「お前が言ったんだぞ?連れてってくれって。」 とあるアジアの奥地。長い長い時の流れの中、人が踏み入ることも無かった秘境の遺跡で。 「わかって・・、る・・・よ!でも、だからって・・・毎日毎日・・・っ!」 「そんな事、簡単に予想できた筈だろう?」 遺跡が点々と続く山々、そして森、木々の隙間から、広大な大地を見下ろしながら。激しく息を切らせている影が二つ。 「だ、大体・・・発掘はしねーのかよっ!すぐに調査に戻らなきゃって・・・ひ、とし・・兄ちゃんが言うから・・・俺・・、あっ!!」 タカオが手をついて体を支えていたある大木に、一筋の白い液体が滴り落ちていた。 「可愛いな、タカオは。」 仁はまだ達していない自らのモノを引き抜くと、引き抜くその摩擦にも感じて震えてしまうタカオをからかうように、笑った。 「に、兄ちゃんのがデカ過ぎるから・・っ!!」 「そうか?あんまり人と比べる機会がないから、俺にはわからんがな。カイよりデカいか?」 「カイは・・だって仁兄ちゃんはもう大人だろ?比べる対象になんねーよ。」 「ほほ〜〜。カイのを見た事があるんだな?タカオくん?」 「・・・え!?」 「いつ、どんな時に見たんだ?まさかとは思うが、その体で感じた訳じゃないよな?タカオ?」 「ち、違うって!!風呂に入った時に見たんだよ!!チラッと見ただけ!!」 「へえ・・。風呂に一緒に・・・二人きりでか?」 「BBAのみんなと一緒にだよ!!・・ったく、何考えてんだよ!!」 「なのにカイのそんな所を密かにチェックしてたんだろ?あれに突かれたら、どんな感じだろう、とか。」 「な・・!ンな事・・・・!!」 「どうだかな〜。こんなに感じやすいタカオが・・・。」 言いながら、放ったばかりのタカオのソレを指先だけで辿ると。 「ん、んぁ・・・っ!!」 タカオはすぐに熱を思い出す。 「俺がいない長い間、耐えられたとは思えんがな。」 耳元にちょっと意地悪な言葉を囁くと、鼓膜から全身に震えが走ってしまう。そんなタカオの姿に、仁はしたり顔でほくそ笑んだ。 しかしタカオは感じてしまうのをこらえながら、必死に仁を睨みつけて。 「それ以上、変な事言ったら、いくら兄ちゃんでも・・・怒るぞ?」 息絶え絶えに抗議する。その涙を滲ませた瞳に仁はハッとした。 タカオは待っていてくれたのだ。こんなに感じやすいのに、誰にも触れさせることもなく、ただひたすらに仁の帰りを待っていてくれたのだ。そう思うと、仁はガラにもなく、ジーンと胸の奥から込み上げるものを感じた。そして仁は考えた。自分はどうだったろう?暫し、過去に思いを馳せてみたが。迫られたら拒まない主義だからな〜、と思い至り内心苦笑い。 「すまなかった。」 仁は自分の事はひとまず置いておいて、冗談とはいえ、さっきの自分の発言について素直に謝った。そして。 「お詫びに、と言ってはなんだが・・・たまには変わった趣向でヤってみるか?」 仁はタカオから一旦離れ、大きなリュックに手を突っ込んで何やら探し始めた。 「なんでもいいけどさ、仁兄ちゃん。そんなモノをおっ立てたまま楽しそうにリュックを漁るの、やめてくんね?」 仁は、はだけられたシャツに袖を通しただけといった姿で、下半身には何も付けていなかった。それはタカオもほぼ同様であったのだが、そんな姿のまま胡坐をかいて座ると、ナニが大きくそそり立って目立って・・・どう見てもかなり間抜けだ。 「とは言ってもな〜、こればっかりは生理現象だから。」 そう言いながら全く気にしたふうもなく、それどころか。 「こんな事もできるぞ?」 と、得意そうにソレを上下左右に揺らして見せた。 「仁兄ちゃん・・もう、いいから・・。」 一気に脱力してしまったタカオを、仁は気にしたふうもなく、リュックから貴重な出土品を次々と一見無造作に出していく。 そんな兄の姿に呆れるタカオだったが、出土品を決して傷つけないように注意して並べていたことは、見ていれば分かった。それは、やはり兄は考古学者なのだ、と思わせる一瞬だった。そして。いつも遺跡にばかり触れている、大自然と古代からの神秘の世界に触れている、その手で抱かれているのだ、と思うと・・・タカオは自然と、また熱が込み上げてくるような気がした。 一方仁は、ようやく目当てのものを見つけたらしく、何か布のようなものをリュックから引き出した。 「これ!これを着てくれないか?」 これとは。ウエストの辺りまで切れ目の入った、超セクシーなチャイナドレスだった。 「は!?こんなもん、どこで手に入れたんだよ!!」 「ここに来る前、中国を通っただろ?あの時だ。」 仁はニコニコ上機嫌。 「絶対、嫌だ・・・・。」 「好みじゃないか。他にも色々あるぞ?バニーちゃんにメイドさん・・・あ、こっちのレースふりふりエプロンは裸エプロン専用な?それから各種民族衣装、くのいち、巫女さん、ウエディングドレス、そうそう、スクール水着(女児用)もあった。スクール水着には当然、靴下もセットだ。」 「なっ、なんなんだよ、これは!なんで、こんなモンが!それに!なんでこれだけの物が、どうやってこのリュックに収まるんだ!?どこの四次元ポケットだよ!!」 「まあまあ!」 涙目で訴えるタカオを、仁は嬉しそうになだめると。 「じゃあ、初心者コースとして・・・制服はどうだ?」 必死に抗議するタカオには構わず、仁がリュックのさらに奥から引っ張り出したのは、女子用の可愛いブレザー制服と学ラン。 「学ランの相手は普通セーラー服だろうけど、セーラー服は脱がせにくいからな。リボンを解いてブラウスのボタンを外した、その隙間から・・ってのは男のロマンだろ?さあ、タカオはこれを着ろ。俺はこっちを着る。」 そう言いながらタカオに可愛いブレザーの制服を押し付けた。 「何、考えてんだよ!!こんな山の上で・・・神聖な遺跡がそこにあるのに!!兄ちゃん、考古学者だろ!?」 「別に今更だろ?さっきまで自分がヤってた事、忘れたのか?それに。太古から人間はセックスをしてきたんだ。セックスなくして文明の発展も人類の繁栄もあり得ない!この遺跡でも、かつては大勢の人間がヤってたんだぞ?」 「男同士の場合、人類の繁栄には繋がらないだろ!?」 「あ、それとも制服は嫌なのか?じゃ、裸エプロンにするか?」 タカオの反論はあっさり無視されて、仁は先ほど出した、レースやリボンがふんだんに使われた白いエプロンに手を伸ばした。 タカオはだんだん虚無感に駆られてきた。仁が一度言い出したら何を言っても無駄なのだ。 「制服にするか?それとも裸エプロン?勿論他のものでもいいぞ?」 仁が楽しそうに、タカオに選択を迫る。 「う・・・・。」 どうしたらいい?ここはもう、着るしかなさそうだ。着ても着なくても、スる事はスるんだし。だって仁兄ちゃんのソレは未だ堂々と元気にさらけ出されている。アレがあの状態である限り・・・それに俺だって・・・。そうだ、どうせ最終的には脱ぐんだ。何を着ても同じだ。それなら・・・、とタカオは先ほどの仁の言葉を思い出した。 ――俺はこっちを着る。 こっち、とは。学ランだ。タカオは仁の学ラン姿を素直に見たい、と思った。仁がまだ学ランを着ていたのは、タカオがずっと幼かった頃。まだタカオと一緒に住んでいた、兄と一緒にいるのが当たり前だった、とても幸せだった遠い昔。しかし残念な事に、当時タカオは幼すぎた為、兄の学ラン姿をおぼろげに覚えているだけだった。 「制服にする。」 とタカオは思い切って言った。 「だから仁兄ちゃんも学ラン、着てくれよ?」 タカオは切なる瞳を仁へ向けた。 「俺、仁兄ちゃんの学ラン姿、もう一度見たい。」 あの頃みたいに・・そばにいるのが当たり前だった、あの頃のように・・・もう一度・・・・。 仁は、そんなタカオの声が聞こえたような気がした。 そして。ブレザーにチェックのスカート、襟元にはリボンという可愛らしい制服を身にまとったタカオが、恥ずかしそうに木陰から現れた。 「き、着たぞ?」 真っ赤に染まった顔を見られないように背け、短いスカートが翻らないよう必死に両手で押さえるタカオの姿に。仁の脳髄に電流のようなものが直撃した。 「タカオ・・・・。か、可愛い!!」 「可愛くねーよ!!」 照れまくりながらも、タカオはそろそろと仁の姿に目を向けた。詰襟に金ボタンの学ラン姿。仁の体格はあの頃に比べたらはるかに逞しくなっていたが、それでもあの、記憶の彼方の遠い昔を思い出されて、今度はタカオがジーンと感動してしまった。 「仁兄ちゃん・・・学ラン、カッコいい・・・。」 「そうか?さすがに照れくさいがな。」 仁は笑いながら、タカオの目の前に歩み寄った。 「大丈夫・・・すごく似合ってる・・・。」 タカオが恍惚状態で仁を見上げている。タカオがかつての仁の姿を、一緒に暮らしていたあの頃を重ねているのは一目瞭然だった。そんなタカオの想いが、仁の胸を打った。そして何よりも。可愛らしい制服姿が似合い過ぎて。その辺の開けっぴろげな女子高生なんかよりも、ずっと恥じらいがあって、可愛くて。自分の制服姿は恥ずかしいけど、兄の学ラン姿をその瞳に焼き付けたい、そんなタカオの相反する強い想い、葛藤が、仁の欲望に火をつけた。 「タカオ・・・。」 抑えようもない想いが込められた瞳でタカオを見つめ、タカオの動きを縫いとめる。仁はそのままタカオを木にもたせかけさせ、顔のすぐ脇に手をつき、そしてもう片方の手でタカオの頬に、そっと指先で触れた。あたたかく柔らかなタカオの頬。そのまま頬に触れていた指を、唇へと移動させて触れる。 「ひとし、兄ちゃん・・・。」 行為を始める前の、こんなふうに見つめ合う時間が、一番どうしたら良いのかタカオには分からない。嬉しいような、恥ずかしいような。目を逸らしたいような、ずっと見つめていたいような。 「なんだか不思議な感じがする。高校生の仁兄ちゃんがそこにいるみたいで・・・。」 「俺も不思議な感じだ。こんなモンを久しぶりに着たからか、あの頃の気持ちが蘇ってくるような気がする。」 「あの頃の気持ち?」 「ああ。俺の辛く哀しい青春の思い出だ。聞きたいか?」 タカオはコクリと頷いた。 「俺はな、お前が可愛くて可愛くて仕方がなかったんだ。肉親の情を超えたレベルでそう思っている自覚があった。どうしてこんなに可愛いのか、なんでこんなに愛おしいのか、随分考えたもんだ。で、ある日の夜の事だが・・オナってた時に妄想してたのが、お前だった。それで気づいたんだよな〜、自分の気持ちに。」 「な・・・っ!!」 タカオは一気に赤面。 「それからはもう、苦しくて苦しくて。いくらなんでも実の弟で、しかもまだ幼いお前に手を出す訳にはいかないだろ?妄想では何度も突っ込ませて頂いたがな。でも一人でシて終わった時には、実際にはお前に突っ込める日なんて永遠に来ないんだ、という虚しさが身に沁みて、本当に辛くて苦しくて。」 「そ、それはさぞかし・・辛かったろうな・・・は、はは・・・・。」 タカオは苦笑するしかなかった。 「しかし今は、俺の腕の中にお前がいる。」 そして再び見つめ合う。満ち足りた、熱の籠ったその瞳。 あの頃・・・。手を伸ばしても届かない、届くはずがない、それどころかあってはならない事なんだ、と自らを律していた遠い昔と同じ姿をした自分。なのに腕の中にはタカオがいる。想いを通じ合えたタカオが。 「この姿でお前を抱けるなんて・・・思ってもみなかった。」 先程までのふざけた響きが、仁の口調から消えていた。 「俺も・・・。こ、この制服は、すごく恥ずかしいけど・・・でも、仁兄ちゃんの学ラン姿を、また見られたなら・・・学ランの兄ちゃんに抱いてもらえるのなら・・・・。」 ――嬉しい。何よりも・・・。 タカオは瞳を閉じた。仁は吸い込まれるように、ゆっくりと唇を重ねた。柔らかな甘さが全身に広がっていった。 「タカオ・・・。」 首筋に唇を落としながら胸元のリボンを解いていく。ブラウスのボタンが一つ、二つと外されていく。首筋に触れていた唇が、ゆっくりと下りて行く。 「ん・・・。」 肌蹴られたブラウスを少し横へとずらして、仁は現れた乳輪を舌で辿り始めた。もう片方の乳首には仁の大きな手が襲いかかっていて。 「・・・っ!」 「制服の・・ブラウスの隙間からってのが・・・また、たまらんな。」 「どこの・・オヤジだよ・・っ!」 「酷いな〜。今の俺は、どこからどう見ても真面目な高校生だろ?そして今のお前はどこからどう見ても可憐な女子高生だ。」 「どこが真面目なんだよ・・。真面目な高校生が可憐な女子高生に襲い掛かるのか?」 肩からずり落ちそうになったブレザー、解かれたリボン、ブラウスの隙間から覗く胸、短いチェックのスカートからは、なめらかな震える生足が伸びていた。そんな姿のタカオがその体重を木に預けて体を支え、乱れた呼吸で熱く仁を見上げながら、形ばかりの見え見えの抗議。 仁の声が微かに低く掠れた。 「真面目であろうがなかろうが。こんな姿をした愛しい者を腕に中にしておいて、襲う事も出来ないような男は・・・男をやめた方がいい。」 「・・・!」 仁はその手をスカートの中へ。 「あのパンティ、履いてくれたんだな。」 下着越しにゆっくりとなぞる。 「ん、・・や・・・!」 「やっぱりこんなに小さなパンティじゃ、キツそうだ。可愛そうに。」 仁はしゃがみ込んでスカートを捲りあげた。 「!!」 女じゃないのに。スカートを捲り上げられる事がこんなに恥ずかしいなんて、タカオは思いもしなかった。そして捲り上げられたまま、仁の指定した白いレースのパンティごと、そこを凝視されるのは、もっと恥ずかしかった。 「・・・っ。」 タカオは耐えかねてジリッ・・と身じろいだ。それを合図としたように、仁の頭がスカートの中へ入ってきて。 「な・・っ!」 スカートの中で、ゆっくりとパンティが脱がされていくのを感じた。いつも見られているのに、ついさっきもシた所なのに。なのにこの姿でスカートの中に潜り込まれて。いつもとは全く異なるシチュエーションというだけで、こんなにも恥ずかしいなんて。この耐え難い羞恥に、どうしたら良いのか。 「に、にい・・ちゃん・・・。」 その時。仁がタカオのそれに食らいついた。スカートの中の、仁の頭の動きに合わせてソレがしゃぶられて、吸い上げられて。 「・・い、いや・・・っ!!」 吸い上げたと思ったら、舌先でチロチロと舐めまわされて。居ても立っても居られない、急激な甘い痺れがタカオを襲う。 たまらない。今さっき放ったばかりなのに・・・・たまらない・・・・。もう、ダメだ・・、また・・・・!! 仁は暫くするとスカートの中から、ひょい、と顔を出して、タカオの目の前でそれを飲み込んで見せた。タカオはいつも、仁のそんな様子を見る度に消え入りそうになる。 「またイっちゃったな。」 そう言いながらタカオに唇を押し付けると、何とも言えない苦い味がタカオの口内に広がった。 「お前の味だ。美味いだろ。」 「美味く・・ねーよ・・・。」 息絶え絶えに、ようやくそれだけ言うタカオ。 「タカオの味だぞ?俺にとっては何よりも美味い。」 仁がニッコリと宣言すると、タカオは呆れ果てたのか、精を放ちすぎて立っていられなくなったのか。背を大木に預けたまま、ずるずるとへたり込んでしまった。ずり落ちる際の木との摩擦でスカートが捲り上がりブレザーが辛うじて両腕に引っかかっている。上気した頬、着乱れた胸元を上下させ、必死に息を整えるタカオの姿に。仁は一気に大量の血液がソコに流れ込むのを全身で感じた。 女子高生のコスプレをさせて、その乱れた姿に興奮するとは・・・オヤジみたいだ、と言われても仕方ないか、と仁は内心苦笑しつつ。 無言のまま余裕なさげにズボンのベルトを解き前を寛げ、タカオの足を大きく広げて自らを宛がった。タカオの顔を伺うと、仁が来るのを待っているように見えて、仁の胸に、なお一層、熱いものが突き上げた。もう、仁のソコには一刻の猶予もない。そしてそのまま、互いの欲求の命ずるままに。 ぐっ、ぐぐぐぐ・・・。 大き過ぎるそれが、入ってくる。タカオの中を抉るようにして圧し入ってくる。仁が・・・入ってくる・・・。仁がそこを通り過ぎて行く、この瞬間が、好き・・・。何にも代えがたいほどに。仁が今、最奥に届いた。凄まじい質量。そこに仁がいるだけで、たまらない。甘くて熱い痺れに体が勝手に反応してしまう。たまらなく・・・仁を感じる。でも、まだ足りない。もっともっと、無性に、焦がれる程に、仁が欲しい。 「・・っ、兄ちゃん・・ひとし・・兄ちゃん・・・!!」 タカオは仁を求めて、何の迷いもなく両腕を真っ直ぐに差し伸べた。仁もそれに応えてタカオを抱きしめようと、入れたまま体を倒していくと。その際、自然と中で擦れてしまって。 「や・・っ!」 その刺激に耐えかねて、また蜜が漏れてしまった。 「入れただけだぞ?」 揶揄するように仁が言うが、タカオにはどうしようもないのだ。仁が中にいる。大きな大きな仁が、タカオの中で、ドクンドクンと脈打っている。その振動にすら、悲鳴が漏れてしまう。訳が分からない位に、感じてしまう。 「だ、だって・・ひとし、兄ちゃん・・デカ過ぎて、中にいるだけで、俺、もう、おかしくなりそうで・・・!」 羞恥のあまり、タカオはパニックに陥りそうだ。仁はそんな弟の姿を目の前にして、からかうのを止めた。そして今度は安心させるように微笑んだ。 「恥ずかしがる必要はない。俺もお前の中にいるだけで・・・たまらない。こんな学ランを着ていたあの頃、どれだけこんな瞬間を夢見ていたと思う?」 涙を滲ませた蒼い瞳でそっと見上げると、切羽詰まった表情の仁の顔がそこにあった。瞳が合うと、仁は締め付けに耐えながらニッコリと笑んだ。遠い昔を思わせる詰襟金ボタンが、タカオにはとても眩しく見えた。 「俺も同じだ。同じどころか・・・それ以上だと断言できる。それにお前、容赦なくギュウギュウに締め付けるものだから・・・俺も必死に堪えてるんだ。わかるか?」 そんな事を言われると、嬉しくて・・・つい、また仁を締め付けてしまう。締め付けると、より一層ソコに仁を感じて、切羽詰まった甘い痺れが全身に広がってしまう。どうしようもなく感じてしまう。この無限の連鎖。 「しかし・・・。さすがに、こんな堅苦しいものを着たままではヤりにくいな。それに暑い・・・。」 言いながら金ボタンを外そうとする仁に。 「あ・・待って・・脱がないで。」 さっきまで甘い刺激に息絶え絶えだったというのに、そのタカオが、とっさに手を伸ばして仁の手を止めてしまった。 「ボタンは外してもいいから・・学生服は着てて。」 そう言いながら、タカオはその手で仁の学ランの金ボタンを全て外していった。仁は「暑い」と言っていたので、カッターシャツのボタンも幾つかタカオの手で外していった。シャツの隙間からは仁の逞しい胸板が覗いていて。乱れた学ラン、シャツから覗く鍛え上げられた素肌。そんな姿の仁がとてもセクシーで男っぽくて。タカオは一瞬目のやり場に困ってしまったが。 「今だけは・・・あの頃の仁兄ちゃんでいて。こんな機会はそんなにないから、今だけ・・・夢を見させて・・・。」 仁は少々驚いていた。タカオがボタンを外してくれるなど、今まで一度もなかったので、驚いたのと感動したのとで、つい、されるがままになっていたが。この切なるタカオの蒼い瞳。先程からの言動といい。さすがにコスプレプレイに目覚めた訳ではないだろう。タカオはそんなにも高校生の仁に抱かれたかったのだろうか。 「タカオ。ずっと昔、まだ高校生だった頃、俺がお前を想ってオナってた時、お前も俺を想ってくれていたのか?」 「え!?俺、は・・・。」 指摘されてタカオは慌てるが、仁の珍しく真剣な瞳がタカオの答えを待っていた。 「あの頃は・・・幼すぎたから分からない。でも俺、仁兄ちゃんが好きで好きでたまらなかった。誰よりも大好きだったんだ。なのに、その兄ちゃんが旅に出ちゃって、寂しくて・・・悲しくて・・・本当に辛くて。俺も・・・仁兄ちゃんが旅に出てから、兄ちゃんを想ってシた事、ある・・・。」 タカオの言葉が、特に最後の一言が、仁の胸を矢のように打ち抜いた。 「本当・・か?」 仁の問いに、タカオは恥ずかしそうにコクリと頷いた。 「何度も・・・制服姿の兄ちゃんを想い出しながら・・・。」 「タカオ〜〜〜〜!!」 ガバッ!と仁は感激のあまり、盛大にタカオを抱きしめた。入れたまま抱きしめられると、またソコで摩擦が起こるが、タカオは今度こそ、小さく呻きながら甘い刺激に耐えた。 「あの頃の俺はなんて馬鹿だったんだ!!一人でシてないで、正直にお前に突っ込めば良かったのに!!」 「いや・・。それはさすがに勘弁。あの頃じゃ、身体的に無理があり過ぎだって。」 タカオは内にある、巨大な仁に耐えながら、苦笑した。 「ははは・・・。でも、たまには違った事をしてみるもんだな〜。まさに瓢箪から駒。今の話は、お前の気持ちを初めて知った時と同じくらいに、嬉しい。これからは、もっと色んな事を試してみるのもイイかもな。」 「あの・・・。仁兄ちゃんが言う「色んな事」って恐ろし過ぎるんだけど。でも・・・今回だけは、学ランの兄ちゃんが見れたし、それにそんな頃から俺の事を、って聞けて、びっくりしたけど嬉しかった。」 柔らかな笑みを浮かべながら、幸せを噛みしめながら、見つめ合う。互いのそんな顔を見つめていると、今までの様々な感情が込み上げてきて胸がいっぱいになる。愛おしさが溢れて来る。溢れる想いの出口を探し求めるように、どちらからともなく唇を求め合った。 「タカオ、続き、シてもいいか?」 すると、タカオはもう一度、コクリと頷いて。 「仁兄ちゃん・・・。あの頃よりずっと大人になって・・精悍な顔になって。あの頃にはもう、戻れないけど、でも、こうして学ランを着てる兄ちゃんを見てると、あの頃の顔も見えるような気がする。」 忍者の真似事が趣味で、怪しい忍者衣装で突然街中に現れたりするものだから、アブナイ印象を持たれがちだが、しかし仁の顔の造形はとても整っていて、美形と言っても良いレベルだ。兄が高校生どころか、記憶にある限りの幼い頃からタカオはそう思っていた。仁兄ちゃんはカッコいい、と。その仁が今は。遺跡から遺跡を渡り歩いて、古代の神秘を紐解いてきた者の風格が身について。それは仁のただでさえ整った顔からも、そして鍛え抜かれた全身からも滲み出る、隠しようもない魅力となっていた。その魅力はどんな時も決して失われたりはしない。怪しげな忍者をやってる時も、BBAの鬼監督だった時も、BEGAへ行ってしまった時も、木ノ宮家の居間で寝転がっている時も、タカオを抱く時も・・・そして学ランのコスプレをしている今も。 タカオにはどこまでも優しい兄。とても厳しい時も多々あるが、それはタカオを思う故、優しさ故。こんなに魅力的な人がこんなに傍にいるのに、惹かれずにいられる筈がない。好きにならないでいられる筈がない。幼い頃から胸に秘めてきた溢れる想いが、止まらない。 「俺、兄ちゃんが好きだ・・・。」 「わかってる。」 「誰よりも誰よりも、仁兄ちゃんが好き・・・兄弟だけど・・・兄ちゃんが・・・好き・・・。」 「タカオ・・・・。」 タカオの告白を聞きながら、仁はゆっくりと抽挿を開始した。 「ん・・・、あ・・・。」 濡れた音が響いていく。タカオの喘ぎ声が響いていく。仁とタカオの、甘く濃厚な時間が始まる。 ――早く大人になれ、タカオ。そうしたら、二人で世界を旅してまわろう。俺は発掘や研究を続け、お前は未開の地でベイの楽しさを子供達に教えてやりながら、既成概念にとらわれない世界を、自由に気ままに旅をしよう。そして、二人で生きて行こう。俺も・・・愛している。お前がこの世に生を受けたその瞬間から、ずっと・・・。お前も・・・似たようなもんなんだろ?タカオ・・・・。 数時間後。 日当たりの良い木に、洗濯された男女制服セットが綺麗に干されていた。パタパタと風に揺れる洗濯物を眺めながら。 「俺達、死んだら地獄に落とされるな、きっと。兄弟でこんな事シて。」 「そうなったら閻魔大王にバトルを挑めばいいさ。お前は誰にも負けないだろ?タカオ。」 仁がニッと笑んだ。まるで何でもない事のように。兄弟で、事もあろうか、こんな関係になってしまったなんて、誰がどう考えても大問題なのに。不思議だ。仁の笑顔を見ていると、タカオのそんな考えなど、とても小さな事のように思えてくる。怖いものなど、ないのだと思えてくる。 タカオは思わず仁の横顔を伺うと、そよ風を顔に受けながら、仁は気持ち良さそうに微かに笑みを浮かべていた。その姿が、木々の緑と青い空、そして遺跡の中で、完全にこの世界に溶け込んでいるように見えて、タカオはハッと息をのんだ。 きっとこれが仁のもう一つの・・タカオが知らなかった、本当の仁の世界。自然の中で、遺跡の中で、たった一人で今まで生きてきた。それ故の、何物にも動じない芯の通った心。とても広くて強い心。タカオは、仁とこうしていると、そんな大きな大きな仁に包まれているようで、安らいだ想いが胸に広がっていくのを感じた。前向きな気持ちが全身に満ち溢れて来るのを感じた。 ――仁兄ちゃんと一緒なら、きっと何があっても、何処へ行っても、自分の心に正直に生きていける。でも、それだけじゃ、ダメなんだ。仁兄ちゃんの腕の中にいて安心しているだけじゃ・・・。俺も兄ちゃんのように、もっともっと、本当の意味で、強くなりたい・・・・。 それからタカオは改めて、仁の問いに世界チャンピオンらしく元気に答えた。 「当然!閻魔大王にだって負けるもんか!ギッタンギッタンにしてやるぜ!」 仁はタカオの言葉に微笑みで応えると、大きく伸びをして。 「さあ、ヤる事ヤったらスッキリしたし、発掘の続きでもするか〜!!」 「ようやくかよ・・・。」 「タカオも手伝ってくれよ?」 「うん!」 タカオは喜んで答えた。タカオは考古学者をやっている兄が見たくてこの旅について来たのだ。兄が遺跡の中で生き生きと古代のロマンを追い求める姿を見たかった。タカオが知らない兄の顔。それが見たかった。これまでの旅でも、その一部を垣間見る事は出来たが、もっともっと見たい。もっともっとタカオの知らない兄の姿を発見していきたい。 そんなタカオの思惑を他所に、仁は飄々と続けた。 「ここの遺跡は少し長引きそうだが・・・コスプレ衣装はさっき見た通り、山のようにあるし。こんな楽しい遺跡調査の旅は初めてだ!明日はどんな服にする?明日と言わず、今夜は??」 「仁兄ちゃん・・・まずは発掘だろ?」 「人間、一つの事しかできないようじゃ、駄目だぞ?色んな楽しみを持ってなきゃ!」 「仁兄ちゃんの場合、楽しみが多すぎるんだよ!!ベイに忍者に考古学に・・・・。」 「まあ、まあ!」 仁は嬉しそうにタカオをなだめると、今度こそ遺跡へと向かって行った。 タカオもそれに続く。 この兄弟は、きっとこれからも、こうやって楽しく自由に、そして強く生きていくのだろう。 ここは高い山々が連なり、どこまでも樹海が続く秘境。その中に点在する、人々から完全に忘れ去られた文明の跡。かつてはこの地でも、多くの人々が暮らしていた。 今は誰もいない、黙して語らぬ遺跡。遥かな時を経て、兄弟でありながら想いを通わせてしまった二人が、いつまでもいつまでも飽きることなく・・・。 これからも、ずっと二人で――――――――。 END 仁タカアンソロに参加させて頂いたものです。 確か、「仁タカ、できればR18、コスプレ」という指定でした。 コスプレ、と聞いてどうしようかと思いましたが 遺跡巡りをしている時の仁は、とてもいい顔をしてるんだろうな〜と思ったら 気づけば書き始めていました。 ただ、長くなってしまった事が本当に申し訳なくて、心残りです。 それでも、少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。 ここまで読んで下さり、ありがとうございました。 (2016.10.17) |