恋愛感情とは |
好きだよ、愛してる。だから君が欲しいな。そう言っていつものように恐れ多くも万魔の頂点に君臨する魔王を口説いたロキを、レンは普段のように素知らぬ顔をして消えてしまうでもなく、ロキを見上げ、ただ不機嫌そうな顔を隠しもせずに言った。 「そんな言葉、簡単に使わないで」 普段とは違うレンの反応に内心戸惑いつつもロキは視線で続きを促す。 「…好きってさ、もっと、オレもあんまり知らないけど、もっと切なくて、苦しくて、あったかくて、時には泣けてきたりもして、もっと、もっと大切な想いだと思う。だからそんな簡単に扱っていい言葉じゃない…はずだよ」 そう、ロキにはそんな発想は無かった。なぜなら彼は悪魔で大抵のことは自分の望む通りに物事が動いてきたから。 「人ってすごいよね、たまに」 まだ人としての部分を捨てきれない魔王はやはり子供のそれと同じまっすぐさで恋愛は美しく純粋なものだと思っている。 「君は本当に純粋なのかな」 本当に箱入り娘よろしくナオヤや彼の周りの人間からそういった感情や衝動を徹底的に排除されてきたのだろうか。 「じゃあもし僕が君のいうような感情を君に抱いたとしたら君は僕のものになってくれる?」 半分冗談、半分本気で訊ねてみると、レンは少し考えた風だったが、やがて春の穏やかな日差しのような微笑みを浮かべて言った。 「お前が本当にそんな感情を持つことが出来たらね」 まるでお前には無理だ、と切り捨てているようでいて、もしそうなれば、という僅かな希望も残すレンはある意味で魔王向きだ。 きっといつか君を僕のものにする。
時系列的にはまだ魔王になって数週間程度。なのでロキもレンを好きなことは好きですが、見当違いな贈り物攻撃するほどには至ってない辺りのお話。 2010/10/26 改訂
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