『PLEASE』






───何かしたいとずっと思っていた。
平和が戻って…初めて祝う誕生日。
もしあんたに言ったならどんな反応をするんだろうか…。

(怒る…事は無いな…)

何かをされて怒るような奴じゃない。

(…迷惑だと思うだろうか…)

そんな風に考えて少し哀しくなって歩いていた足を止めた。
ディリングシティの街中。
華やかなショーウィンドウの装いはもう冬で…。
冷たい北風が頬を焼くかの様に吹き付けてくる。
ブーツの中で痛いくらいに冷たい足が地面に吸い付いたかの様に動けなかった。
そうしてただ立ち尽くす俺は滑稽なんだろう。
横を行き交う人の視線が俺を笑っている様で。
苦しさを紛わす為に首を振って、足を地面から引き剥がすと流れに乗ってまた歩く。

どのくらい街をうろうろしてると言うんだろうか。

(…滑稽だよな…本当に…)

自分でも笑ってしまいそうな程に。
それでも…どうしても何かをしたくて堪らなかった。
気付くと傍に居た。
一緒に笑ったり、怒ったりしてくれた。
傍に居るのが当たり前の様になって…姿を見ない日は訳も無く心細かった。

(色んなもの、貰ったんだな…俺は…)

誰かと一緒に居る喜びや、誰かを必要とする想い。
そんな目には見えない、でも俺が見失っていた大切なものを貰った。
…だからと言う訳では無かったが…本当に純粋な気持ちで何かを贈りたいと思ったんだ。
しかしイザとなるとなかなか決まらない。
自分好みのアクセサリー…だがそれを気に入ってくれるかどうか解らない。

(俺、今…あんたの事ばかり考えてるな…)

そんな自分も可笑しくて、でも不思議と嫌な気分ではない事に喉の奥で笑いを噛み殺しながら歩いた。
信号待ちをしながら手袋の中の冷たい指先を吐息で温める。
夕暮れの街はこれから家路をたどる少し疲れた顔やどこかに遊びに行くのだろう仲間達と笑顔を交わす顔が俺と一緒に信号が変わるのを待っていた。
当ても、目的も無くただ流されて行く浮き草の様に街中に漂う。
アクセサリーショップを覗いてみる。
ショーケースに並ぶ様々な石たち。
リングにブレス、ネックレス…どれも綺麗だったが素っ気無いほどシンプルな出で立ちには似合わないと溜息を吐いてその場を後にする。
こんなに誰かの為に必死になるなんて。

(前の俺じゃ考えられなかったな…)



ただ驚いて…喜んでくれたなら。
それだけでこの苦労は報われる───





「どうしたんだ、こんな時間に…」

少し眠そうなあんたの笑顔。
照れ臭さに黙って包みを差し出す。

「何だ…コレ」
「…誕生日だろ、今日」

驚いた顔が嬉しそうな笑顔に変わる。

(ああ…俺はこの顔が見たかったんだ。)

胸の奥が訳も無く温かい。



初めて贈るあんたへの俺の想いの欠片。
手にしたあんたの笑顔。
ずっと忘れない…。

Happy Birthday to you.





†END†





---あとがき---


最改稿と言う形なのですが…全然改稿されてません(縛
多分思いっきり時期外れなせいだろうと…そうだろうと言い聞かせておきたいと思います。
スランプがまだ抜けて無いせいだとは言いたくないだけだったりもしますが…(苦笑←言ってるじゃん

この作品はUP当日が誕生日だった方に捧げたものでしたv(笑



First writing:H14.11.30
Manuscript change:H15.08.20




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