「うるせーーーーっ!!
インタビューだァ!?負け投手が語ることなんかねーよ!!
てめーら、デリバリーのかけらもねーのか!!お断りだ、消えろ!!」
W杯直後。
絶賛する周囲との温度差に・・・・イライラが収まらなかった。
俺は渾身のストレートを同じ男に二度もホームランにされたんだ。
なんで誰も叩かなねえ!!
いっそ、叩いてくれた方が・・・!!
キャンプ地へ合流早々。
何を求めて俺は、キーンの部屋を訪ねたのだろう。
周囲に褒めちぎられる中、キーンの毒舌が聞きたかったのだろうか、それとも・・・。
「・・・・・。」
「・・・・・・。」
それにしても。
たった数週間の事なのに、なんだか随分久しぶりに思えた。
「なんだよ、なんでなんにも言わねえんだよ。」
「いい試合だったな。」
まさか、お前まで・・と思った。が、違った。
「だが、お前の甘さが大いに出た試合だった。
反省すべき点は山ほどある。
大体・・あんな大事なところで6点も取られて好投もへったくれもない。
なのに皆はこぞって過大評価。
付け上がってすっかり浮かれて帰って来るかと思ったら・・・意外に冷静なようだな。」
「・・・・。」
「ただの馬鹿だと思っていたが、そうでもないらしい。」
「な・・・!」
「どうした。皆のように褒めてくれなくて腹でも立ったか。」
「お前はなー!言い方がムカつくんだよ!!相変らず可愛げのないワカメ頭だぜ!」
俺は思い切り、突っかかってやったが。
「でも・・・やっと本音でいじめてくれる奴がいて正直俺もスッ・・としたぜ。」
ふふ・・とキーンが笑った。
「その様子だと俺がいちいち指摘する必要もなさそうだが・・・。
W杯のようなイベントとメジャーは別物だ。わかってるな。」
やっぱりキーンは違う。
相手が誰であろうとも、決して機嫌をとるような言葉を並べたりはしない。
毒舌家だが真実しか語らない。
そんな奴だからこそ俺は・・・・。
「ところで茂野。」
「あん?」
「俺はW杯の中継をしっかり見ていた。」
「・・?」
「細部に至るまで、しっかりと・・・熟視していた。」
「・・・な、なんだ?」
「・・・・・・。」
キーンが無言のまま俺の襟元を・・・・。
「・・・・ここ。」
「?」
「もう、殆ど識別できないほどかすれてきたが・・・・ここの痕がTVでもハッキリと分った。」
「!!」
俺は反射的に飛びのいた。
しかし、キーンは表情も変えず俺を見つめ・・・
ほんの少しの間。
この間が、やけに長く感じて。
キーンの唇の動きが、まるでスローモーションのように瞳に焼きついて。
「佐藤か。」
「・・・・。」
俺は・・・・。
「言え。」
なんと・・・答えたら・・・・・。
「俺はお前の口から聞きたい。」
キーン・・・!!
逃げ出してしまいたい、この場から。
この前は寿也に問い詰められた。
今はキーンに。
なんで俺は・・・どうして俺は・・・・!!
せめてキャンプ地へ合流早々、キーンの部屋へ行く事を止めておけばよかった。
遅かれ早かれ、こうなる事くらい簡単に予想できたのに。
わかっていたのに・・・!!
なのに何故、俺は・・・・キーンを求めた・・・・?
「この痕は誰が付けた?」
俺を壁際に追い詰めて顔の両側に手をついて僅かに見下ろすキーン。
怒りを顕にするでもなく・・ただ、いつもと同じように静かに問われて。
ダメだ・・・・。逃げられない・・・・。
キーンはいつも真実を見抜く。
俺は観念して溜息をついた。
「・・・・そうだよ・・・・寿也だ。」
「お前は佐藤に何回抱かれた。」
「そ、そんな事・・・!」
「お前の口から真実を聞きたい。」
「・・・。・・・覚えてねえ・・・・。」
俺は瞳を逸らしながら答えた。
「・・・毎晩、という事か。」
「・・・っ!」
「まあいい。大抵こうなるだろうと予想はしていた。」
「・・・・・。」
「お前がロスへ発つ前の日の晩、お前に刻み込んだ痕は奴への挑戦状だからな。」
やっぱり・・・キーンにはわかってたんだ。
俺がロスへ何をしに行くか。
ロスには寿也がいる事もわかってて・・・わかっていて俺に痕を刻み付けた。
何故だ?
俺を試したのか?
俺が寿也を拒絶できるかどうか・・・。
「で、佐藤はお前をなじったか?」
「・・・・いや・・・・・。」
「では怒りをぶつけたか?」
「・・・それも・・・違う。」
「・・・そうか。」
「なあ、キーン・・・!」
怖かった。
寿也との事はこれ以上触れられたくなかった。
俺にとってキーンはキーン。
寿也は寿也だ。
そして今はキーンと共にいる。
だから・・・・・その事には、もう・・・!!
「無理だとは思うが・・・一度会ってみたいものだな。」
「・・・え?」
「どんなヤツなのかこの目で確かめてみたいと言った。
W杯やデータなどで俺なりに分析はしてみたが・・・なかなか優秀なヤツだな。
だが本当の所は実際会ってみなければわからないだろう。
しかし。向こうもこっちもお前との関係を知ってしまった訳だし
本当に会ったりなどしたら喧嘩になるだけかもな。もしくは3Pか。」
「な、なんだよ、それ!!」
フッ・・と笑むキーン。
「とにかく。佐藤は俺の挑戦状に受けて立った。ふふ・・望む所だ。俺はな。」
「俺は、って・・・どういう意味だよ。」
「お前の結論は出たのか。」
呆然と見上げる俺にキーンは淡々と続けた。
「・・・尤も、佐藤を選ぶとお前が決めていても奪い取るつもりだが。
しかし一応聞いておく。お前の結論は出たのか?」
「俺・・は・・・・・。」
そんな俺を暫く見つめた後。
「まあ・・それも予想はしていた。お前は俺も好きだが佐藤も好きなんだ。
絶対にどちらも選べない。
W杯でのお前を見ていて、そして今、俺の目の前のお前を見ていて改めて確信した。」
俺、は・・・・。
俺は・・・そんないい加減な・・そんなふしだらな・・・・
俺はそんなヤツ、なのか・・!?
でも・・違うとして・・じゃあ、何故俺はキーンの部屋に来た?
W杯の間中、寿也に散々抱かれた。
でもその前にはキーンとも、そういう関係になった。
キーンの部屋に二人きり、という事は・・・そういう意味以外ありえない。
そして・・・キーンの部屋を訪ねたのは俺自身。
更にキーンは容赦なく問う。
「それとも俺とは終わりにするか?」
「・・あ・・・・・。」
明らかに動揺を表してしまった、と思う。
「では佐藤と終わりに出来るか?」
「・・・っ!」
俺は唇を噛んだ。
「それが、お前なんだ。いい加減、悟れ。」
「それが・・・俺・・・・・。」
虚ろに繰り返す。
信じたくない真実。
「そうだ。そして俺は・・さっきも言ったが、お前がなんと言おうがお前を手放すつもりはない。」
「・・・・。」
「アメリカでは俺、日本では佐藤。別に俺はそれでも構わん。」
「・・・・。」
キーンの言葉が右から左へ流れていく。
聞こえているが、何を言っているのか分からない・・・分かりたくない。
虚ろにただ、俺はキーンを見上げる。
「俺もお前以外のヤツとスる事もあるだろうしな。」
しかし、このセリフにはいきなり現実へと引き戻された。
「え!?」
「どうした。」
「いや・・・その・・・・。」
「俺が誰とセックスしようが俺の勝手だ。」
驚愕と、そして恐れの眼差しを、俺は多分キーンに向けていただろう。
「それともお前には二人の相手がいても良いが、俺や佐藤にはお前だけを見ていて欲しいと・・
そんな都合のいい事を言う気じゃないだろうな。」
・・・・・。そうだ・・・・。
考えた事もなかった。
キーンが・・・寿也が・・・別の誰かを抱くだなんて。
俺は・・・二人に抱かれておいて
なのにキーンにも寿也にも俺だけを見てくれなんて言う資格・・・ある訳ねえ。
寿也はともかく、キーンは俺より4つも上。
今までだって色んな経験が・・・・。
でも、そんな事、考えたくない!!
キーンが、寿也が、俺以外のヤツと・・・!!
「どうした?」
キーンが俺を見ている。笑っている。
俺の葛藤を楽しむかのように。
くっそ・・・・!!
「考えても仕方のないことを考えるな。」
「・・・な・・。」
「お前の悪い頭で何を考えても無駄だってことだ。」
「なんだと!?」
「・・・前も言っただろう。お前はそういうふうに出来ているんだ。
お前に接した男はお前に惹かれずにはいられない。
お前も・・そんな男達に惹かれてしまう、体を許してしまう。
お前の本質が・・・・この快楽から逃げる術を知らない。」
キーンのこの瞳・・・随分酷い事を言われているのに
この深く蒼い瞳を見ていると、まるで催眠術にでもかかったように動けなくなってしまう。
そう言いながら、キーンの指は俺の中心を撫で上げて
そしてその唇がゆっくりと近づいてきて・・・・・。
ああ、キーン・・・!!
キーンが触れた先から、震えるような歓びが全身に広がっていった。
ついさっきまでの葛藤が、キーンに触れられて、いとも簡単に霧散していく。
結局・・・・俺は・・・・・・・・。
キーンにも寿也にも・・・・逆らえない・・・・・・。
どうしても・・・この体に触れて欲しくて
どこもかしこも・・・そうだ、蹂躙して欲しいとさえ、思ってしまう。
俺のあそこにドでかいヤツをぶち込んでかき回して欲しいと・・・どうしても思ってしまう。
キーンに抱かれるあの感覚。
強く、激しく、どこまでもどこまでも俺を追い詰めるように・・どこまでも・・・。
寿也に抱かれるあの感覚。
甘く優しく、どこまでも俺を包み込む・・・それでいて、時に随分酷く俺を抱く。
あの感覚。
一度知ってしまったら、捨てられない。
どうしても手放せない。
同じ事をしているのに全く違う、あの感覚。
そんな事を思う俺は・・・・男として、人として・・俺は・・・・・・。
「・・・、・・っ!・・・も、無理だって・・・キーン!!」
「まだだ。お前の中の佐藤の匂いを・・・全て拭い去るまで・・・。」
そして前を握り締めながら、一際激しく奥の奥を目指して突き上げる。
「あ、ああ・・・・っ!!」
あれから。
一体何度目だろう。
何度絶頂を迎えたか。
キーンも何度放ったか。
なのに終わる気配すら見せてくれない。
最初はあんなに冷静に話していたキーン。
それが俺なのだと・・・諭すように。
そしてゆっくりと俺に触れた。
ゆるやかに、焦らすように・・・・でもだんだん激しさが増してきて。
「あ、ああ・・・っ!!・・おね・・がい・・・・もう・・・!!」
このままではどうにかなってしまう。おかしくなってしまう。
お願いだから、もうここまでにしてくれ!!
しかし。
「ふざけるな。」
こんなに俺が懇願しているというのに、キーンは冷たく突き放すように静かに言い放った。
その静かな物言いが・・・かえって俺の耳には恐ろしく響いて。
「散々・・・仲のいい所をテレビで流しやがって・・・・あんな調子でベッドでも・・・・お前は・・・っ!!」
そういえば・・・寿也の一発で点が入った時、試合が終わった時、俺は必ず寿也に飛びついて・・・・。
「俺が、そんなお前を見てもなんとも思わないとでも・・・お前は思っていたのか。」
キーンが嫉妬している?
これがキーンの本音?
あの・・・キーンが・・・・・感情を、こんなにも顕にするなんて・・・・。
それに。
試合中は当然野球に集中している。
些細な事も、大きな事も、つい喜びをそのまま表現してしまって
それをキーンが見てどう思うかなど、考える事すらなかった。
「無神経も・・・大概にしろ!!」
いつも冷静なキーンが・・・ついさっきまで日本では寿也、アメリカではキーンでも
それでもいいと・・言っていた・・・そのキーンが。
「お前が「俺」を思い出すまで・・・「俺」だけに染め直すまで・・・今夜は俺はお前に「俺」を刻みつけ続けてやる・・・っ!!」
一旦、箍が外れてしまったら止まらなくなってしまったように・・・キーンは・・・・でも、このままじゃ、さすがに・・・!!
悪かった・・・俺が悪かったよ・・・・!!
寿也との関係が明らかなのに、あんなに抱きついたりしたりして。
もう、あんな事なしない、だから・・・!!
「やめ・・・てくれ!し、死ん・・・じまう・・・っ!!」
「いっそ・・・ヤり殺してしまいたい・・・お前を。
俺に貫かれたまま、俺だけを感じたまま・・・お前を俺に繋ぎとめたまま!!
茂野・・・お前は危険すぎる・・・お前に一度囚われてしまったら、男は皆・・・・。」
これが、あの常に冷静沈着なキーンなのか?
まるで鬼神さながら。
あのキーンをここまで追い詰めたのは・・・・俺?
なあ・・・俺・・・・なのか?
俺は・・・どうしたら・・・いい?
どうしたらいいんだ!!
キーンはその大きすぎるソレを引き抜いて、俺の顔にその証を吐き出した。
精も魂も尽き果てて俺は、その液体を拭う事もできない。
「この・・・魔物が・・・・。」
冷たい瞳で俺を見下ろしながらキーンが言う。
「この・・・淫魔が・・・・。」
そして今度は俺の口にキーン自身をぶち込んで。
「望み通り、堕ちてやる・・・お前という・・欲望の・・魔物の・・・底に。」
キーンは俺の頭を、髪を鷲づかみにして乱暴に、一心不乱に自らを突き入れ続けた。
「・・・・ぐ・・っ、ふ・・・・ぁ・・・・・っ!!」
「シゲ・・・・ノ・・・・・・っ!!」
何がなんだか・・・もう理性どころか思考も存在しない。
キーンの怒りを、想いを・・・ひたすら俺はこの躯で受け続けた。
それしか出来なかった。
ふいに、涙が一筋流れたが・・・キーンの液体に紛れて
キーンも、涙を流した俺でさえも・・・それに気づく事もなく・・・・・・。
それからは結局・・・キーンに鳴かされる日々。
触れて欲しい・・・舐めて欲しい・・・痕をつけて欲しい・・・・。
胸を吸い上げ、中心を握り込んで摩り上げ・・・
そして・・・何よりも・・・・
ドでかい杭を打ち込んで欲しい・・・・。
ぶち込んでは引き抜き
そしてまた、ぶち込んでは引き抜く。
たったそれだけの事が・・・例えようもないほどに気持ちよく、幸せで・・・・・。
アメリカではキーンに抱かれ
日本では寿也に抱かれ
一年365日、誰かに抱かれない日なんてないほどに。
俺は・・・触れられたい、ぬくもりを感じたい。
ガッチリとした熱い胸に抱きしめられたい・・・・。
例え酷い抱かれ方をされても
触れられたら、そこにぶち込まれたら・・・感じずにはいられない。
求めずにはいられない。
俺は一体・・・なんなのだろう・・・・・・・・。
そんな疑問は何度も感じた。
キーンが言うには、俺はどうやら魔物らしい。
そう、淫魔だ。
男は俺に惹かれずにはいられない。
俺も男に抱かれずにはいられない。
愛してる・・・
そう、囁くのは今日はキーン?明日は寿也?
それとも、もしかしたら別の誰か?
愛して欲しい・・もっと、もっと・・・愛して欲しい!!
俺も全身全霊で受け止めるから。
締め付けるから・・・・!!
愛するから!!愛してるから!!
もっと・・・愛して・・・・・・
もっと・・・強く・・・激しく・・・・酷く・・・・・抱いてくれ・・・・・・・。
何度も何度もイかせて・・・・くれ・・・・・・・・
それが尽きて何も出なくなるまで・・・今日も明日も・・・永遠に・・・・
俺を・・・・抱いて・・・・抱いて・・・・・・。
もっと・・・もっと・・・・もっと・・・・・!!
俺と一緒に・・・どこまでも・・・・堕ちて・・・・・・・・。
俺を愛して・・・・どこまでも愛して─────────。
end
なんだか今更な話ですが・・・。
覚えていて下さった方もいらっしゃるかもしれませんが
これは去年、日記に上げた話が元になっています。
「いつか上げよう」と、思い出した時に手を入れていたものの、殆ど放置だったのですが
先日、5thの再放送を見て
寿也に腕を回して勝利の喜びを顕にする吾郎、それは当然テレビ放送・・・なシーンを見て。
これはキーン、当然、穏やかじゃないよね〜♪
と思って一気に書いてしまいました。
さて。
吾郎、狂ってますね・・・。
魔物なので・・このシリーズは元々そういう狂った話なので・・・許して下さいますと助かります。
申し訳ありませんが苦情はご勘弁下さい、すいません!!
それではここまで読んで下さり、ありがとうございました!!
(2010.6.23)