何度も戦った
何度も傷付け合った
だがその度に一つずつ解り合えた気がする
そう思うのはきっと、俺だけじゃない筈だ



『 I think 』



煌く鋼を打ち合わせ
打ち寄せる波のように
近寄っては 離れ
その度に飛び散る火花はまるで淡い夢のよう

いつまでも
絶え間なく降り注ぐ雨のように
何度も 何度も
振り下ろし 振り上げる刃

握る腕がいい加減痺れても
例え翌日には上がらなくなろうと 構わない

この瞬間が堪らなく楽しい
この瞬間が堪らなく好きだ───





ギリギリと咬み合う刃が僅かに逸れて頬を掠めていった。

「油断大敵だな」
「五月蝿い」

微かに切れた頬から滲む血を拭いながらそう答えるとニヤリと笑う。
思わずこっちも笑みが零れだす。
そうしてまた踏み込んでは仕掛ける駆け引き。

風が耳元を掠め
雨が頬を伝う

短い呼吸音と
靴が大地を咬む音と
打ち鳴らされる刃の音

そのどれもが他の何よりも胸を躍らせる。



(決着など、このままつかなければイイ)



細かく切り取った人生の中の全てがこの瞬間で有ればいいと願う。
胸が高鳴り、血が沸き立ち、一部の隙も許されないこの瞬間で有ればいいと願う。





どの瞬間であろうとも。
前に立つのが額に対を成す傷を宿したアンタで有れば、尚イイ。





† Fin †





---あとがき---

サイト10000hit記念にフリーで放出したものでした。
どっちの視点でも見れるような仕様にしてるつもりなのですが…フリーで出した時には上手く行ってなくてさり気なく部分的に修正してたりします。

ま、こんなもんだ…(遠目


writing:04'.Sep.15



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