは・・・。」
俺は多分引き攣った笑顔をしていたんだろう。
本当に・・我ながらもっと上手くやれなかったのだろうか、と言ってしまってから後悔した。
「・・・・・。」
寿也が俺の顔をじっと見つめる。
何か疑うように。
俺はひたすら微笑んだ・・・つもりだ。
「清水さんと何かあった・・・・訳ないか。吾郎くんだしね。」
と、次の瞬間。
寿也は俺をベッドに押し倒していた。
呆気に取られる俺と、只ならぬオーラを漂わせ、俺を見下ろす寿也。

だめ、だ・・・逃げられない・・・!

寿也の唇がゆっくり降りてきた。
触れ合う唇。柔らかなその感触。
そして寿也の舌が進入してくる。
いつもなら、俺の方からも絡めてしまうのだが・・・どうしても俺にはそうできなかった。
不審に思われるのが分かっていても・・・。
ああ、どちらにしてもこのままではあと数秒後には見られてしまう。
昨夜の・・・・刻印。
俺は虚しい抵抗だと分かっていたが
脱がされないように、できるだけ自然に見えるようシャツを押さえた。
だが、やっぱり寿也も何か感じたんだろう、無理やりたくし上げられてしまった。
思わず顔を背ける。

The End・・・

キーンの声が聞こえたような気がした。









「へえ・・・なるほど。そういう事か・・・・。」
寿也の声がやけに遠く感じる。
バレた・・バレてしまった・・寿也に・・・。
怖い。
恐ろしい。
恐怖に体が竦むなんて事は初めてだ。
「・・・・・驚いたな。もう誰かをそそのかしたの?」
顔を背け、目をギュッと瞑ったまま身動きできない。
僅かな沈黙も永遠に思えて。
「沖縄で君と別れてから、まだそんなに日が過ぎてないのに。」
体が震える・・・心の底から震えが走る。
「君が誰を抱こうが僕には関係ないし興味もない。」
聞こえているのだが、理解ができない。
ただ、頭に声が響く・・・それだけ。
「でも、君が誰か他の男に抱かれたのは許せない。」
そこで俺を見下ろしていたのは
友ノ浦戦での寿也など比べようもない程の無表情、血も凍りそうなその瞳。
「覚悟するんだね。」

悪夢の夜が始まる・・・・。












寿也はいったん俺から離れ、そしてバスロープの腰紐を持って来て俺を見下ろした。
「・・・大丈夫だって、縛んなくても。逃げたりしねーよ。」
「わかってる。でも、今回は縛りたいんだ。いいよね?」
俺の顔も見ずに、既に作業を進めつつ言う。
今の寿也に俺の意見を聞くつもりなどないだろう。
寿也は淡々と俺の両手首を縛り上げ、ベッドの端に固定してしまった。
縛られるのはいい気持ちではない。
寿也にこんな事をされるのは初めてだ。
寿也に酷く抱かれた事もあったが縛られた事だけはなかった。
それだけ俺が寿也を怒らせ傷つけてしまった、という事だ。

俺は一体なんなのだろう。

それは、オフで帰国していた間、清水と3人でスポーツセンターへ行った時
寿也に抱かれてしまった時、思った事。

俺は一体、誰が好きなんだろう。

寿也?キーン?・・・・・清水・・・・・?


そんな事を考えていたら寿也が俺の上に覆いかぶさり、そしてキスしてきた。
舌が進入し、俺の舌に絡まる。
俺が躊躇していても全く構わず絡めてきて、そして摩る。
戸惑いながらの唇付けでも、やはり感じてしまって。
ジン・・・と中心に熱が集まっていくのを感じた。
寿也のそのガッチリとした背中に縋りつきたい、そんな衝動が俺の中を駆け巡る。
しかし腕は俺の頭上に固定されていてそれができない。
できないのが・・・・・悲しい・・・・・
と思った反面、驚いた。

俺はもう・・・・寿也に縋ろうとしている。
寿也を求めている。
たった24時間前、あんなに激しくキーンに抱かれたばかりだというのに。

寿也の唇が耳を弄り始めた。
舌が差し込まれ舐められ・・・水音が大きく響いてたまらない。
耳が弱いのは昔からだ。
寿也はそれをよく知った上で耳を攻める。
・・・あのスポーツセンターのシャワールームでもそうだった。
「ねえ・・・誰?誰が君をこんな姿にしたの?」
直接吹き込まれた。
響く寿也の甘い声。
「・・・、っ・・・!」
だけど言えない。これだけは言えない。
「言えない?」
見透かすようにまた直接吹き込んで。
「・・・・っ!!」
もう一度唇付けて舌を俺の口内でかき回して
「言いたくないなら言わなくてもいいよ。大体わかるから。」
俺は瞳を見開いた。
「ギブソンJr.かバッテリー組んでるキーン。」
「な・・・。」
俺の表情を伺っていた寿也が、クスッ・・と笑った。
「でもこの痕はまだ新しいから・・・やっぱりキーンかな。」
その時、俺はどんな顔をしていたんだろう。
そんな事、考える余裕がなかった。
いきなり真実を言い当てられて・・・どんな表情をすればいいのか、なんて
そんな余裕、なかったんだ。
一秒が永遠に感じられて・・・世界がその瞬間、止まってしまったのかと思う程だった。
「ははは・・・!吾郎くんは本当に正直だなあ!嘘がつけないんだね。」
寿也は珍しく盛大に笑いつつ続ける。
「ねえ・・・いつ?いつこんなことされたの?もしかして昨夜?」
俺はもう・・・放心してしまって・・・・。
ただ、音が響くだけ。
意味を成さない音が、甘い響きが
頭の中を右から左へと通り過ぎていく。
「じゃあ、君は昨日キーンに抱かれて今日は僕に抱かれるんだね。まるで娼婦だ・・いや、男娼か。」
「・・・・!!」
この言葉にはさすがに意識を浮上させられた。
そして思わず寿也を睨み付ける。
「なに?その顔は。違うとでも言うの?」
寿也は首筋を舐め上げながら
「可愛い彼女を置いてきぼりにして、男に抱かれ歩いてるなんて・・そうとしか言いようがないじゃないか。」

可愛い彼女を置いてきぼりにして
男に抱かれ歩いている・・・・か・・・・。

確かにそうだ。

俺は・・・・・・。

「不愉快だよ・・・とてつもなく。」

俺は・・一体・・・。

「お仕置き、しなくちゃ・・・・ね。」









初めて縛られたのは一昨日、キーンに・・・・。
あの時と同じような状態で。
あの時は無理やり抱かれた。
無理やり・・・だったと思う・・・いや・・・わからない・・・。
だが昨夜は間違いなく合意の上で。
そして今は。
合意の上だが、同じように縛られるとどうしても思い出してしまう。
だから縛られたくなかった。

両手を高く上げられた格好で寝そべる俺。
手を高く上げると胸が反り返り、乳首を突き出す格好になる。
舐めてくれ、と強請るようにも取れるその姿。
早速、寿也がそれを舌で舐め上げた。
「いやらしい胸。そんなに突き出さなくても舐めてあげるよ。」
「あ、ああ・・っ!!」
「そうやってキーンにも強請ったの?」
「・・・!」
答えられる筈がない。
「それにしてもすごい数だね。もしかして彼は今日、君と僕が会うことを知っていたの?」
・・・・・・。
知って・・・いたのだろうか・・・・?
寿也に言われて初めて気がついた。
そういえば、ボスから電話があったと話をした。
勘のいいヤツだ、W杯の事と気付いたかもしれない。
・・・!そういえば!
今日、別れ際に「佐藤によろしくな」と、確かアイツ・・・・。
「じゃあ、これは僕への挑戦状、という訳だ。」
そうなのか?
あいつは知っててわざとこんなに痕を残した?
だからあんなに激しく何度も何度もイかされた・・・・?
「露骨だね。」
寿也の怒りが伝わって来る。
「この痕は僕が残らず付け直してあげる。」
付け直す?
キーンが俺に付けた・・・痕を・・・・・?
俺が思わず目を見開いたのを見て
寿也の瞳がより一層冷えきったものとなる。
「まさか嫌だ、なんて言わないよね。」
「・・・す、好きにしろ・・・・!」

どう・・・しちまったんだ、俺は・・・・・。
寿也が俺を抱くのは今に始まった事じゃない。

ただ・・・・
触れる手が・・・その触れ方が・・・唇の落し方も・・・吸い方も・・・・
こんなに・・・違うだなんて。
昨日与えられたものと、今、与えられているものと
どっちがイイとか悪いとか、そういう問題じゃなく・・・・。
ただ、違う事が・・・・悲しかった。

本当は違うものなど知るべきじゃなかった。
知りたくなどなかった。
それも同性である男からのものなど。

俺はまだ女も抱いた事がないのに。

俺は・・・一体何をやっているんだろう。
昨日はキーンに抱かれて今は寿也に抱かれて。
一応・・・・俺には彼女がいるのに・・・・・・。
あいつにはキスの一つも出来ないのに。
寿也やキーンとセックスばかりして。
セックスって言っても抱かれる方だ。
つまり女役。
女役ばかりやってきたからあいつを抱こうとも思えないのか?
俺には女は抱けないのか?
わからない。
日本で寿也に抱かれた時もそう、思った。

俺は一体なんなのだろう?

俺は男の餌食になる定めだとでも?




寿也が吸い上げていく。
無数に散らばる、キーンの印を。
昨日は同じ場所をキーンが吸い上げていた。
今は寿也が・・・・。

塗り替えられていく。
少しづつ。


俺は・・・・
わからない・・・・。

俺は・・・・・・。





寿也の動きが止まった。
愕然とした顔で俺を見下ろしている。

どうしたんだ?
・・と思ったその時
俺は初めて自分の両の瞳から涙が流れていた事を知った。



「吾郎・・・くん・・・・・・。」
寿也の声が震えている。
「・・・それが吾郎くんの・・・答え?」
「・・・え?」
寿也が何を言おうとしているのか分からない。
「涙を抑えられないほど、あいつの痕が消えるのが悲しいの?」
「・・・・!」
「沖縄で別れてから、まだ2〜3週間しか経ってない。
あの時の君は僕を見てくれていた。たった2〜3週間だ!
その間に・・・・何があったんだ・・・・・。」

寿也は俯いた。
涙が混じる、その声が震えている。
でもそれを必死に隠そうとして。


「俺・・・俺は・・・・・・。」
「・・・・・・。」
寿也は悔しそうに唇を噛む。
瞳から光るものが流れ落ちた。
そんな寿也を見て、俺はますます・・・・。
「俺って・・・・なんなんだろうな・・・・・。」
俺ははじめてその疑問を口にした。
「・・・・・・。」
寿也は瞳を俺に向ける。
綺麗な大好きなその瞳が涙で濡れていた。
・・・・寿也の瞳をこんなふうにしてしまったのは俺・・・・。

「俺は男とこうなる定めなのか?」
「・・吾郎くん・・・・。」
「彼女が出来ても手も出せねえ。なのにお前や・・・・。」
俺は一瞬迷った。ヤツの名を口にするのを。
口にしたら更に寿也を傷つけてしまう。
だが、覚悟を決めて口にする。
「お前やキーンとはセックスばかりしてる。」
暫くの間。
寿也が俺を見つめている。
「吾郎くん、一つだけ忠告していい?」
再び口を開いた寿也は普段の冷静さを取り戻しつつあるように思えた。
「前、スポーツセンターではあんな事言ったけど・・・・清水さんとは別れたほうがいい。」
「・・・・・・・。」
そう聞いても俺は特に驚かなかった。
「僕が見ている限り、君が・・・・・。」
寿也も一瞬躊躇する。
アイツの事を言おうとしているんだろう。
「君が僕やキーンより清水さんを好きなようには思えない。
大事にしたいから抱かない、という考え方もあるけど
それならなんで君は男とセックスするんだ?何故涙まで・・・・。
流されただけ、と言い訳するのは君の勝手だけど
君が気付いてないだけで君は清水さんより・・・・。」
苦しそうだ。
そこまでの苦しみを与えてしまったのか、俺は・・・・。
「相手が僕だけなら、僕は別に清水さんと付き合っていようが構わないと思ってた。
僕なら、彼女にバレないように協力もしようと思っていた。 彼女には悪いけど、隠れ蓑にはちょうど良いしね。
でもここにキーンまで入ったら・・・いずれ君がおかしくなってしまう。」
寿也の謂わんとしている事はなんとなく理解できた。
確かに清水がいて、あいつとはキスも出来ずに、でも頻繁に会って
そして寿也やキーンとはセックスばかりしていたら、いろんな事考えたり気を遣ったり・・いずれはパンクするだろう。
清水には悪いが・・・寿也の言う通りかもしれない。
「それに言いたくないけど・・・・ギブソンJr.。
彼はまだ自覚してないと思う。でも彼も間違いなく君を好きになる。」
「Jr.が?お前、何言ってんだよ・・。」
「・・・わかるんだよ。同じこと考えてる男の事は。日本でも今までも何人かいたさ。
挙げるとキリがないけど・・・清水さんの弟、大河くんが一番有力だったかな。」
「大河〜??」
俺は呆れた。
「・・・信じる信じないは君の自由さ。だけど君は男を惹き付ける。それは確かだ。」
「・・・・!」
俺は溜息をついた。
「・・・・同じ事を言うんだな・・・・。」

寿也は暫く俺を見下ろしていたが、やがて諦めたように俺の腕の拘束を解いた。
そして。
「吾郎くん・・・。」
俺はゆっくりと起き上がり寿也に向き直る。
寿也は真っ直ぐな瞳を俺に向けて
「僕は吾郎くんが好きだ。」
「・・・・・。」
・・・・いつもなら「俺も」と・・言葉にできないまでも、そういう態度を取れた。
しかし・・・。
「初めて会った、あの日からずっと好きだった。」
「寿・・・・。」
なんと答えたら良いのだろう・・・自分の事なのに俺には分からない。
「この想いは誰にも負けない自信がある。」
「・・・・。」
「だから負けない。いきなりぽっと出てきたようなキーンには負けない。絶対に負けない。」
寿也のこの瞳。
強い光を放つ、不思議な色をした・・・吸い込まれそうなこの瞳。
「僕は君を抱く。W杯の間中、毎晩抱き続ける。
君がホーネッツに帰ってしまえば断然キーンが有利なのは分かってる。
でも僕は君が好きなんだ。」
寿也・・・・。
「君の中で本当の答えが出たら・・・・。
もし僕じゃなくてキーンを選ぶと決めたなら、いつでも拒絶していい。
拒んでも流されるような決意なら本物じゃない。
君の腕力なら力ずくで拒むことくらい簡単な筈だ。
でも拒みきれずに流されるようなら・・・僕は無理やり君を抱くから。」

そして改めて寿也は俺を押し倒した。
俺の顔の両側に肘をつき、見下ろす。
何度この体勢を取ったか分らないほど何度も抱かれた。

なのに俺は迷っている。
このまま抱かれてもいいのか。
抱かれるべきじゃないのか。


寿也の唇が降りてくる。

・・・・・キーン!!

一瞬の迷い。
重ねられた唇。


違う。
キーンのキスとは。
先程の寿也の、怒り任せのキスとも。
そして海堂時代、され続けたキスとも。



違う・・・違う・・・・・・違う・・・・・・!!




再び寿也の愛撫が始まる。

今度は優しく、愛おしいものを触れるように・・・どこまでも優しく。





違う・・・・・・・・。





寿・・・・・大好きだ・・・・・・・。
ずっとずっと好きだった!!

本当に・・・・今だって・・・こんなにも・・・・・!!


キーン・・・・・・。



俺は・・・・・。








わからない・・・・・!!

























end
続く・・・と思います、多分。



私にもわかりません、この先の展開(涙)。
吾郎や寿也、キーンの声に耳を傾けながら地道に書いていきたいと思っています。
今までの魔物シリーズは結構一気に書いちゃった感じなのですが
今回は手こずりました。
吾郎を縛って言葉攻め〜くらいまではとんとん・・と書いちゃったんですけど、その後をどうしようかと・・・。
結果、吾郎が涙しちゃったのでなんとなくキーン有利な展開っぽいですね。
この話を妄想していて・・・吾郎が涙しちゃって
泣いていることにすら気付かない吾郎が強烈に頭に描かれちゃって止まりませんでした。
でも毎晩抱く!と寿くんも宣言しちゃったので・・ホント、どうなるんでしょう?
毎晩抱いたって、ホーネッツに戻ったら・・・
ああ、いっそ直接対決させたいな〜。どうしよう??

それではここまで読んで下さりありがとうございました!
(2009.5.12)




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