ちょっと想像してみた 「うくくっ…ね、ね、ちょっとさー面白い事考え付いちゃったんだ♪」 いきなりの出頭を浚われたが…相変わらず某宿で停滞中の召喚士一行である。 やっぱり某宿かよ! 何日居れば気が済むんだよ! 停滞って前線か何かかよ! てか何かって何だよ!! …二段構成のセルフ突っ込みバージョンで攻めてみたり。 それは良いとして冒頭のリュックの言葉である。 いつもの様にティーダとワッカに言っていると思ったら大間違い。 今日は何故か広間に居るのはルールー、ユウナの二名。 男どもはどうした?!と聞かないで欲しい。 とにかく居ないのだ。 で、広間でお茶していたルールーとユウナの元へ、朝から部屋に篭っていたリュックが出て来たと思ったらあの台詞である。 「どうしたの?」 「何?言いたい事はハッキリ言いなさい」 「えへへ、あのね…今迄部屋で戦闘中にやった調合の組み合わせと効果を書き出してたんだけどさー…」 興味津々に耳を傾けていた二人を前にリュックはまた思い出し笑いを始めた。 思い出し笑いが多い奴は大体スケベである。 「もうっ!笑ってないで早く教えなさい!」 こういう事に興味を向けないようなルールーだが、意外と好きな様だ。 何を考えているのか既に顔は笑っている。 「う…うひっ、ふひひひ…」 「気持ち悪い笑い方しないで」 ナイスツッコミだがルールーもニヤけているので減点。 「ご、ごめん…くふっ…アイテムの中に…キ、キマ…キマリの毛が…ひぃ…だめぇ…」 「キマリの毛がどうかしたの?」 説明するのにも笑いが邪魔して上手く説明出来ないリュックにユウナが不思議そうに首を傾ける。 しかしリュックはまだ笑いが納まらないらしく、一人で苦しそうである。 「ダメ…腹筋が…」 「大丈夫?ケアルかける?」 そういう問題でもない。 ひとしきり笑い続けたリュックは涙目になっているの拭い、ハーハーと荒く肩で息をしながら誰の何もしていないにも係わらず既に瀕死状態である。 「落ち着いたみたいね…それで?毛がどうしたの」 早く聞きたいのにお預けを喰らってしまったルールーはかなり不機嫌そうな顔で切り出した。 「うん…はぁ…んと、キマリの毛が入ってたの。アタシの荷物に」 「それはさっき聞いた。それでそれがどうしたの」 「キマリって…毛、生え変わっちゃったりするの?!」 リュックの言葉にルールーは “そう言えばどうなのかしら…” と考えた。 「生え変わるよ?春と秋」 ユウナのにこやかな回答に二人の頭の中はありとあらゆる想像が駆け巡った。 冬毛と夏毛に生え変わるキマリ。 是非夏バージョンと冬バージョンの微妙な違いを見比べてみたいものだ。 「生え変わる時期になるとあちこちにキマリの毛が落ちてるの。胸の所の白い毛は青い毛よりやわらかいんだよ?知ってた?」 「ぷぷっ!」 一人楽しそうに話し始めたユウナに二人は吹き出した。 「うくっ…ま、まだらに…なったり、するのかな?!(笑)」 「まだら!!(笑)」 微妙なまだら模様のキマリ。 不思議な姿である。 “笑い”という螺旋に囚われたルールーとリュックは互いの発言と想像力豊かな各自の脳のせいで段々とハイになっていた。 「ど、どうする?うふっ…足で頭とか掻いてたら…(笑涙目)」 「ふぐっ?!猫じゃらしとかに…じゃ、じゃれてたりしてっっ!!(爆笑)」 「ダメだよ、二人とも…キマリはちゃんと手で頭を掻くし、猫じゃらしにはじゃれたりしないんだから」 一人冷静なのはユウナである。 笑いのせいである事無い事片っ端から想像して笑っている二人を穏やかに窘める。 “ゴメン” と二人は笑い過ぎたせいで滲む涙を拭った。 その時。 「でもボールは好きだよ?」 「ボール?!(笑)」 笑いに対して過剰に反応する状態の二人にはかなりキたらしい。 綺麗にユニゾンになった。 ユニットでも組めば案外売れそうだ。 「凄く好きなんだよ?ブリッツボールを見る目が何か違うの」 「ち、違うってどんな風に?!」 「凄く集中してて…選手の動きとか活躍を見てるんじゃないの。ボールを見てるんだと思うんだよね…尻尾がパタパタ落ち着かないし、眼もね、丸くなる」 「丸?!(爆笑)」 「狙ってる?!(爆笑)」 ルールーとリュックの頭の中に同じ映像が浮かんでいた。 誇り高きロンゾ、ボールを狙う。 人目の無いような所で一心不乱にじゃれ付いてるのかも知れない。 ルールー、リュック共にフルブレイク。 「小さい頃は良くキマリとボール遊びしたなぁ…♪」 ユウナは笑い崩れてる二人を前に一人懐かしそうに微笑んでいる。 「まさか…(震笑)」 「ど、どんな?!(耐笑)」 「キマリと向かい合ってボールを投げるの」 「なんだー普通だね…アタシはてっきりユウナんが好きな所にボールを投げてキマリが取ってくるのかと思っちゃったよ」 「私も(苦笑)」 「え…普通はそうじゃないの?」 「えっ?!」 ユウナの疑問に二人の顔が輝いた。 「どういう事?!詳しく説明して」 口調は怒っている様だがルールーは笑っていた。 いや、ニヤけて居たと言うのが正しいのかも知れない。 「えっとね…私がボールを投げるとキマリが取って来てくれるの。それが面白くてどんどん遠くに投げるとキマリの物凄く嬉しそうに走っていくんだぁ♪」 まるっきり犬である。 二人は再びフルブレイク状態に陥った。 そこへ。 「うっひやー…外はまだ雨が凄いッス」 ティーダが上下雨合羽という作業員の様な姿で帰ってきた。 その後ろから同じ出で立ちのアーロン、ワッカ。 ワッカが物凄く似合っていたと言うのは敢えて伏せて置こう。 そして、キマリ。 さすがに合うサイズが無かったのだろう…一人全身濡れ鼠の様で。 その姿を見つけたルールーとリュックは今にも吹き出しそうだった。 「うわっっ?!」 「ぶふぅっっ!!」 濡れた合羽を脱いだティーだの横でキマリが身震いをした。 そう、正しく犬の様に。 その光景を眼にしてしまったルールーとリュックは間も悪く…ちょうど茶を口にしており…見事に霧吹きの様に噴出し、咳き込みながらも笑い転げている。 それから数日の間、ルールーとリュックはキマリを直視する事が出来なかった。 E N D 次のターゲットは誰に?!(笑縛) |