「大丈夫だって。ちゃんと美穂ちゃんには伝わったよ。」
「・・・・。」
子供の頃、自分を捨てた両親。
親に連れて行かれた妹と、置いていかれた自分。
長い時を経て、予期せぬ再会を果たしたものの・・・・。
それは感動的な再会とはとても言い難く・・。
大丈夫。きっと伝わる。
妹が近くで見ていてくれたから
僕はいつもより頑張れた。
たった一人の大切な妹、美穂に伝えたかった・・・・。
「お前って昔っから心が決まると強いのなー。すっげー頼もしかったぜ?」
吾郎くん・・・。
君がいてくれたら、僕は・・・・。
「な・・・なんだよ。」
照れくさそうに睨みつける吾郎に思わず寿也は吹き出した。
「はははっ・・・ゴメン。昔から変わらないのは吾郎くんの方だよ。」
「は・・?」
吾郎は訳が分からないようだったがそれには答えず、寿也はただ穏やかに微笑んだ。
小さい頃の吾郎。
そして先日おかしくなってしまった自分を必死に支え、叱咤した吾郎。
「お前は誰からも愛されてない・・・・。」
そしてあの日見た、悪夢。
「・・・・。ありがとう。君のお陰だ。
吾郎くんがいてくれたから、僕は戻ってくることができた。」
「へへっ・・・。何水臭い事言ってやがる・・・。」
ポリポリと頭をかいて照れ隠し。
そんな仕草も小さな頃から変わらない。
寿也の決意は次第に確固とした形をとり始める。
そうだ。
僕が真に求めるものは・・・・・ここに、ある────。
「やっぱり僕は・・・・・。」
「?」
キョトン・・とした顔をする吾郎。
怒ったり笑ったり、くるくると表情が変化する。
驚くかな。それとも・・・困るかな・・・・・。
だがどんな顔をしたって僕は・・・。
「君を手放すべきじゃ、なかった。」
「・・・っ!」
こわばった顔。予想通りだ。
だが、もう。
止まらない。止める気もない。
「どうにも僕は、君が好きみたいだ。」
「寿!」
腰かけていたベッドから吾郎が思わず立ち上がる。
だが寿也は構わず続けた。
「何故・・・・・僕は君を放っておいたんだろう。
他校へ行っても、アメリカに行っちゃっても。
会おうと思ったらいくらでも会えたのに・・・・・・・・。」
「やめろ、寿。」
吾郎は拒絶の色を顕わにする。
似合わない大真面目な顔で瞳を逸らした。
それを寿也は一人掛けのソファーに腰かけたまま、まるでこの状況を楽しむかのように見上げていた。
「清水さんがいるから?」
吾郎は口を閉ざしたまま。
だが、そんな吾郎に寿也はニッコリ笑った。
「そんな怖い顔しなくていいよ。何もしやしないさ。
今日は宣戦布告。
ずっと後悔してたんだ。君を手放した事を・・・。
両親の事が・・・心のどこかに引っかかって
僕は誰にも愛されないのだと・・・・思い込んでいたのかもしれない・・・・。」
弱気な事を言い出す寿也に吾郎がハッと顔を上げた。
吾郎の瞳には寿也を思いやる色が窺える。
それに寿也はニッ・・と強気な笑顔でこたえ
「でも、僕の心は決まった。僕は・・・・吾郎くんが好きだ。
多分これは永遠に変わらない。
だから・・・・・僕自身のためにも。負けないよ、清水さんには。」
言いたい事を一気に告白すると寿也はもう一度ニッコリ笑って
「じゃ・・。」
と立ち上がり部屋を出て行こうとしたが、ふいに振り返り
「あ、そうそう。僕は心が決まると強いんだってね。嬉しいよ。
その「強さ」をこれからしっかりご披露するよ。覚悟するんだね。」
その強い瞳に吾郎は思わずたじろいだ。
寿也はその反応に満足げに笑むと
「おやすみ・・。」と手を振り、今度こそ吾郎の部屋を後にした。
「・・・・・・・・・・。」
吾郎はいつまでも呆気に取られた表情のまま、寿也が去ったそのドアを見つめていた。
それからも寿也は夜になると吾郎の部屋に訪れていた。
先日の件が気にならないこともなかったが、
今までも毎晩のように二人で語り合うのは日課だったので、吾郎はそのことを特に深くは考えなかった。
何をする訳でもされる訳でもなく。
ただいつものようにその日の試合、次の相手の話をして盛り上がる。
だが、気がつくと寿也は熱の篭った瞳で吾郎を見つめていた。
吾郎は慌てて目を逸らす。
そんな吾郎に満足げに微笑む寿也。
目を逸らすその時、吾郎の頬に赤みが差すまでそれほど時間はかからなかった。
「おやすみ。」
そして寿也は今日も手を振り去って行く。
「お・・・おう・・・。」
頬を染めつつも睨みつけるように返事をする吾郎。
そろそろ・・・・かな。
ドアの向こうで寿也が意味ありげな笑みを浮かべていたことなど、吾郎が知るはずもなく。
そして、その日はついに訪れた。
「吾郎くん・・・・。」
いつものように吾郎の部屋に訪れていた寿也が一瞬の隙を突いて吾郎を抱きしめていた。
「な・・・なにすんだ・・!はな・・・・っ!!」
吾郎は必死に抵抗するものの、寿也の腕にかける吾郎の手には殆ど力を感じられない。
吾郎が本気で抵抗したら二人とも無事でいられる筈はない。両人とも確実に病院送りだろう。
そんな吾郎に寿也は内心ニヤリとほくそ笑んだ。
「吾郎くん、わかってる?僕は君が好きだと宣言した。
なのに君は毎晩僕を部屋に入れた。・・・・なんで?」
耳元で囁く。
吾郎は耳が弱いのを知った上で。
「な・・・なんでって・・・・ずっとそうだったじゃ・・ねーか・・・!」
「こんな・・・ベッドしかない部屋に君が好きだという男を招き入れる。
この意味、わからないなんて言わないよね?」
「ち・・・俺は・・・そんなつもりじゃ・・・・!」
「じゃあ・・・・どんなつもり?」
吾郎の耳朶をチュッ・・と吸いつつ問うた。
「ひゃ・・・・・っ!!」
吾郎は思わず飛び上がる。
「こうなる事、分かってたでしょ?」
「な・・・・!」
「わからなかった・・なんて事はないよね?
元々僕らはこういう関係だったんだし・・。」
ただでさえ甘い寿也の声。
こんな言葉をしかも耳元で吐息とともに吹き込まれ・・・。
「ふふ・・・っ。君は僕から逃れられやしないよ。
だって・・・・ほら。君はこんなにも僕に抱かれたがっている・・・・。」
寿也は吾郎の中心を短パン越しに撫で上げた。
「・・・っつああっ・・・!!」
ゾクゾクゾクッ・・・・!
吾郎の体に懐かしいような痺れが走る。
もう・・・一息。
「君の体が・・・・「僕」を思い出して疼いてる・・・・。」
耳の奥に舌を差しこみわざと水音を立てつつ直接言葉を吹き込んで。
「俺・・・・は・・・っ!!」
言わせるものかっ!
「吾郎くん・・・。愛してる。君は僕のものだ。」
寿也は吾郎の後頭部に腕を回し唇を押し付けた。
はじめは触れていただけの寿也の唇。
こうして触れ合っているだけで甘い・・。
寿也の肌の匂いとか弾力のある柔らかい唇とか・・。
はじめこそ何とか抵抗しようと頑張ってみるが、懐かしすぎるその感触に次第に酔いしれていく。
もう、気が遠くなりそうで・・・。
吾郎は必死に寿也にしがみ付いた。
あと、もう少し・・・・。
吾郎の反応を確かめるように、今度は舌を差し入れる。
吾郎の舌の形を確かめるようにゆっくりと絡め、舐め上げて。
「ん・・・・ふ・・ぁ・・・・っ・・!!」
内なる葛藤でおかしくなりそうだ。
海堂を出てから寿也と疎遠になり、その後清水と付き合い始め
だが彼女には未だ指一本触れられず・・。
ちくしょー。
体が勝手に思い出しちまう・・・。
勝手に・・・昂ぶって・・・・・もう・・・・・・。
寿也の舌の感触が、やけに耳に響く水音が
吾郎の思考能力を奪い去っていく。
苦しくて、新たな酸素を求めて唇を離そうともがくが寿也がそれを許すはずもなく。
ガッチリと後頭部に周された腕のためにビクとも動けない。
軽い酸欠状態で苦しくて、思わず寿也にしがみ付くと
結局は更に奥まで・・・寿也の侵入を許すハメとなる。
ようやく唇を開放された時には吾郎の膝はすっかり砕けてしまい意識も遠のく寸前で
寿也の腕に雪崩込むようにして崩れ落ちた。
逃がさないよ、吾郎くん─────。
寿也は微笑を浮かべながら吾郎をベッドに横たえ組み敷いた。
「や・・・やめ・・っ!・・ああ・・・っ!!」
吾郎の体には無数の紅い華。
全て服で隠れてしまう所にだけ刻まれた、寿也の刻印。
寿也はひたすら吾郎の体を愛撫し嘗め回し、その箇所を充分味わい尽くした証として紅い華を刻んでいった。
肝心な所へは決して触れずに施される愛撫に、吾郎は焦れて異常な程の昂ぶりを見せはじめていた。
くっくっ・・・と意地悪く笑いながら寿也が問う。
「どうしたの?まだ僕、なんにもしてないよ?」
熱い吐息を漏らしながら悔しそうな顔で睨みつける吾郎。
そんな君も可愛くて仕方が無い。
「俺は・・・まだ・・・OKしたわけじゃ・・・!・・・・はあっ・・!!」
その時、今まで散々放置しておいた吾郎の中心をいきなり寿也が握りこんだ。
「なに?今何か言った?良く聞こえなか・・・・った・・・・・。」
そう言いながら握りこんだ手を動かし、舌で乳首を弄りはじめ・・
「っ・・・・あ、っ・・・〜〜〜〜〜!!」
「いやらしいな、吾郎くんは。
もうこんなにグジョグジョになってるよ。聞こえる?」
寿也はその綺麗な長い指で吾郎の窪みや先端を丁寧に撫で回し濡れた音を響かせて
その音が更なる羞恥と快感を生み吾郎を乱れさせた。
だが。
「やっ・・・も!お・・・俺・・・は・・・!!」
「俺は?」
そう言いながら寿也は今度は舌で吾郎のそれを舐め上げた。
「あ・・ッ!!はあ・・・っ・・!!」
ねっとりとしたその感触に思わず視線をむけると
寿也は吾郎自身に舌を這わせながらニヤリと笑った。
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
寿也は吾郎に見せつけるように執拗にそれに舌を絡め指を絡め。
「言ってごらんよ。俺は・・・・なんだって?」
寿也が喋ると吾郎のそれに寿也の息がかかり歯が触れて。
「っつ・・・・!はぁ・・・っ!!」
寿也が与えてくれる刺激に全身が滑らかに侵食されて・・・とても答えるどころではなく。
「あ・・・・も・・っ!!ッ・・・トシ・・あああぁッ!!」
チカチカッ・・・!と瞼の奥で火花が飛び散ったような気がした。
はあ・・・、はあ・・・・、は・・・・ぁ・・・・・・・。
荒い息に胸を上下させつつ寿也に視線を向けてみると
寿也はそれをゴックンと喉を鳴らして飲み込んでいるところだった。
こんなシーンは昔何度も見た筈だ。
何度も・・・・。
「吾郎くん。」
寿也は口の端を伝う白い液体を手の甲で拭いながら再び吾郎に覆いかぶさり
そしてニッコリと笑った。
鬼気迫る・・・・その笑顔。
目が・・・逸らせない・・・・・。
「無理だよ。僕から逃れようなんて。
君が・・・・女の子を抱く事だってね。」
「なっ・・・・!!」
反論する間もあればこそ。
次の瞬間には吾郎の舌は寿也のそれに絡め取られ、行き場を失う。
口内に自らの味が広がり不快感を覚えたが、気がつけば寿也のテクニックに酔いしれて。
まるで底なし沼にはまり込んでしまったように。
天に伸ばされた吾郎の腕が空を泳ぐ。
もがけばもがくほど、寿也の思うがまま・・・。
ふふふふ・・・・。
「久しぶりだから、よく慣らさないとね。」
寿也は自分の中指を吾郎の口へと押し込み
吾郎の唾液がタップリついた指を今度は後ろの蕾へとゆっくり・・・押し入れていった。
ズッ・・・ズズ・・・・。
「なんだ。濡れてるじゃない。
何だかんだ言って・・結構感じてたんだ。」
「いっ・・・違っ・・・・!」
もう殆ど吾郎の思考能力は残っていなかったが形だけは必死で抵抗を試みる。
寿也は吾郎のイイ所など知り尽くしている。
何年も放っておかれた躯は理屈など関係なく敏感に反応してしまう。
ヤダ・・と言いながら、悦んでいるのは一目瞭然。
ふふふ・・・・・。
薄い笑みを浮かべながら今度はどうしようか・・・と思案する寿也。
中指の第一関節を過ぎた辺りまでを入れナカを擦ると、ぐちゅぐちゅ・・・と水音が響いた。
奥までは決して挿れない。
入り口付近だけを丁寧に丁寧に擦り、回した。
すると思った通り、だんだん吾郎が焦れてくる。
「あ・・・・・・っ。」
でも、言えない。
「っん・・・・!」
「どうしたの?吾郎くん。」
「な・・・んでも・・・・!ひぁっ・・・ああああっ!!」
吾郎が答えようとしたその一瞬、入り口部分だけを攻めていた寿也の指が
奥まで突き入れられナカのポイントを引っ掻いた。
その瞬間、吾郎が硬直して身悶えたのを確認すると
寿也はまた入り口付近に指を戻し満足げに見下ろしつつ「くっくっ・・・」と笑う。
もう・・・何がなんだか・・・・・どうだって・・・・・・・・。
「どうしてほしい?」
「・・・・・・。」
「言ってごらんよ。吾郎くんの言う通りにしてあげる。」
「・・・・・っ・・・・・!」
吾郎は恥ずかしそうに顔をしかめた。
その顔もとても可愛いのであるが・・・・。
寿也は最後の手段とばかりにもう一度、奥の秘所を指先でぐるぐるかき混ぜ
「はあっ、あああ・・・・っ!」
そして、ちゅっ・・・ぽん・・・・と指を引き抜いてしまった。
「吾郎くん?言わなきゃ、わからないよ?」
「こ、この・・・・腹黒ヤロ〜・・・・・・!」
吾郎は懸命に息を整えつつ悪態をつく。
「・・・それ、褒めてるの?」
寿也がニッコリ笑う。そして吾郎のそれをつーっ・・・・と指先でなぞった。
「ああ・・・ああ・・・もっ・・・・・トシ・・っ!!」
「だから、何?」
だが、吾郎は頑として口を開こうとはしなかった。
暫し、沈黙。
寿也は溜息をつく。
「君も相当頑固だね。ま、昔からそうだったけどね。
・・・・・・・・・・。
わかったよ。
もう清水さんと別れろなんて言わないよ。」
「え?」
急な展開に吾郎は思わず目を見開いた。
「結婚でもなんでもすればいい。」
「けっ、こん・・・・て・・・・・お前・・・・。」
「でも、君は僕のものだ。」
「ンな、無茶苦茶な・・・・!」
「そう?妙案じゃない?」
寿也は話しながら吾郎の足を持ち上げ
そして自らを吾郎の蕾に宛がって更に言う。
「君は僕無しではいられない。違う?」
ぐっ!ぐぐぐぐ・・・・!!
言いながら、限界まで張り詰めた怒張を押し込めていく。
「っつ、あぁッ・・・!!」
寿也がゆっくりと入ってくる。
長い間空白だったその場所を寿也の熱い肉塊でいっぱいに満たされて。
それが吾郎の中でドクンドクンと脈打っている。
────たまらない・・・・。
「っく・・・・!」
さすがの寿也もあまりの締め付けに声を漏らした。
熱くギュウギュウと締め付け絡みついてくる、吾郎のナカ。
寿也は知らず、歯を食いしばる。
そしてゆるゆると引き抜き、また最奥までずぶずぶずぶっ・・・と埋め込んだ。
寿也の肉茎が通り過ぎるその感覚がたまらない。
全ての悦楽のポイントを擦っていく、その感覚が。
忘れ去っていたものを「思い出して・・」と促すようにゆっくりと出し入れされる寿也のそれ。
入ってくる時には狂おしいほどの懐かしさ、そして愛しさと幸せを
出て行くときには張り裂けそうなほどの哀愁と切なさを
その躯で───もう理屈ぬきで、吾郎は震えるその全身で感じていた。
感極まって思わず寿也の背にしがみ付く。
「トッ・・・・トシ・・・ッ!!あ・・ッ!もッ・・・もっ・・と・・・激しく・・・突い・・・ッ!!」
吾郎の一言に、寿也は驚いて思わず動きを止めた。
見下ろすと、快楽にうち震えた吾郎が必死に寿也にしがみ付き
じわじわと押し寄せる内からの刺激に耐えていた。
寿也の口角が吊り上がる。
「君の・・・望むままに・・・・。」
一度ギリギリまで引き抜き、力の限り・・・・・突く。
「ぐ・・ッ!はぁ・・、あっ・・・・・!!!」
そしてまた引き抜き・・・・良く知った場所だけを目指して思いきり突き上げる。
何度も。何度も。
「やっ、もッ!!ト・・・シィ・・・・ッ!!」
吾郎の指が寿也の背に食い込む。
多少痛むが、そんな事はこの際どうだっていい。
吾郎くんが・・・堕ちた・・・・・・。
僕の、罠に・・・・・・・。
僕の・・・・ところへ・・・・・。
また、再び
僕でこんなにもカンジテくれる・・・君。
もっと乱れて?
もっと、カンジテ?
もっと、もっと・・・・・・。
僕の腕の中で─────────。
「ココ・・・・イイでしょ?」
ぐちゃ・・ぐちゃ・・とかき回しながら、確実にあるポイント弄る。
「はあッ・・・!!・・ぁああ・・・・・・!」
「ふふ・・可愛い・・・。ココ、そんなにイイ?」
寿也の腰は激しさを増す。
「ああ・・・・やぁッ!もっ・・ああ・・・・・・・!!」
寿也が動くたびに快楽の波が押し寄せる。
ナカを擦られる感覚が
いや、寿也が中にいるだけで、埋め尽くしているだけで
狂おしい程の悦びが体中を支配する。
体中に愛しさが・・・・・溢れて──────。
そうだ、ほんの数年前までは毎日のように・・。
寿也・・・・嫌いなはずなんてない。
好き・・・だったんだ・・・・本当に─────────!!
何が・・・なんだか・・・・。
もう、どうにでも・・・・・・・・!!
「トシ・・・・・───・・ッ!!」
「吾郎くん・・・・君は僕無しじゃ・・・いられない・・・。わかるでしょ?」
あともう少しで・・・というその時、寿也は腰の動きを少し緩めつつ問う。
絶頂の一歩手前で止められて。吾郎は物足りない刺激に耐えるように身悶えた。
「っつ!・・・も・・・ッ!」
「吾郎くん・・・・君は・・僕の・・ものだ・・・・。」
蕩けきった内部の熱がさらに増し、まるで急かすように寿也を締め上げる。
だが依然小刻みに自身を動かし、最奥の秘所をただ掠めるだけで。
穏やかな動きにもかかわらず濡れた音だけはいやらしく響き、さらに吾郎を追い詰めて。
「僕・・・・だけの・・・・・・。」
囁く寿也の言葉が呪文のように響き渡る。
寿也の甘い囁きにさえも敏感に反応しカンジテてしまう。
吾郎のそれは張り詰めてピクピクと動きながら先走りの暖かな蜜を幾筋も零し
ちょっと引っ掻きでもしたら簡単に爆発してしまいそうな程、痛々しいまでにギリギリの状態に耐えていた。
寿也は願う。
もっと乱れて・・。
もっと、僕を・・僕だけを求めて・・・吾郎くん──────。
「トッ、トシ・・・ッ!!はや・・く!!焦らすな・・ッ・・・・!」
必死な様子に寿也の胸は痛んだ。
だが・・。
「・・・・愛してる・・・・吾郎くん・・・・。」
急かすその唇に舌を捩じ込む。
ゆったりと絡み合わせる舌、緩やかな腰の動き。
「っふ・・・あッ!」
ここで快楽に負けるわけにはいかない。
「吾郎くんは・・・・どうなの?」
唇だけを離した至近距離で熱っぽくもう一度問う。
「俺・・・・は・・・・・・。」
腰を少しだけ強く押し付ける。
「く・・・ゎああっ!」
「俺は?」
「・・・俺も・・・・好きッ・・・好き・・・・だ・・・!
なんで・・・・。で・・もッ・・!俺・・・・わかんねー・・・・!好き・・・だけど・・・トシ・・・ッ!」
イきたいのにイけずに鳴かされたから?
それとも自分の気持ちが本当にわからなかったから・・・・?
とても辛そうに───マウンドではいつも強気でふてぶてしいまでの吾郎が
今は涙まで流して・・・・必死に声を絞り出して。
その時、まるで時間が止まったように
寿也は目を見開いてそんな吾郎をただ・・・・見つめた。
「・・・・ありがとう・・・吾郎くん。」
吾郎も涙でかすんだ瞳で寿也を見上げる。
寿也は・・・・綺麗な笑顔をしていた。
先程までの何処か不気味ささえ漂わせていた、あの笑顔とは明らかに異なっていた。
少しだけ、寿也のその瞳に涙が滲んでいたように見えたが気のせいだろうか・・・。
寿也はちゅ・・・っと触れるだけの口付けをして、もう一度ニッコリ笑った。
「焦らして悪かったね。じゃ、吾郎くんの仰せの通りに・・・・いくよ?」
「ト・・シヤ・・・。」
寿也は腰を押し付ける。
響く水音とともに徐々に激しさを増していく。
激しく、でも丁寧に。
吾郎が感じる所だけを目指して突き上げる。
「あ、あ、もッ、イ・・ッ・・・トシッ!!」
「わかってる・・・・。吾郎くん・・・。」
寿也は吾郎を力の限り抱きしめ口付けた。
乱暴に激しく打ち付ける腰、ゆるゆると絡み合う舌。
何処も彼処も甘く熱く結びついて。
愛している─────────。
それはどちらの叫びだったのか。
まるで一つの肉塊と化したように
快楽も乱れる息も心音も一つになって・・・・・。
朝がくる。
星が消えゆく白みだした空が、薄ぼんやりと赤く燃えていた。
吾郎は寿也の腕の中。
あどけない寝顔、安らかな吐息。
「・・・・可愛い・・・。」
寿也は幸せそうに呟いた。
夜明け。
闇と光が出会う時。
そしてやがて全ての闇が白く輝く光に塗り替えられていく。
君という光は
その瞼を開けたとき、どんな答えを出すのだろう。
願わくば、このまま・・・・夜よ、明けるな────────。
だが当の本人は夢の中の住人。
時折イビキをかいて絵に描いたような御気楽人。
ちょっとムッとしてしまった寿也は指先でその頬を突付いてみた。
「・・・・ムニャ・・・いけ・・・トシ・・・打て・・・ぇ〜・・・・。」
一瞬呆気に取られてしまった寿也。そしてクスクスと笑い出した。
全く、君って人は・・・・・。
幸せそうに眠る君の夢の中には僕もいた。
君にとって一番大事な野球と共に。
なんて素晴らしい事だろう。
今は・・・それでいい。
今は・・・・・。
寿也はもう一度吾郎にそっと腕を回した。
暗く澱んだ心を一瞬にして澄んだ清流に変えてしまう、その天然ボケは無敵だ。
無邪気で無防備で。
幾つになっても何度交わっても
ピュアでアグレッシブな、その心が・・僕を驚かせる。
きっとこれからも何度も何度も驚かせてくれるんだろう。
吾郎くん・・・・愛してる・・・・・・・。
きっとそれは、永遠に変わらない────────────。
end
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、冒頭は「MAJOR小ネタ」のある小話殆どそのままです(汗)。
MAJOR60巻辺りをサンデーで立ち読みをして、色々妄想が止まらなくなりました。
美穂ちゃんとの事、吾郎の叱咤など萌え所満載で
モヤモヤと妄想の断片だけが溜まっていきました。
こんなモノですが何とか形にできてよかった!!と思っていますv。
そしてアンケート結果には大いに力を頂きました。感謝しております。
ありがとうございました!
さてこの話、60巻以降の流れが良く分からないまま書いてしまったので
今後の展開と色々と違ってくると思います。
また、薫の扱いがあんまりなような気が・・・・。すいません。
吾郎×薫も好きなんですけどやっぱりトシゴロ至上なので
この辺りをどうしてもトシゴロへ捏造したくなってしまって。
お詫び申し上げます。
それではここまで読んで下さりありがとうございました!
(2006.10.7)