恋愛感情とは
好きだよ、愛してる。だから君が欲しいな。そう言っていつものように恐れ多くも万魔の頂点に君臨する魔王を口説いたロキを、レンは普段のように素知らぬ顔をして消えてしまうでもなく、ロキを見上げ、ただ不機嫌そうな顔を隠しもせずに言った。

「そんな言葉、簡単に使わないで」

普段とは違うレンの反応に内心戸惑いつつもロキは視線で続きを促す。
なんとなく言い辛そうに言葉に詰まりながらたどたどしく言葉を紡ぐレンは魔王と言うよりまだ子供のそれだった。

「…好きってさ、もっと、オレもあんまり知らないけど、もっと切なくて、苦しくて、あったかくて、時には泣けてきたりもして、もっと、もっと大切な想いだと思う。だからそんな簡単に扱っていい言葉じゃない…はずだよ」
「……へぇ」
「何、馬鹿にしてるの」
「違う。感動してるの。僕の引き出しの中にはそんな発想はなかったから」

そう、ロキにはそんな発想は無かった。なぜなら彼は悪魔で大抵のことは自分の望む通りに物事が動いてきたから。
欲しければ奪う。好ましいと思えば嘘臭い愛の台詞を囁いて虜にして玩具のように扱い、弄ぶだけ弄んで、飽きたらゴミのように捨てた。
もちろんレンのことをそうしようと思っていた訳ではないが、まだ魔王軍に属して日の浅い現段階では彼を手に入れたとしても最終的にそうならないとは言い切れなかった。

「人ってすごいよね、たまに」
「嫌味?」
「ううん、褒め言葉」

まだ人としての部分を捨てきれない魔王はやはり子供のそれと同じまっすぐさで恋愛は美しく純粋なものだと思っている。
どろどろとした感情や欲に塗れた下心も知らず、きれいな感情だと信じている。
少なくともロキにとっての恋愛感情は下心があってのものだし、後々の対処法はともかくとして好きならば触れたいと思うところまでは間違っていないはずだ。
そう。自分は彼を穢したい。子供のようにまっすぐで、時に迷子のようにゆらめき、時に王らしく威厳を持った光を放つ瞳を持つ、まだ何にも穢されていないこの子供を。
けれどいくら子供とは言え彼は確か高校生だったはずだ。ならばそれくらいの薄汚れた感情を知っていても当然のはずなのに。

「君は本当に純粋なのかな」
「どういう意味?」
「その純粋で清廉な姿は仮面なのか素顔なのか僕には推し量りかねるよ」
「…?」

本当に箱入り娘よろしくナオヤや彼の周りの人間からそういった感情や衝動を徹底的に排除されてきたのだろうか。
それとも本当にそういったものを知って尚、そんなきれいな感情があると真摯に信じているのだろうか。
どちらにしてもロキがこれまでに知り得てきた人間とは違っていた。彼を未だ人間と称するかはさておいて。
それまで以上に彼に興味と好意を抱いたのは確かだった。

「じゃあもし僕が君のいうような感情を君に抱いたとしたら君は僕のものになってくれる?」

半分冗談、半分本気で訊ねてみると、レンは少し考えた風だったが、やがて春の穏やかな日差しのような微笑みを浮かべて言った。

「お前が本当にそんな感情を持つことが出来たらね」

まるでお前には無理だ、と切り捨てているようでいて、もしそうなれば、という僅かな希望も残すレンはある意味で魔王向きだ。
両手を挙げて降参の意を示しながら、精々精進してみるよ、と言ってみた。
君を好きだと思う気持ちに偽りはないし、きっとこの想いはこれからもっと増長していくだろうから。

きっといつか君を僕のものにする。

             


時系列的にはまだ魔王になって数週間程度。なのでロキもレンを好きなことは好きですが、見当違いな贈り物攻撃するほどには至ってない辺りのお話。

2010/10/26 改訂

           

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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