「それではこちらの大部屋にタカオ、マックス、そして私。
そちらの部屋には・・・・。」
「俺とカイだな。」
レイがニカッ・・と笑った。

「ええ・・・まあ・・・・。」
キョウジュはなんともいえない表情で少し頬を染めつつ頷くと、
レイはニコニコ上機嫌で別室へと向かった。

「・・・・。」
カイも無言のまま別室へ。


パタン────。







「なあ、キョウジュ。
なんでレイとカイはいつも一緒の部屋なんだ?」

タカオが大きな瞳を更に見開いて、素朴な疑問を口にする。

「そっ・・・!!それは・・・・っ!ですね・・・!!」
キョウジュは飛び上がらんばかりに驚いた。
顔を真っ赤にして口をパクパク・・・・普段のキョウジュからは考えられないような慌てぶりだ。

「・・・??どうしたんだ??」
「タッカオ〜、お子様はお子様らしく大騒ぎしていればいいネ〜。
カイやレイが枕投げ、すると思いマスカ〜??」
マックスが乱暴に肩を組んできて楽しそうに聞く。
「・・・レイは誘えばやってくれると思うけど、カイは絶対やんねーな。」
「そういう事ネ〜。あの二人は僕らと違って「オ・ト・ナ」だからネ!もっと静かに過ごしたいんだと思うヨ!」
マックスがウィンクして見せた。
もっとも・・・別の意味で激しく過ごしていると思うけどネ〜
と内心思ったマックスだったが言葉にはせず、ただニコニコと笑った。

「ふ〜〜〜ん。ま、いいけどさ。」
そんなマックスの思惑など気付くことすら不可能なお子様であるタカオは、納得したのかどうか。
とにかくそれを見てキョウジュは心の底からホッと胸を撫で下ろした。





















「カイ・・・・。」

その夜。
レイは待ってましたと言わんばかりにカイを背中から抱きしめた。

「・・・・・・。」
しかしカイはムスッとした表情で、伏せ目がちに視線をレイに向けただけ。
その視線さえも「流し目」と見えてしまって俄然盛り上がるレイ。
「なんだよ、そのつれない顔は。もしかして拗ねてる?」
「・・・・馬鹿が。誰が拗ねるか。」
「久しぶりじゃないか。ヨーロッパではずーっと雑魚寝だったし、寝台車ではさすがにデキないしな。」
「虎にもそのくらいの分別はあったとみえる。」
「だが、あんまりお預けくらうと、襲っちゃうぜ?
精も魂も・・・一滴残らず、吸い尽くしてやるよ・・。」

薄く笑うレイの口元に、鋭い牙が妖しく光る。

「・・・・好きにしろ・・・。」

カイは吸血鬼に見据えられたお城の姫君さながら、レイの腕に身を委ねた。
月の光を思わせる金色の瞳。
その細くなった瞳孔で見つめられた者は、誰であろうと逃れる術はない。

その月の光に照らされた白磁の肌。
ひときわ美しく輝く紅い宝石。

金と紅が互いに引き寄せられるように・・・・・。



「・・・ん・・・カイ・・・・。」

柔らかな唇。
漏れる吐息までもが甘い。
触れ合うほどに互いを感じ求め合い
触れ合うごとに深く、深く・・・・・・。


「カイ・・お前は魔物のようだな。
キスだけで、こんなに俺を夢中にさせるなんて・・・。」

「ふん・・・貴様、鏡を見たことはあるのか?
今のお前は・・・・。」

まさしく魔物そのもの──────。


金の瞳は美しく光り見据える瞳孔は細く、口元の牙が妖しく光る。
久方ぶりの獲物を目の前にした吸血鬼か、はたまた空腹の虎か。
その鬼気迫る美麗な容貌は、見る者の身動きを奪う。

「ふふ・・・ははははっ・・・!
なるほど。魔物は魔物に惹きつけられる、か。
カイ・・覚悟しろよ?今夜は寝られると思うな。」

「何を・・・。今更・・・だ。」
ニヤリと笑むカイを、レイは乱暴にベッドに押し倒した。












明かりを灯さない暗い部屋。
窓から差し込む月の光が横たわるカイを照らした。

美しい・・・象牙色の肌。
青白く光るカイの体はどこか幻想的で、とてもヒトのそれとは思えない。
美しく冷たい陶器のようでもあり、妖精か魔物のようにも見える。
だが触れると微かな弾力があり柔らかくそして暖かい・・・紛れもなく血の通ったヒトの躰。
唇を落とすと、まるで雪原に紅い花びらが舞ったように美しく彩る。

綺麗だ───────。


レイは久方ぶりに訪れたこの時に、興奮していくのを感じていた。
少しづつゆっくりと楽しむように、カイの肌を味わう。

「・・・・ん・・・。」
少し鼻にかかった掠れた声。

かわいい・・・。

胸の飾りを執拗に吸ってみれば

「・・・あっ・・・・。」
少し体を捻らせて耐えるような声を漏らす。

その仕草も声も
たまらない。

レイは夢中になって、むしゃぶりついた。



















「あ、ああっ・・・・!」
レイがそれを優しく撫でるとカイがしがみ付いてきた。

「どうしたんだ?まだ序の口だぜ?」
揶揄するように言うと
「・・・うるさい。」
そして珍しくもカイの方から唇付けてきた。

久し振りだから、カイもシたかったのかな・・・
そんなのんきな事を考えながら・・しかし何処か違和感を覚えた。

何が───────。
と言われても良くわからなかったのだが・・・何か「違う」と感じた。

しかし目の前には久方ぶりの愛しい人。
攻める手を緩めるつもりは全くない。

激しく絡み合う舌。零れ落ちる唾液。
そして相変わらず優しく触れるだけのそこ。
キスをしていると、ソコがいつもよりずっと気持ちが集中してしまって感じてしまって
「あ・・はあっ」
カイはたまらなくなって唇を離そうともがくが、レイはそれを許さない。
「・・っ!・・・・・・!!」
柔らかな舌の感触と優しく触れ、撫でられるそこと。
穏やかだった波が次第に少しづつ相乗されていき
やがて・・・・・。


「・・・・・・。」
「軽く触っただけだぜ?」
「!!うるさい。無駄口叩く暇があったら、早く・・・・来い。」

はじめはあれだけでイッてしまった事への照れ隠しとも思ったが
この時少し感じていた違和感に確信を持った。

だが、この状態で止めて問いただす訳にもいかない。
レイは少し迷ったが、言われるまま欲望の赴くままに次なる行為へと動いた。
─────この小さな迷いを後で後悔する事になろうとは。




今日のカイはおかしかった。
はじめてロシアへ来たはずなのに、やけに地理に詳しかったり・・・・・
何よりもあの修道院に行ってからは・・・・・・・・。

そして今も・・・・どこかおかしい。
始める前は、いつもよりずっと妖艶で誘っているようにも見えた。
だが今はどこか余裕がないような、何かに急かされているような・・・・・。






「あ・・・はッ・・あっ・・・〜〜〜っ!!」

カイの声にレイは思考を中断させられた。
そして今おかれた状況を思い出す。
カイの奥をじりじりと突いていた自身を
一度ギリギリまで引き出し、一気に最奥へと突いた。


「・・・・・・っ!」
カイはレイの背に爪を立てた。


カイは思う。

ああ・・・・・。
中にいるだけでもたまらない。
それをこんなに激しく出し入れされたら。
でもなにか違う気がする。
触れ方も攻め方も、その囁きさえ・・・・。


出て行くときには切な過ぎるほどの喪失感を
入ってくる時は喜びに満ち溢れた充足感を。

でも・・・違う・・・・何か・・・・もっと・・・・。

まだだ・・・・・。

まだ、足りない・・・・・・・・。


「レイ、もっとだ・・・・。もっと来い!」

「もっと・・・って、お前、これで3回目だぞ?」

「もっと・・・・・だ・・・・!!」

足りない・・・・足りない・・・・・・足りないんだ・・・・・・・・・!!



ヴォルコフとやらのあの目。
絶対に見た事があるはずなのに思い出せない。
あの嫌な感じ。
体中を嘗め回すような、あの視線。
記憶はなくとも体が・・・・・覚えているような・・・・・・そんな感覚。



もっと・・・・・もっとだ・・・・・・!!
こんな感覚、拭い去ってくれ!!!



「カイ!カイ!おい、どうした?カイ!!」

求めて求めて、求めて求めて求めて・・・・求めて─────────。

カッ・・・・と目を見開いたかと思うと
カイは果てると同時に気を失ってしまった。







一体どうしたというのだろう・・・・!?

釈然としない思いが残る。
今のカイは「久し振りだから求めてきた」というのとは、全く別種のように感じられた。



レイは後始末を終えるとカイを、ベッドへ運んでやった。


嫌な感じだけが後を引いた──────────。















翌日の晩。

「カイ、戻って来ないネ。」
「PPBと中国チームとの試合からずっと姿を消したまま。どうしたんでしょう。」
「ま、心配する事もないんじゃねーの?あいつが消えるのいつもの事だし
『ふん、お前たちは甘いな』とか何とか言いながらいつもの調子で出てくるって。」
「そうかな。いつもと同じだと思うか?」
「どういうことだよ。」
「ロシアに来てからのアイツは妙だった。特にあの修道院に行ってからは。」
「そういえば」
「確かに」
「そして今日のヤツの失踪。いつもと違ってなんだか嫌な予感がする。」
「・・・・・・・・・・。」
「俺、カイを探しに行ってくる。」
「え?」
「こんな夜中に?」
「ああ、お前たちは休んでくれていい。タカオの言う通り大したことじゃないかもしれないし。」
「じょーがねーな〜!そんなふうに言われたら、なんだがマジに心配になってくるじゃねーか。」
「タカオ!」
「カイは俺たちの仲間だもんな。ほっとく訳には行かない!」
「そーゆー事ならボクもネ!」
「無論、私も!」
「で、どこを探す?」
「まずはあそこだ!」


────あの、修道院。








     「言えない訳がありそうだな。
     無理してしゃべることはない。ま、特に聞きたくもないしな。」

     中国での一件。
     あの時ふと思ったんだ。
     俺に言えない事情があるように
     カイにも何か・・・言えない事情があるのではないか・・・と。

     はじめは薄ぼんやり思っただけだったが
     次第にそれは確信に変わった。

     カイにはなにか
     想像もつかないような、とてつもない秘密がある────と。


     昨夜のカイはおかしかった。
     そして修道院でのカイは明らかに変だった。
     多分それは・・・・カイの「秘密」に関する事柄。

     それは直感。
     だが、俺の直感は当たることが多い。

     胸騒ぎがする。

     恐らくこれから
     よからぬ出来事が起こる────そんな・・・妙な確信・・・・。






そしてその直感は無惨な形で当たってしまう事となる。

カイは力だけを、そして聖獣を求め、ヴォルコフの元へ。





カイ・・・・戻って来い・・・・・俺のところへ・・・・・・・・。






カイ─────────。













end




裏ベイ部屋へ


中途半端ですいません。
これも一年は放置してあったモノです。
ロシアへ行って、真っ先にカイの異変に気づいたのはレイでした。
そして公式ベッドシーン(?)!!
この辺りでなにか書きたいとずーっと思っていました。
形に出来て嬉しいですがどうも中途半端で・・・・
この先を書くとタカカイになってしまいそうなのでここで切りました。
書きたかったのはあくまでもレイカイで、彼らの苦悩をアレを通じて書きたかった。
でもエロ度が低くてすいません・・・・・・。

こんな話をここまで読んで下さりありがとうございます。
(2008.1.21)







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