現実世界でも社会問題になっている「倦怠期におけるセックスレス」を愛の力で乗り越えた
凸凹夫婦、 クロマくんとシロマちゃん。

以前にも増して強く愛し合うようになったふたりは、今夜も愛の営みに励みます。

寝室の小さな窓から注がれる月光に照らされて、ひとつになったふたりの姿は、
漆黒の闇の中に妖しく浮かび上がります。

「好きだよ・・・・大好きだ・・・愛しているんだシロマちゃん・・・・。」
「好きなの・・・・大好きよ・・・愛しているのよクロマちゃん・・・・。」

ひしと抱き締め合い、甘い甘い、舌の付け根がしびれるほどに甘い
愛の言葉を交わす仲睦まじき夫婦を見ていたのは、
星空の真ん中にぽっかりと浮かぶ満月のみかと思われました・・・・。

 

ガチャッ!!

密やかな呼吸音だけが存在を許された夜の静寂を破って、突如開かれたドアの前に佇む大きな影。

果たしてその正体は―――――

屈強かつ重厚な鎧に身を包んだ歴戦の勇士・・・・。
接近戦において重宝され、剣術を得意とするジョブ・ナイトの姿。

「おぉっと、悪かったな・・・・。最中だったのかい・・・・。なーんて言う筈ねぇだろうが!」
影の正体・ナイトの男はシーツにくるまったシロマちゃんの身体をムリヤリ抱き寄せます。

「きゃああっ!!」
愛する旦那さまから与えられる甘いひとときに浸っていたシロマちゃんは、
突然現れるなり身体の自由を奪ったナイトの男に驚き悲痛な叫び声をあげました。

「シロマちゃん!!・・・・誰だお前は・・・?何の用だ・・・・。」
クロマくんの金色に輝くふたつの瞳がナイトの男を睨みつけます。

「こいつは失礼・・・・。俺の名は内藤・・・・。見てくれどおりの・・・・
認めたくはないが・・・・名は体を表すという俗説に沿った生粋のナイトだ・・・・。
あんた・・・・黒魔道士か?この女はてめぇの奥さんみてぇだな・・・・。」

華奢な身体を震わせて恐怖に怯えているシロマちゃんの細っこい首に
筋肉ムキムキの腕をまわしていた内藤さんの姿を目にしたクロマくんは、
捕らわれの妻を救うべく、火の魔法の中でも最上級の呪文を詠唱します。

「ファイガ!!」

クロマくんの怒りに合わせて舞い踊る激しい炎が、内藤さんに向けて放たれました。

炎の精霊がその身を焼きつくし、消し炭と成り果てる内藤さんの姿―――
クロマくんの脳裏に浮かぶ残酷な想像。それは現実と化すはずでした。

ところが。

内藤さんの前でのたりくねっていた炎の柱は、突如踵を返し、
詠唱者であるクロマくん目掛けて灼熱の牙を剥き出しにしました。

「!!」

自分が放った黒魔法の急襲に、驚いて身を翻すクロマくん。

「くっくっくっ・・・・。バカかテメェ・・・・。」
右手のぶっとい薬指に嵌められた魔法の指輪を見せつけながら、内藤さんは笑いをこらえています。

「・・・・リフレクトリング、か・・・・。」
一部の魔法を反射させるという、白魔法リフレクの魔力を宿した指輪の輝きを見せつけられた
クロマくんは不敵に笑います。―――――絶対的に不利な状況にも関わらず。

「俺のパーティには白魔法の使い手がいなくてな・・・・。モンク・シーフ・弓使い・竜騎士・・・・
話術士とかいう、うさんくせぇのもいたか・・・・?
そんで俺と同じナイトばっかりだ・・・・。ココには食いモンを奪う為にお邪魔させてもらったが・・・。、
まさかこんなべっぴん白魔道士がいるとはな・・・・。」
邪悪な笑みを浮かべた内藤さんはシロマちゃんの首に廻した腕に更なる力を込めました。

「うっさいわよ筋肉ダルマ!!あんたに褒められてもちぃーっとも嬉しかないわよ!!
バカ!!ザコ!!ハゲ!!インポ!!種無し!!単細胞!!悪魔!!ドルゲ!!
死ね死ね死ね死ね!!」
思いつく限りの罵倒の言葉を力いっぱい叫んだシロマちゃんは、
内藤さんの懐から逃れようと必死に身をくねらせます。

「ふっふっふっ・・・・威勢のいいお嬢さんよ、俺の仲間になる気はねぇかい?
・・・・個人的に、てめぇみてぇな気の強い女は大好きだぜ・・・・!!」
内藤さんは舌なめずりしながらローブ越しにシロマちゃんの胸を掴みました。
無骨な指の動きに合わせて、やわらかな乳房の形が歪みます。

「いやぁっ!!やめてっ!!」
夫以外の男性から与えられる愛撫におぞましさを感じて痛々しい悲鳴をあげるシロマちゃん。

「くっ・・・・、ア ル テ ・・・・・。」
魔道を極めし者だけが詠唱することを許されている、強大なる禁断魔法の力を借りようとするクロマくん。

「おっと・・・・。こいつが目に入らねぇのかい?全体魔法はご法度だぜ・・・・?」

内藤さんは、自分の腕の中で暴れるシロマちゃんの首根っこを掴んで、
クロマくんの眼前につき付けました。

「くっくっくっ・・・・。リフレクの指輪だけじゃねぇぜ・・・・。
あんたみてぇなハイレヴェル魔道士に対抗するための盾だってあるんだぜ・・・・?」

美しい装飾が施された真っ赤な盾を身の前に翳し、確約された勝利に酔いしれる内藤さん。

「・・・・!!どんな魔法でも、100%の確率で回避するという・・・・超イージスの盾・・・・・。
伝承の中だけで語られる存在だとばかり思っていたが・・・・。」


昔読んだ古文書に記載されていた、
不思議な盾の実在を目の当たりにしたクロマくんは、成す術もなく逃げ出すかと思われました・・・・。

「俺のパーティには腕ききのトレジャーハンタ―がいてな・・・・。
くっくっくっ・・・・甘ぇよ、黒魔道士さんよ・・・・。俺らも筋肉バカなだけじゃねぇのさ・・・・。
んじゃ、悪ぃけど、この女もらってくぜ。」

シロマちゃんの身体を抱き上げて、その場から立ち去ろうとする内藤さん。

「ちょ・・・・ちょっと離してよ!!誰があんたなんかに・・・・!!
たすけて・・・・助けてクロマちゃん・・・・!!」
シロマちゃんは内藤さんの身体に非力な打撃を加えつつ、愛する夫に助けを求めました。

クロマくんは両手で怪しげな印を結びながら何やらぶつぶつ呟いています。

 

「我が身に秘められし闇の力よ・・・・一切の希望を捨て、邪悪なる存在を粉砕せよ!マダンテ!」

 

その瞬間、クロマくんの身体から放たれた光の刃が、内藤さんの屈強な肉体を直撃しました。

「・・・・・へっ?・・・・・ぎにゃああああああああああああああ!!!!」

何が起きたか理解する暇も与えられずに、
寝室の窓ガラスを突き破ってはるか彼方へと飛ばされ、夜空に輝くお星さまとなった内藤さん。

 

内藤さんの束縛から逃れたシロマちゃんは、自由になったことを喜ぶより前に、
たった今耳にした聞き慣れぬ呪文に対する質問をクロマくんに向けて浴びせかけます。

「ねぇねぇねぇ、なぁに今の魔法・・・・すっごく強かったね!!」

MPを全部使い果たし、苦しげな呼吸を繰り返しながらへたり込んでいたクロマくんは
律儀にも好奇心旺盛な妻の質問に答えます。

「ま・・・・マダンテって言うんだ・・・・。全魔力を込めて放つ異世界の禁断魔法さ・・・・。
以前時魔法研究所を訪れた旅の人に手取り足取り教えてもらったんだけど・・・・唱えたのは今のが初めて・・・・。
・・・・・ま、まさかこんなに疲れるものだとは・・・・。はぁ、はぁ・・・・。」

床の上に寝そべり目を瞑って急激な疲労に耐えていたクロマくんに覆い被さりながら、
シロマちゃんは旦那様ににっこりと笑いかけます。

「・・・・・ねぇ、その 旅 の 人 って・・・・女のひとじゃないわよね・・・・・?」

 

「え、ええっ!!ちちちち・・・なに誤解して・・・・。」
慌てて起き上がろうとするクロマくんの唇を、シロマちゃんの唇が塞ぎ込みました。

「いきなり慌てふためくのがあやしいわね・・・・。罰として、今夜は寝かせないわよ・・・・。さ、続き続き!」

いきなり侵入してきた内藤さんの所為で
完全に中断していた愛の行為の続きを疲れ果てた夫に催促するシロマちゃん。

「ああう・・・・。」
絶倫奥様のパワフルなおねだりの前に、弱々しげな声を発して死んだ振りをするクロマくん。

 

仲睦まじき凸凹夫婦の夜は、これからが本番です・・・・。

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