ずっといるよ。
レンが魔王となって、どれくらいの歳月が流れただろう。
ふとそんなことを思いながらナオヤがレンを見ると、成長の止まった身体は始原のベルの力を手に入れた時のまま変わらぬ姿をしていたが、一箇所だけ目に見えて違うところがあった。

「…髪が伸びたな」
「あー、うん。なんかほっといたらいつの間にか。爪は切ってるんだけどね」

いくら成長が止まったと言っても髪と爪は伸びるらしい。
ナオヤも人間を捨てた身だが確かに髪と爪だけは伸びる。魔界を滅多なことでは出られないレンとは違い、ナオヤたちは魔王軍の者だと気付かれなければどこへ行くにも制限は無いのでこまめに美容院に行ったりしていたので気付かなかった。
伸びるスピード自体はゆっくりらしく、だからこそ余計に気付かなかった。毎日顔を突き合わせていれば些細な変化など早々気付くものではない。
けれどよくよく見てみれば、あの頃より十センチ以上伸びているのではないだろうか。ふわふわと宙を跳ねていた髪の先が鎖骨にかかり、前髪もやはり以前より伸びている。

「切りに行くか」
「めんどい。てゆか魔界の外出れない」
「かといってそのままいる訳にもいかんだろう」
「別に不便は無いんだからいいじゃない」

確かに不便は無いかもしれない。彼にとって何かを見るのに必要なものは目ではない。
空気、気配、風、温度、匂い。たとえ長くなった前髪が視界を隠しても天使どもの攻撃にも天使への攻撃にも対処のスピードが変わることはないだろう。
それくらい、レンは力を自分のものにしてしまった。もう力の使い方がわからぬとナオヤに嘆いたりはしない。そう言った意味で、髪の長さはレンとの距離のように思えてナオヤは眉間に皺を寄せた。
本来なら、その髪の長さは彼が自分を選んでから彼が自分と悪魔の為に努力してきた時間の結晶だと思えるはずなのに、捻じ曲がったナオヤの心はやはりこの時も変な解釈をしてしまっていた。

「切れ。何なら俺が切ってやる」
「やだ。なんでそんなに切りたがるの?」

レンの問いに一瞬言葉に詰まる。するとレンは合点がいったとでも言うように冷めた瞳でナオヤを見た。

「わかった。ね、ア・ベルが髪の毛短かったんでしょう?」

思いの外冷たい声音でレンが言う。
言われて記憶を辿れば確かにア・ベルの髪の長さはレンが魔王になったばかりの頃とそうは変わらなかった。
ナオヤとしてはア・ベルを追い求めるがゆえにレンに髪を切れと言った訳ではないのだが、レンはどうやらそう取ったようだ。
ナオヤにしてみれば、髪が伸びるほどに彼を遠く感じてしまうのが嫌だっただけなのだが、レンはつまらなそうに、やっぱり、と言い捨ててナオヤから視線を外した。

「…だとしたら何だ?」
「絶対切ってやんない。オレはオレだもの」

口を尖らせて明後日の方を向いてしまったレンに近寄りあの頃よりも大分伸びた髪に触れる。
指先からさらさらと落ちてゆく髪をどこか淋しく思いながら、レンに声をかけた。

「別に、お前にア・ベルであれともう強制はしない」
「強制するとかしないじゃなくてオレはア・ベルじゃないもの」
「知っている」
「じゃあいいじゃない」

釈然としないナオヤの様子を感じ取ってか、レンが振り返り笑う。

「オレはたとえこの髪が床につくまで伸びたってナオヤの傍にいるんだから」
「…ッ!」

聡い魔王はナオヤの懸念などお見通しというように笑う。いなくなったりしないよとやけに可愛らしく笑って言う。
珍しく言葉を奪われたナオヤは長く伸びたレンの髪ごと後頭部を掴んで唇を押し付けた。

             


髪の毛とかは伸びる設定のはずなのにそゆえば髪の毛伸びた描写書いてないやと思って書いたもの。
久しぶりにらぶい(当サイトにしては)ナオ主を書いた気がする…。

2010/10/26 改訂

           

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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