真夜中のガーデンを一人、歩いてる。 現在時刻は1:37。 いつしか毎晩の光景になっていたせいか見張りに立っている者達はもう何も言わない。 暫くして新調したトレンチコートは以前の物よりも少しだけ丈が短くて、周りにはやや不評だったけど…これが今の僕の姿。 近距離用の弾丸を大量にポケットに詰めて…モンスターが放たれている訓練施設のゲートを潜った。 僕の心は未だにあの日に留まったままなのかも知れない。 気付けばあの日の事は照らされたライトに浮かび上がるような君の白い背中と、地面の上に描かれた赤黒く染まった白と黒のコントラストだけしか思い出せなくなっていた。 それでもあの時振り返った君の笑顔と言葉だけは色鮮やかに瞼の裏に焼き付いている。 いつも僕等を導くかの様に…誰よりも先を走っていた君の背中。 人生を全力で駆け抜けた君は…最後に僕を認めて、許してくれたんだと最近になって漸く気付く事が出来た。 そうしてそれに気付く事が出来て、初めて君がどんな気持ちで僕に『撃て』と言ったのか…どんな気持ちで笑ってくれたのか…解ったんだ。 “気付くのが遅くてゴメン” …そんな風に謝る事さえ出来なくなった君は…今頃どんな気持ちで僕を見てるのだろうか。 やっぱり僕をヘタレだと笑ってる? それともあの時みたいに懐かしい笑顔で兄の様に見てるのかな…。 今思えば昔から君はいつだって皆を…僕をも気にしてくれていたんだと解る。 泣き虫でひ弱だった僕を『男のくせに女とばっかり遊んでる』と無理矢理引きずり回してくれたのも君なりの優しさで。 誰よりも先に引き取られた僕に一番最後まで手紙を送ってくれて居たのも君だった。 そんな以外と細やかな気配りも表に出さずに傍若無人に振る舞う君の本当の優しさに気付いていたのは一体何人居ただろう。 今は散り散りになってしまった仲間たちは…気付いていたのだろうか…。 でも気付かなかったからと僕が責める理由はないんだ。 |
進む度にエンカウントするグラットやアルケオダイノスを倒して…今はもう誰も知らない『秘密の場所』と呼ばれていた場所に生い茂る草木を掻き分けて足を踏み入れた。 …僕は毎晩、この場所に来る。 何をする訳で無く…雨の日は濡れていく大地を眺め、月夜の晩は煌々と照らされて遠くまで光る海を眺めてる。 それは眠りが押し寄せて来るまで静かに続く時間。 そして僕が君達を思い出す時間だった。 …あれからもう何年かの月日が経ち、僕は教師として教壇に就く毎日を送ってる。 今、前線で活躍してるSEED達はまだ君達の名前を覚えてるんだよ? 君達に憧れてガンブレードを武器に選ぶ子達が多いんだけどさ…残念ながら君達みたいに使い熟せなくて大半の子が諦めるんだよね。 僕も君達ほどのバトル野郎にはなれそうもないよ。 …あ、そうそう最近入学して来た子達にね…君達みたいな子が居るんだ。 あくまでも君達みたいな…だけどね? 何だか彼等を見てると君達を思い出してしようがないよ。 だから…代わりと言っては彼等に失礼だけど、今度は今の僕なりに彼等を守ってみせるって決めてるんだ。 もう二度と繰り返させないから。 きっと誓うから。 君達のペンダントとリングに誓って、彼らは僕が守るから… 見ててくれるかな?
|