ほんとはね。
君を大切にしてあげたいんだ。
いつだって、笑っていられるように。

なんて、僕が言ったとしたらきっとおなかを抱えて笑い出すだろうけれど。

眉間に皺を寄せた顔や泣きそうなのを堪えている顔。
そんな顔も好きだけれど。
天使を屠る時の、無表情の中にある冷たい炎を宿した瞳も好きだけれど。
というか、それ以外をロキはレンから向けられたことがないのだけれど。
甘ったるい微笑を浮かべて自分を見るレンを想像してもそれはそれでなんだか気味が悪い。
はて、自分は何かをやらかしたのだろうか、とこちらも曖昧な笑みを浮かべるしか出来なくなるだろう。
不毛だ。

「ロキー!」

ああだこうだと脳内で自問自答を繰り返していると、我等が主の呼ぶ声がする。
いつもなら不機嫌そうに呼ぶはずの声が心なしかやんわりとしたものになっているところが怖い。
他意はないのかもしれないけれど、普段殺気じみたものばかり(それはロキ自身の所為なのだけれど)浴びているロキはほんの少し眉間に皺を寄せて、それから頭を振り、風の中に身を投じた。

「どうかしたのかい?魔王様?」

いつもの胡散臭げな笑みを携えて、風と共に彼の前に立つ。
これがもしクーフーリン辺りなら、その場に跪き頭を垂れるのだろうけれど、生憎とロキはそんな性格ではないし、そんな間柄でもない。
それに不満そうな顔をするでもなく、レンはこれでもか!という笑みを浮かべて、

「ありがとうロキ!」

と言った。

(え、何が?)
と思わず普段の自分のキャラさえ忘れてしまうほど驚いて目を見開いたロキに、レンは付け足す。
曰く、先日どうしても食べたかったケーキが今朝部屋のテーブルに置いてあったのだという。アツロウに聞いてもナオヤに聞いても、他の人間にも悪魔にもまったく心当たりがないと言われたのだから、ロキくらいか、と当たりをつけてきたらしい。
それでようやく思い当たる。
確かに先日、いつものように邪険にされながらもレンの部屋でだらりと横になっていた時に見ていたテレビのスイーツ特集。その中のひとつにやけに目を輝かせて見ていた様が余りにも年相応で、魔王としては不相応で、それが少し面白くて、なんとなく街へ出かけた時に買ってきたのだ、今朝。テレビの効果とは凄い、と改めて認識させるほどの行列だったけれど。
実はそこの辺りでアツロウやナオヤを確実に敵に回した、という裏事情があるのだが、それはそれとして。
ああでは彼がこんなにも、貴重な(自分にとっては)笑顔を、自分に振りまいてくれているのはケーキのおかげか。ケーキ如きで釣れる魔王ってどうなんだ。
ロキの心中は複雑だ。
けれど、それはおくびにも出さず。

「魔王様は甘いものに目がないみたいだからねぇ」
「そんなことは、……多少あるかもしれないけど」

ロキの言葉に、普段なら不機嫌そうに顰められるばかりの表情が柔らかい。
誰か!誰かこの場をムービーで録画して保存して!と表面上普段どおりを装うロキの脳内はある意味パニック状態だ。
どうせ数日すればまたいつもと同じように不機嫌そうな顔で見られるのだ、と思うと多少苦いものが浮かぶけれど、それはこの際置いておこう。

笑っていて欲しいと思った。
そしてそれは、僕に向けられて欲しいと思った。

それが、ほんの少し、なんとなく、相手のことを考えてやったちょっとしたことで叶うなんて。
それじゃあ、一般的悪魔の、更に代表的な契約方法とか、血の契約とか生贄とか必要ないじゃない、と心の中で呟く。

「特別にお茶会に招待してあげる。その代わり、誰にも内緒ね」
「…仰せのままに、魔王様」

ああもう、この魔王に敵う気がしない。

              


ほんとはね。主人公のこと大好きなんです。
ってロキを書いてみたら思いのほか変な人に暴走して佐倉さんびっくり。
あれ、ロキってこんなキャラじゃないよね。でも普段ツンツンしてる子が自分がしてあげたちょっとしたことでデレになったらそりゃあ暴走もするよね。と言い聞かせて納得させてみよう。

2010/10/26 改訂

              

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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