心の中に渦巻くこの感情を

胸を切り裂けば見せられるというのなら

俺は喜んで切り裂いて見せよう
















『ジェラシー』





…ふとそんな事を考える事が有る。
例えそれを見せられたとして…何が変わるという訳でもない。
だがそうせずには居られないほどにおびただしいほど様々な感情がこの胸には渦巻いてる。
それは “お前を見て居たい” と言うものから始まり…



傍に居たい
守りたい
共に戦い続けていたい
お前に触れたい
抱きたい
俺しか見えないようにしてやりたい



…ただそこに次第に滲み始める狂気からは逃れられない事だけは知っていた。
愛してると人括りにしてしまえばそれだけの事だと言うのは解ってる。
だが、俺が今アイツに抱いてる感情は愛だなんて綺麗な言葉で片付けてはならないのも解ってる。
ただ一つ言えるのはこの感情は間違いなく俺が抱いているものそのもので。
それに嘘偽りはどこにもないという事。










束縛したい



アイツが見るもの全て
アイツが話しかけるもの全て
アイツが触れるもの全て



壊したい



アイツを見つめるもの全て
アイツに話しかけるもの全て
アイツに触れるもの全て…















殺したい































ふつふつと湧き出してくる感情に脅かされてる俺は慄く訳でも、悩む訳でもなく…ただ笑っちまった。

























何て事だ  オレは  そんなに  アイツの事が  欲しいのか、と。

























全く我ながら笑えるほど綺麗にイカレてやがる。
これを笑わずに居られるか?

オレはアイツを既に手に入れてるというのに、まだこんな事を思っているなんて事。





笑わずには居られねぇよ。















ベンチにだらりと凭れ掛かったまま空を仰いでる。
綺麗な抜けるような青空を白い雲がゆっくりと流されて行く。
あまりにも可笑しくて、滑稽な自分に笑いが止まらなくて思わず右手で顔を覆った。
長閑な中庭のベンチを独り占めして肩を揺らして笑ってる俺を通り過ぎる奴らが訝しげに見ては通り過ぎていく気配。
それがまた可笑しくて笑い続ける。

(ザマねぇ…)

可笑しくてたまらない。
全身を揺する程の笑いは収まる事を知らないように腹の底からくつくつと湧き出してくる。
目を覆ったままの右手が下ろせない。
指の隙間から見える赤い光がチカチカと警告を発してるようだと思ったらそれも可笑しくなった。
仰のいて笑い続けるのにも疲れて、それでもまだ収まらない笑いに俯いて首を振ってみる。
笑いは止まらない。
右手も離せない。
いい加減笑いすぎて苦しくなってきてるのにも拘らずそれが可笑しくて笑える。


呼吸が怪しくなっても
笑う事しか出来ないかのように
笑い続ける。





魔女の騎士を辞めて。
のこのこガーデンに戻って。
平和が満ちてるこの場所で、俺一人が未だに狂って居るのを感じて。

(本当にザマねぇくらいにイカレてやがる)

解っているのに止まらない。
解ってても止められない愛という名をした狂気は静かに、着実に俺を蝕んでいく。
目の奥が ズキズキするほど笑っても止まらない。
…だがもうすぐここにアイツが来る。
きっとあいつはここに来る。
だからそれまでに俺はこの笑いを止めていつもの俺に戻らなければならなかった。

それは誰でもなく俺自身の決意。

きっとアイツは俺の胸の中を見たら

“好きにすればいい”

何でもない事の様にそう言うに決まっている。

だから俺は見せない。
言わない。
気付かせない。















腹の底から未だ湧き出してくる笑いを噛み殺して。
目を覆っていた右手を光に慣らすようにゆっくりと退けたらいつもの俺になる。

アイツが言う “憎たらしいほどに余裕と自信に満ちた笑い” を浮かべる俺になる。




















大きく深呼吸をして、目を閉じたまま仰のいて。
ゆっくり開いた目で睨みつけるようにこの高い空を見つめる。
そこにタイミングよくアイツの気配を感じて。
俺を見つけたアイツが立ち止まって溜息を溢す。
意を決したように向かってくるのをわざと無視して空だけを見てる。
そうする事でアイツの視線を俺に留めていられるなら空なんか幾らでも見てられる。
青い空に輝く太陽が例え赤く滲んで見えていたとしても。

「やっぱりここか」

耳障りのイイ程良い低音がぼそぼそと呟くのを聞いて、ゆっくりと仰のいたままだった顔を漸く前に向ける。
吹き抜けていく風がスコールの柔らかい髪を揺らしていく。
光を受けて白く輝く肌がとても綺麗だと思う。
少し眩しそうに眇めた眼差しは呆れてるように俺を見ていた。

「何だ、用か?」
「別に。…ただキスティスがアンタを呼んでる」
「今度からはテメェで呼びに来いって言っとけ」
「手が離せないらしい」
「…で、お前を使うのか?指揮官を、ただの教師がか?」
「……」
「まったくイイ根性してる女だぜ」















もぞりと腹の底で動きかけた感情を皮肉で捻じ伏せて、わざとらしく伸びをして立ち上がる。










「…俺が呼びに来たのがそんなに不満なのか、アンタ」










背中を向けて“じゃあな”と手を上げかけた所に不安を載せた呟きが追いかけてくる。



そんな風にお前が俺を求めるから、俺は狂って行く。



込み上げてきそうな笑いを噛み殺して振り返り様に腕を伸ばして、スコールを腕の中に捕らえて…この上なく情熱的なキスをする。
驚きに ビクッと震えたのを感じながら唇を離してコイツが言う “皮肉と自信に満ちた笑い” を貼り付けたまま固まってる耳元に唇を寄せて。



「二人っきりになるとこう言う事をする事ばかり考えてる男の所にのこのこ来るからだ」



からかい口調に警告を乗せて笑う。
見つめたスコールが睨みつけてくるのをおどけながら離して。
今度こそ振り返らないつもりで黙って背を向けて手を上げた。



「アンタ最低だ!」










からかわれた腹いせに投げつけられた言葉のせいでまた笑いが止まらなくなりそうだ。





俺を狂わせるのも
生かすも 殺すも 全て
お前次第だと言う事に。



なんて刺激的な恋人。















だから誰も居ない通路に出た時、そっと唇に乗せて呟いた。





『魔女の誘惑よりも強烈だな、お前の言葉は…』

























笑いが止まらない程




泣きたくなるのは、何故だろうか。






















---あとがき---


はい、かなりイカレてます。
むしろ私の脳ミソが逝かれてます(笑
愛せば愛する程に求め、弱っていく男のかなりかっこ悪い姿を書いてみようかなぁ、と。
最初はアーヴァインにしようかと思ったけどあんまりにも苛めすぎだとさすがに良心の呵責が(笑
いつも格好良過ぎのサイファーさんを苛めてみようとしてる割には…やっぱりカッコイイかな?
これも愛ゆえで!(爆笑



writing:H15.10.15




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