Downmost 2
回転する歯がオプティマスの腕に食い込んだ。ロックダウンのチェーンソーは見た目よりもずっと切れ味がよく、いとも簡単にオプティマスの腕からワイヤーアンカーを奪い取る。
幸いな事に、オプティマスはロックダウンにEMPを使われて意識を失っていたため、自分の体の一部を奪われる苦痛と恐怖を知らずに済んだ。
EMPの効果が切れ、意識を取り戻したオプティマスが最初に感じたのは、体の一部を執拗に刺激される奇妙な感覚だった。
ぼんやりとした意識を急いでかき集める。台に寝かされ、ワイヤーで拘束された不自由な体でなんとか異変を感じるあたりを見る。
オプティマスの下腹部に顔を埋めていたロックダウンと目が会った。
ロックダウンは、オプティマスの目を見つめながら口に含んだものを一度出し、これ見よがしになめ上げた。上目使いで笑ってみせるロックダウンに、思わずオプティマスが目をそらす。
「いい体してるな、あんた」
喋るために口から離したものに手で刺激を与えながらロックダウンは言った。
「そそるよ、実に」
にやりと笑い、劣情を隠そうともせず、オプティマスの体をなめる様に見る。
「禁欲的な生活をしてきたんだろう? トレーニングは欠かさず、悪い薬とも無縁」
よっぽど気に入ったのか、ロックダウンは、空いたほうの手でオプティマスの体を撫でまわす。
「やめろ」
オプティマスの拒絶の言葉を、ロックダウンは鼻で笑った。
「あんたには不幸だろうが、俺にとって幸いな事に、ブリッツウィングはあんたを無傷のまま渡せとは言っていない。あんたが痛い思いをするかどうかは、俺の胸先三寸なんだぜ?」
俺はすごくあんたのことが気に入ってるんだ。
オプティマスの顔に自分の顔を近づけ、ロックダウンはそう言ってオプティマスにキスをした。
ロックダウンの舌がオプティマスの舌を求めて歯列をなぞったが、オプティマスは拒絶する。
チッと舌打ちすると、ロックダウンは嫌がらせにオプティマスの頬をべろりとなめた。
「大人しくしてな。気持ちよくしてやる」
はき捨てるように言うと、先ほどまで口に含んでいたものを再び手に取り、しげしげと見つめる。
「こっちもご立派じゃないか、リーダーさん」
手で強く扱きながらロックダウンはからかったが、オプティマスは唇を引き結んだままロックダウンを睨んでいる。オプティマスの気持ちを現すように、いくらロックダウンが愛撫しても、手に握ったものは反応しない。ロックダウンは二度目の舌打ちした。
「勃ちが悪ィな。怖いのか? 乱暴な事して悪かったよ、今度は優しくしてやるぜ」
猫なで声でそう言って、オプティマスの体を指で探る。ロックダウンの指が配線の束から一つつまみ出し、手早く絶縁体を剥がす。
「うぁ……っ」
オプティマスが呻きをあげた。ロックダウンが特殊な電気刺激を与えるたびに、痺れるような奇妙な感覚が生まれる。
「ここ弄られて勃たねぇ男はいないからな」
苦痛のような、快感のようなその痺れに身悶えるオプティマスを見て、ロックダウンが嬉しそうに笑った。
「そろそろアンタのこっちも頂くとしよう。楽しませてもらうぜ。斧も、ワイヤーアンカーも、あんたのもちものはどっちも上物だったが、ここもそうなのかね?」
体を動かせないオプティマスの上に跨り、ロックダウンは自分の内にオプティマスを受け入れようと、手をあてがいながらゆっくりと腰を落とした。
「こいつはすごい……。こんなのは久しぶりだよ、オプティマス・プライム君」
大きく息を吐き出しながら、ロックダウンは満足げに呟いた。
「あんたのこれで、どれだけの奴を可愛がってやったんだ?」
慣らすようにゆっくりと動きながら、オプティマスへ話しかける。オプティマスはロックダウンを無視したが、ロックダウンはオプティマスが何かを堪えるように唇を噛んだのを見逃さなかった。
「俺の中はどうだい? なかなか良いって誉められるんだがね……。あんたも楽しんでくれよ。一方的にってのは嫌なんだ」
低い声で笑いながら、ロックダウンは自分の中にいるオプティマスの大きさや硬さを楽しむ。
「あの黄色いチビにもあんたのコレを食わせてやったのか? それともあのデブがお好みか? ジジイが好きって事は無いよなあ?」
「…………」
オプティマスが返事の代わりによこしたのは、冷たい視線。
挑発を無視し続けるオプティマスに業を煮やし、ロックダウンが動きを早めた。オプティマスはさらに顔をしかめたが、オプティマス以上にこの行為に溺れたのはロックダウンの方。
「すげぇ、ああ、いいぜ。たまらねえ」
最初は、オプティマスを追い詰めるつもりだった。だが、腰を振るごとに、快楽のパルスが全身を駆け巡り、もっともっと欲しくなる。やがて余裕の有る態度を取るのも忘れ、ただ自らの快楽のために無我夢中でオプティマスを求める。
「ああ、クソ、イくぜ、イっちまう」
腰の動きが早くなり、お互いの体がぶつかり合う音がやかましく響いた。やがて、ロックダウンが獣の様な低い呻き声をあげ、背を反らせて、目線の定まらぬままひくひくと痙攣する。
「あ……。ああ。あ」
間を空けながら、ずいぶんと長い間ロックダウンは痙攣を繰り返した。ようやくそれが収まると、大きく息を吐き出し、崩れ落ちそうになる体をようやく支える。
「すげえ……」
ロックダウンが、オプティマスの顔と、自分の放ったもので汚したオプティマスの腹を交互に見て、満たされた目をして笑う。
「もう満足しただろう」
オプティマスの冷たい声は、ロックダウンの熱くなった心と体に冷水を浴びせた。
「あんたはまだイってないだろう」
オプティマスを見下ろしながらロックダウンは言ったが、自分の中にあるオプティマスが欲望を吐き出す事無く萎えていくのを感じて思わず声がイラついた。偽りの満足はあっというまに苛立ちに取って代わられ、むなしさと腹立たしさに叫びだしたくなる。
「無駄だ」
ロックダウンの気持ちを逆なでするように、オプティマスはきっぱりと言った。その証拠に、すっかり力を失い、自分の中からずるりと出てきたものをロックダウンは憎々しげに睨んだ。
「私はお前などいらない」
オプティマスの完全な拒絶。
ロックダウンの顔は、自分の好意をすべて跳ね除けられた恨みに歪んだ。
「生意気言うんじゃねえぞ!」
ロックダウンは激昂し、オプティマスを殴りつける。激情に肩を上下させ、オプティマスの横顔を憎しみをこめて睨む。
殴られたオプティマスがゆっくりとロックダウンのほうへ顔を向けた。初めてオプティマスのほうから目を合わせる。
オプティマスの目は冷たく、屈辱を受けてもなおその高潔さを失ってはいない。
卑屈に擦り寄っても無視され、ならばと汚しても、ロックダウンはオプティマスの心に髪の毛一筋ほどの傷もつけることはできなかった。
畜生。ロックダウンは小さく呟いた。
ENDE.
まさかのジジイ。
20080521 UP