over flow


 恋人っぽいこと、しようか




「ん……ぁ…」
 サーサーと水の落ちる音がうるさい。
 シャワー室に入るなり、待ち望んでいたかのように、深くキスをしていた。
 バーナビーは始め、舌と舌が絡み合うのが、気持ち悪いと言っていたが、構わず続けていたらだんだんととろけてきて、今ではもう夢中で。
 咥内をぐるりと味わったあと、ちゅ、と音をたてて唇が離れた。
 汗を流す目的で浴びるはずだったシャワーは、息遣いをかき消すだけのものに成り果てていた。
 転がり込むようにここへ入ったためか、ハーフパンツは未だ身につけたままだったことに気付いたのは、しばらくたってからだった。バーナビーなんて運動していた時のまま。すでにウェアが肌に張りついてしまっている。
 視覚的には色っぽさ全開って感じだな。
 居たたまれない気分になってしまい、慌てて上だけでも脱がそうと試みる。しかし、うまくいかない。
 俺の意図に気付いたのかバーナビーは、ウェアを脱がしやすいよう腕を上に伸ばしてくれた。
 それでも脱がすのにずいぶんと時間がかかってしまった。
「…おじさん…」
 バーナビーが腕を伸ばし、もう一度とキスをねだる。
 あのバーナビーでも、こんな淫蕩な表情をするのか。目は潤み、頬は紅潮し、唇は突き出されている。
 獲物を前にした動物のように、むしゃぶりついた。年甲斐もなく、という言葉がよぎったがそんなことを考える余裕なんてすぐに消えた。
 バーナビーをそのまま壁にゆっくりと押しつけたら、わっと小さく声を上げ、俺に擦り寄った。
「ん、どうした」
「すいません…冷たくて…」
 聞いてみれば壁のタイルが冷えたままだったようで、それに触れてびっくりして声が出てしまったらしい。
「すまん、お湯、掛けとこうな」
 余裕がなくて、そんなことにも気付けなかった。
 とりあえず、バーナビーの背中にシャワーをかける。触ってみて体温が戻ったと思ったところで、タイルにもかけた。
 彼はじっとしていたが、タイルを温めている途中で、こてんと頭を俺の方へ傾けた。
「…おじさんって、実はお洒落ですよね」
 彼は、顔をこちら側に向け、そのまま何か匂いを嗅いでいるようだった。
 バーナビーの鼻が、首筋を撫でる。
「いい、匂い…おじさんの、匂い。汗と、香水と…」
 はぁと一息ついてから、湯が二人に掛からないような向きで、にシャワーヘッドをハンガーに掛けた。
「何、バニーちゃん。誘ってんの?」
 もう一度、今度は温かくなった壁へ、押しつけた。
 さりげなくバーナビーの足の間に、俺の足を割り込ませる。
 濡れたハーフパンツの上から股間をぐいと押した。
「んっ…そういう…わけでは…」
「いーや、俺は誘われた」
 バーナビーが何か言葉を発する前に口付けをした。正気に戻ってきた彼を、再び快感の籠のなかに閉じ込めるように。
 同時に、股間へも刺激を与える。
「ふっ……んんー…んっ…」
 ぐい、ぐい。
 脚を当てた時には既に立ち上がりの兆しを見せていたバーナビーの中心は、脚を押しつけるたびに堅さを増していった。
 掴まる場所を見いだせない彼の両手は、宙に浮いたまま彷徨っていたので、俺に掴まれるように腰の辺りまで誘導する。
「爪立てても、いいんだからな」
 息継ぎがままならないバーナビーのため、少し唇を離した隙に念を押しておく。
 そうでもしないと、この男は俺に傷を付けてしまうことに罪悪感すら持ちそうな気がしたからだ。
「と、その前に、ズボン気持ち悪いし脱ごうか」
「…はい……」
 今のバニーちゃん、されるがままだな。それかこういうの、慣れてないか、だ。
 バーナビーのハーフパンツを脱がせてやったら、途中から重力に従いべちゃりと落ちた。
 脚を抜かせ、それを隅に投げた。自分の物も同様に、隅に投げる。
 濡れたボクサーパンツは、バーナビーの形に沿い、中心を浮き出たせていた。
 俺の状態も同じようなものだ。
 バーナビーのいつもと違う色っぽい顔、姿に欲情している。
「バニー、俺の、さわって?俺もお前の気持ち良くするから」
「えっ…や、いやですよ…そんな…」
 まだそこまでは無理か、と少し残念な気持ちになった。
 仕方がないので、半ば無理矢理に俺とバーナビーのものを擦り合わせた。
 パンツのうえからでは掴むことはできなかったので、腰を寄せて俺とバーナビーの、側面同士を擦り合わせる。
「ぁっ、ん…んっ」
「んっ」
 時々左右を入れ替えながら腰を動かす。
 ああ、バニーは感じてくれてるんだろうか。
 時々、裏筋を掠めてやれば、体をビクッとさせた。
「も、おじ…さ、ぁぁん、お、じ…」
「ん、何…バニーちゃ、イきそ?イってもいいよ」
 今にも泣きだしそうな声で俺を呼ぶ。
 どれだけ汚れようと、洗い流すものならここにある。
 今までよりも激しく擦り合わせようとした。
「ちが、んっ、おじ…、さんっ、イけ…な、イけ、な…ひっ」
 目尻に浮かんだ大きな粒は、今にもこぼれそうで、バーナビーは肩を震わせながら、小さく叫んだ。
 そして、焦点のずれた目で俺を見た。
「足りなくて…直接、扱いて…ください」
 涙が、落ちた。
 なけなしの理性も吹っ飛んでしまい、ずるりとバーナビーのパンツを下げ、中心を取り出した。
 先端から伸びた透明な糸と、バーナビーの金色に透けた下生えが絡み合っていて。ごくりと、生唾を飲み込んだ。
 自分のパンツも適当にずらし、それを掴んでバーナビーのものに擦り付け、纏めて右手で扱いた。
「ぁうっ…あぁ、は、うんっ」
 ちらりとバーナビーを伺い見れば、頭を壁に預けるように上を向き、目を閉じて眉間に皺を寄せていた。開いたままの唇からは、喘ぎ声が漏れる。
「バニー、ほら、ちゃんとつかまれよ」
 ずっと腰の辺りで握られていたこぶしを、背中の上の方まで移動させた。
「爪立てても、いいんだからな」
 もう一度、今度はもっと近い位置で囁いた。
「ほら、手、開いて…ん、そう、いい子だな…」
 少しの間止まっていた右手の動きを再開させた。
 が、汗と湯気とで湿ってはいたものの、少し乾きはじめてしまったようで、うまく擦れない。
 ぐるりと見渡せば、備え付けのボディソープが目についた。
 ぐぐと手を伸ばして一押しし、それを直接二人のものへ塗り付けた。
「ぅわっ、なん、ああっ!やぁっ」
 流しっぱなしにしてあるシャワーで手を濡らして、再び扱きはじめれば、すぐに泡だらけになった。
 摩擦が軽減され、滑りがよくなったせいか、さっきよりも格段気持ちがいい。
「ん、はぁん、あ、なん、やっ」
 それはバーナビーも同じようで。
「ど?…きもちい?」
「も、…やだ、や、…あぁっ」
 首を振り、嫌だ嫌だと腰が逃げる。
 その割に、背中、引っ掻いてるんだけど。
 あまりに首を振るものだから、つい悪戯心でバーナビーの尿道口をぐりと強く刺激した。
「ひぁっ、いやだあぁ!あ、あ、……んぁ」
 ひときわ大きく喘ぎ、体を張り詰めさせ、バーナビーは射精した。
 はぁはぁと息を切らせ、壁にもたれ掛かってなかったら、今にも膝から崩折れそうだ。
「ごめんバニー、俺もイかせて」
 射精後の気だるげな表情と、バーナビーの熱い白濁を腹に浴びて、限界が来た。
 ぐるりと後ろを向かせて、壁に手を付かせると、尻に腰を押しつけた。
「え、え?おじ、さん?」
「すまん、ちょっと、足閉じててな」
 脚の隙間に自分の昂ぶりを挟み込ませた。
 バーナビーが戸惑っている、しかしもう止まらなかった。
「バニー、力、入れてて」
 目の前にある腰を強く掴み、がしがしと己を擦りつける。
 バーナビーは、まだよく理解していないようだったが、しっかり脚に力は入れてくれていたので自分を追い詰めるのには容易だった。
 擬似セックスではあるが、揺れる金色の髪と汗の滲んだ背を見ながら腰を振るのは本能からの興奮を盛り立てた。
「ん、…バニー、出すぞ」
「…ァ、んっ」
 しっかり挟み込まれていたものをずるりと抜き出し、バーナビーには掛からないように熱を吐き出した。
「くっ、……はぁ」
 全て出し切り、まだ壁に手を付いたまま不安そうにこちらを見ていたバーナビーを抱き寄せ、やさしくキスをした。
 触れるだけの、なんだか子供みたいなキスだった。
「はぁー、気持ち良かった…」
「……………ぼくも、です」
 恥じらった表情が可愛らしい。
 もっと余韻を感じようと、更にぎゅうっと抱き締めたら、俺とバーナビーの間で何かがぬめった。
「わあっ、ちょ、未だ流してなかったんですか!?あっ、シャワー!」
「お、バニーちゃんのミルクが」
「ミル…!?おじさんっ!!」
 一瞬にして甘い空気が消え去ってしまったが、まぁ、いいか。
 バーナビーがシャワーをとり、バシャバシャと俺に湯をかける。
 ああ、温かいなぁ。


「ははっ、好きだよ、バーナビー」
「っ!……僕のほうが、好き、です…よ」



 このぬるま湯から、もう抜け出せそうにない。




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