◆Fleurs Du Mal◆



「貴方が直々に来られるなど、珍しいですな」

 マ子が茶を入れる準備をしながら、ジオンの基地に居る事がありえない人物にそう話し掛けた。ここにいる筈の無い人物、マ子の相手は、連邦の中将を務める男だった。

「何も危険を冒さずとも、ジュダック殿に任せておけば宜しいのに」

 なぜそんな暴挙とも言える事をしたのか、相手の気持ちは理解している、それを十分計算した台詞をマ子が言う。

「つれない事を申されるな、マ子殿! 私は貴女に会いたくてここまで……」

 落ち着かないのか、そわそわしていたエルランがマ子の言葉に耐え切れぬように声を大きくした。全てはマ子の計算通り。焦らせば焦らすほどエルランの口は軽くなり、こちらに有利になる。

「貴方の身を心配して言ったこと。私とて、貴方に会いたかったのは変わりはしませぬ」

 背を向けていたのをくるりと振り返り、熱っぽくエルランを見つめてそう言った。焦らせて、焦らせて、ほんの少しだけ与える。相手はもっと欲しがる。

「嬉しい……」

 膝を付き、椅子に座っているジュダックの膝の上にしなだれかかり、そう呟いた。

「ああ、マ子殿!」

 エルランがマ子の体を捕まえようと手を伸ばすより一瞬早くマ子が立ち上がり、背を向ける。また何事も無かったかのように茶の葉が入ったポットに湯を入れた。

「貴方が直々に来られたという事は、期待して宜しいという事ですかな?」

 冷たいマ子の声。ほんの一瞬だけ味わった甘いお菓子を取り上げられ、エルランの表情が歪んだ。菓子には猛毒が入っているとも知らず、子供のようにそれを欲しがる。

茶葉が充分広がるまで待っているマ子の背後にエルランが立った。我慢し切れずに手を伸ばし、マ子のスカートのスリットから手を這わす。抵抗はしなかった。マ子がそうするように仕向けたからだ。背後の男の息が荒くなるのを冷たい笑みを浮かべながら聞いている。相手を人と思っていないその笑みを見れば、さすがのエルランも考え直しただろうが、マ子の体を求める事しか考えていない男にはそれが判らない。

いやらしく這う男の手が、マ子の滑らかな肌を執拗に撫でまわす。マ子がスカートの下に下着を着けていない事を先々の逢瀬からエルランは知っていた。先ほどから舐めるような目でマ子を見ていたのもそのせいだ。ヒップを掴み上げられ、感じて甘い声を出した。正確に言うと、感じた振りをして甘い声を上げてやった。それでもエルランの息は益々荒くなる。

マ子の体から、エキゾチックな香のような香りがした。その匂いがまたエルランの情欲を刺激する。

愚か者め……。

心の中で、マ子がエルランに冷たく唾棄した。そのような様子はおくびにも見せず、身をひねって、自分の尻に執着を燃やすエルランを見た。

「ジュダック殿のもたらす情報などより、ずっと、重要な事、このお口から聞かせていただけるんでしょうな……?」

 す……と手を伸ばし、指でエルランの口に触れると、エルランの中の情欲の炎が一層強くなった。

「あうっ!」 

悲鳴と共に、マ子の体がテーブルの上に乱暴にうつ伏せに押し付けられる。勢いエルランに尻を突き出すような格好になり、逆らう事の出来ぬ体勢のまま、自分の体を覆う布をエルランの手に乱暴にめくり上げられる。抜けるように白く、艶かしいマ子の下半身がエルランの目に入った。

病的なまでに白い肌、細い体は、けして女としての魅力を減じるものでなく、優美で、どこか妖しい魅力を放っていた。熟れきった果実のような退廃的な匂いがエルランの神経を暗く高ぶらせ、乳を求める幼子のようにその体にむしゃぶりつく。ぴちゃぴちゃと下半身を舐め回す音を、マ子が何の表情も浮かべていない顔で聞いている。

 全てはマ子の思いのまま。




「それでは、連邦はこの基地に近々攻勢をかけてくるつもりだと……」

「ああ、そうだ……、オデッサのジオン勢力を一掃しようと、かなり、大規模な……戦闘を仕掛けてく……ううああっ」

 会話を交わしながら、マ子の手がエルランを包む手をやわやわと動かした。椅子に座ったエルランの股間の高ぶりに、片膝をついたマ子の五本の指がまるで生き物のように動き、絡みつく。
 男のものに絡む細く骨ばった指、指先の赤いマニキュア。それは網にかかった獲物を絡め取る女郎蜘蛛の鮮やかな腹のように毒々しく、美しい。
 滴り落ちる雫を先に塗りつけ、男の敏感な部分を知り尽くした指でなでると、それだけでエルランが低いうめき声を上げた。素早く爆発寸前のそれの根元をぎゅっと締め上げ、開放を阻止する。

「まだです、まだ、いかせはいたしませぬ」

 既にエルランには多くのことを喋ってもらったが、まだ聞きたい事はある。絡め取った糸からこの男を逃すつもりは無い。もっと骨までしゃぶり尽し、全てを剥ぎ取らなければならない。
 マ子の手と口の巧みな愛撫でエルランは天国にも上るような快楽を味わったはずだ。愛の無い快楽と引き換えに、うわ言のように重要情報を垂れ流しながら。

マ子の妖しい笑みに、エルランがごくりと唾を飲んだ。片膝をついた足は、スリットが捲れ上がり、白い太股の内側まで露になっている。少し身をずらせば、その奥の甘い蜜を湛えた花園が姿を現しそうだ。そこに押し入って快楽を充分に味わいたいという欲望に満ちた目が注がれている。



「そして、兵力はどれ位? 指揮官は誰です?」

 矢継ぎ早にマ子がそう聞いた。エルランの視線は充分判っている。

「私も、まだ、あまり重要な事は」

 曖昧な返事に、ぎゅっとマ子の手がエルランを締め付けた。苦痛にエルランの顔が歪む。

「私を、愛しているのなら、何もかも吐かれませ」

 また、優しくエルランを擦り上げた。マ子が巧みなのは性技だけではなかった。肉欲と快楽を巧みに煽り、擬似恋愛ともいえる感情を植え付ける。貴方を愛していると囁きかけ、貴方は裏切っているのではない、私の愛に答えて下さっているのだと良心の痛みをすり替える。
 名誉欲や虚栄心を上手くくすぐってやり、男が求めるような答えを言ってやれば、エルランのような男はいくらでもマ子の手の中に落ちた。そのうちこちらから求めずとも、こうして自らマ子を求めて聞かれもしない事までべらべらと喋り始める。

「私のこの基地を失えば、あなたとの逢瀬も終りなのですよ」

 名誉欲、虚栄心、肉欲、快楽、与える事と焦らす事、脅迫と懐柔、飴と鞭。全てを利用し、計算し尽くす。ジオン随一の策略家は、美しい猛獣使いのようにそれらを操り、男を従わせた。

「それは!」

 マ子の脅迫ともいえる言葉に、エルランが思わず声を上げた。こうなってしまっては最早この女の手から逃げられぬ。自分の送り込んだ甘い毒が充分作用しているのを感じ、マ子が内心邪悪な笑みを浮かべた。

「だから……、私と、貴方の為に、決意なされませ」

 狼狽するエルランに、優しく微笑みかけた。情人の仮面を被った死神。微笑みの裏に死と裏切りの匂いがする事に男は気が付かない。

「連邦がこの基地を攻めてきた時は、私にお味方してくださいますな?」

 機は熟した。そう判断し、マ子がついに決定的な言葉を言った。

「そ、そこまでは、ううっ」

 僅かな抵抗を見せるエルランに、マ子の手が少し罰を与えた。それでもまだマ子は焦ってはいない。これは絡め取った獲物の最後の痙攣にしかすぎないのだ。

「私の上官とも約束しております。私の夫となる方に、それ相応か、いえ……、それ以上の地位を用意すると……」

 マ子の牙がエルランに深々と突き刺さり、痺れるような甘い毒を注ぎ込んだ。即効性のその毒の効き目は早い。マ子がそう言うや否や、エルランの顔色が変わった。

「夫と! マ子殿、そのお言葉、本当ですか?」

 マ子を手に入れる事が出来る。それも、マ子の方から望んで。それはエルランの雄の部分を心地よく刺激した。この快楽を毎晩感じる事が出来るというのはそれだけで連邦を捨てる価値がある事だとエルランの肉欲が訴えた。

それだけではない、マ子の上官がキシリア・ザビだという事は知っている。ザビ家の重鎮が己の地位を保証しているという言葉はとても魅力的だった。

ジオンの有力な軍人であるマ子と組めば、あるいは……。

エルランの脳裏を甘い想像が駆け抜けた。大勢のジオン国民に迎えられ、隣にはマ子が微笑んでいる。手を振って答える自分の胸には、大将の階級章が燦然と輝いている。 

「私が愛する貴方に偽りを申す訳が無いではありませぬか。貴方がどのように素晴らしいお方か、キシリア様にもお伝えしております」

 マ子が拗ねるようにそうエルランに甘えて言った。エルランの夢見るような表情から、彼が何を夢見ているのか容易に想像がつく。もはやマ子が何をせずとも、自分から勝手に坂を転がり落ちて行くだろう。それでも、用心には用心を重ね、エルランの背中を一押しした。

「危険を冒して、連邦の基地まで貴方にお会いしに行った私の気持ち、疑われますのか……?」

 マ子の言葉は、エルランがマ子を初めて抱いた甘い出会いを思い出させた。少し考えれば、あれから何度会っても焦らされるばかりで、自分がマ子を抱いたのはこの時だけという事に気がつきそうなものだったが、もちろんそれはマ子が気付かせなかったのだ。

 いつのまにかマ子がエルランに会いに行ったのは恋慕からという事になり、マ子の手練手管で懐柔された事実は甘い愛の思い出に変わる。

歪んだ夢を見せ、あたかもそれが現実のように思わせるのだ。愚かな男は矛盾と痛みから目をそらし、自分に都合のいい夢を手放そうとはしない。

「判りました。このエルラン、貴女の為に連邦を捨て、ジオンに行きましょう」

 裏切りと欲望を薄っぺらい愛でコーティングして、錠剤のように飲み込んだ。いくら舌に感じる味は甘くとも中身は変わらない。だが、飲み込む一瞬が甘ければそれでいいのだ。
 愛に殉じて連邦を捨てる。すっかりそう変換されたエルランが、誇らしげな顔さえしてマ子にそう言った。

「ああ嬉しい! その言葉を待っておりましたぞ」

 大げさにそう言い、涙まで流してマ子がそう言った。マ子の涙にエルランが感動している。可愛いものだ……とマ子が思った。但しその愛情は、利用価値がある間だけ与えられ、用が済めば捨てられる道具に贈るささやかな感傷に過ぎなかったが。

馬鹿め! そう出かけた言葉を、エルランのものを深く咥え込む事で押さえた。

「ううあ、マ子殿っ!!」

 エルランの悲鳴が部屋に響いた。獲物が完全に息の根を止められたのだ。




「誰だ?」

 エルランが荒い息をつき、マ子の手が優しく後始末している最中、興ざめなノックの音が二人の邪魔をした。エルランが鋭く誰何する。

「ジュダックです。エルラン中将、そろそろ行きませんと……」

 中で何が行われているか知っているのだろう。遠慮がちなジュダックの声に、エルランが舌打ちした。

「これからだという時に、……残念ですな」

 ちっとも残念そうではなさそうにマ子がそう言い、これでもう終りだという風にエルランのスラックスのファスナーを上げ、ベルトを締めなおして立ち上がった。

「次は! 次はいつ会えるのか!!」

 去りかけたマ子の細い手首を掴み、駄々っ子のように身悶えして、エルランが焦ってそう言った。

「またジュダック殿に連絡させます」

 冷たくそう言い、掴まれた手をやんわりと解いて部屋から出て行くよう促す。しぶしぶ立ち上がったエルランにしなだれかかり、耳元で囁いた。

「次こそは、私を抱いて下さいませ……」

 甘い言葉を吐きながら、もう二度と会う事も無いかもしれないが。と心の中で付け加えた。

 エルランと行き違いでジュダックが部屋に入ってくる。侮蔑の光を隠そうともせず、マ子がジュダックを見た。

「マ、マ子様!!」

 部屋に入って来るとすぐ、鼠のような卑屈な目で、ジュダックがマ子を舐めるように見上げた。

「ミスタージュダック、襟を直したまえ。連邦のカラーが見えている」

 ジュダックのその目の意味は判っていたが、わざわざ相手にしてやるほど親切ではない。

「いいタイミングだった。ご苦労だったな」

 それだけ言うと、優美なラインのアンティークの椅子に腰掛けた。あらかじめ適当なタイミングでエルランを呼ぶようにジュダックに言い含めていたのだ。マ子の部下ではないジュダックにそうさせる事ができるのも、マ子から与えられる褒美目当ての事だった。



「じ、焦らされますな。私にも……」

 待ちきれぬように身を揉みしだき、ますます強くなるジュダックの目の奥の欲望の光からマ子が目をそらせた。

「ああ、そうだったな……」

 そう言い、高く足を組む。スリットから覗く脚線美にジュダックの目が釘付けになった。マ子の手が面倒くさそうに自分の足に絡むスカートを払うと、太股の付け根から白い足が惜しげもなく男の目に晒された。

 猿のような喜びの声を上げて、ジュダックがマ子の細い足にすがり付く。両手でその足を抱きしめ、狂ったようにキスを落とし、べろべろと舐めまわす。赤い舌が這い回るマ子の透き通るような肌の下に、蜘蛛の巣のように張り巡らされた青い静脈が透けて見える。舌がブーツの先からなめくじのようにぬらぬらと、ふくらはぎ、膝の裏、太股へと這い登っていく。ジュダックの股間がはちきれそうに膨らんでいる。微動だにせず、ジュダックを冷たい視線で見下ろしていたマ子が、不意に力いっぱいジュダックを蹴飛ばした。情けない悲鳴を上げながら、ジュダックが高価な絨毯の上をごろごろと転がっていく。

 太股の奥の、彼ごときが触れる事は許されない場所を求めて舌を這わせようとしたのだ。

「もう行きたまえ。エルランが怪しむ」

 ひいひいと悲鳴を上げながら、それでも欲望に浮かされた熱っぽい瞳をマ子に向けるジュダックに、死神のように冷たい顔をしたマ子がそう命令した。欲望が滾った股間のふくらみに、そう言いながら足をかけ、じわじわと踏み潰してゆく。

 ジュダックが苦痛とも快楽とも付かない声を上げ、狂った欲望を吐き出した。




「……お疲れ様です」

 部屋から出てきたマ子を見て、何と言ってよいか判らずに、しばし迷った後、ウラガンは上官にそう声をかけた。

「フン、あの馬鹿め、面白いように喋ってくれる。やはりジュダックには出し惜しみさせていたようだな」

 マ子が不愉快そうに心配げな顔をしている副官にそう言った。

「しかし、大佐自らがこのような事をすることもないのではありませんか?」

 また迷った後、おそるおそるそう口に出す。手段は選ばぬ人とは言え、これではあまりにも上官が傷つきすぎるのではないかと思う。できれば止めさせたかった。

「あるのだな」

 ウラガンの声に、マ子がきっぱりとそう言った。

「私はキシリア少将に愛を捧げている。キシリア様のためならば、命も惜しくは無い。キシリア様への愛を証明するためならば、私はどのような事でもする」

 マ子の言葉に悲壮な顔つきで黙ってしまったウラガンに、マ子が口元に笑みを浮かべて付け加えた。

「それに、舐めるのは嫌いではないよ」

 赤い唇が釣り上がり、毒婦の笑みにウラガンの顔がこんどは呆れたような驚いたような複雑な表情に変わった。

「キシリア様へのご報告は?」

 言い返せずに、話題を変えてそう言うと、マ子の顔色が変わった。急に疲れたような顔になり、けだるそうに髪をかき上げる。ぬらぬらと体にまとわりつく不快感が急に大きくなった。臭いが体に染み込む前に、汚れた体を一刻も早く洗い流したい。機械越しとはいえ、このような体でキシリアに会いたくなかった。

「……シャワーを、浴びてからにする」

 また心配そうになったウラガンの表情を背に、そう言ってマ子が自室へと歩き出した。

「……大佐」

 いつまでたっても部屋から出てこない上官を心配し、彼女の副官が部屋をノックした。遠慮がちにドアを開け、そっと中を覗くと、明かりを消したまま窓際でワイングラスを傾けるマ子が見える。

「何か用かね? 報告なら、もう少し後でする」

 元々生気があるわけではないが、一層感情を隠した声に、上司の心情を思って一瞬何も言えなくなる。青白い顔は月の光を受け、壮絶なほど美しかった。

悲しげな表情がワイングラスの中の月を見つめ、くいと一気に飲み干す。
 月が綺麗な夜には、遠く離れた人を想ってマ子の悲しみが一層深くなる。会えない寂しさが募り、小さな胸を締め付ける。

「月を、見てらっしゃったのですか」

 時折発作のようにふさぎ込むマ子の様子を、ウラガンは見ている事しか出来ない。

「美しいな、月は」

 それだけ返すと、疲れているのか、ぐったりと目を閉じた。月の光が掘りの深い顔に陰影を作る。月を見て誰を思い出すのか、月よりも誰が美しいのか?

「キシリア様に、お会いしたい」

 ぽつりとそう言うと、だらりと力なく伸びた手から離れたワイングラスが床に落ち、毛足の長い絨毯がそれを受け止め、コロコロと転がっていった。自由なった両手で思わず顔を覆う。

「会いたい」というのが、通信で単に顔を合わせるという事ではない位は、こういう事にうといウラガンにも判る。

「私の事など、お忘れになったのであろうか?」

 そう呟いたマ子の指の隙間から、こぼれる涙が月の光を反射してきらりと光ったような気がした。細い肩を震わせるマ子に、先ほどの毒婦の面影は何処にも無い。ただ想い人を思って泣くその姿は、十代の少女のように純真で頼りなかった。

「そんな事、ありませんよ」

「気休めを言うな」

 マ子の凍りつきそうに冷たい拒絶の答えに、傍らに持っていたファイルから一つ書類を抜き取った。

「どうぞ」

 先ほど来たばかりの通達をプリントした紙をマ子に手渡す。それを見たマ子の涙に濡れた瞳が見開かれた。

「あ……、キシリア様!」

 感極まったようにそう言うと、その薄い紙きれを後生大事そうにぎゅっと抱きしめる。閉じた目から、また涙が一筋頬を伝った。

その紙にはキシリアが月より地球に来る旨が記してあった。

いつまでもそうしているマ子を暫く見つめていたが「失礼します」と小さく言って、そっと部屋から辞去した。マ子の想いが、月にいる彼女の女神に届きますように……と心底願いながら。

                                                    終







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