チェンジ!
魔王軍の非戦闘員(主に回復スキルなどを多様するタイプの悪魔)は王の心の安寧の為に花を育てている。そしてもう一つ、彼、彼女らには仕事があった。
野菜を育てること、だ。
今は未だ自給自足をしている訳ではないが、いずれ日本から人という種が他国へと非難し国内から人が消えた後はそれを行う必要性が出てくる。悪魔は仙人と違って霞を食べている訳ではないし、レンたち元人間はある程度の食料を摂取しなければ不死と言えども床に伏せることだってあるのだ。
けれどその数には限りがあるし、肉や魚までは魔界で調達することは難しかったので、当然と言うか買出しに出ざるを得なくなる。
その際、天使の襲撃に備えて魔王軍の中で隊を率いるだけの力を持つ悪魔とその隊の何名かが付き従って出かけていく。もちろん人間界の中に入っていくのだから人に化生出来る者に限られるが。
ちなみに剣や盾、叡智は自身が思い立った時やベルの王が直々に頼まない限りは買出しには同行しない。各々勝手に出歩くことはままあれども。
今回は買出しの量が余りにも多かった為隊長格の悪魔が普段は一名であるのに対し三名出ることになった。
城の守りは剣と盾。叡智はベルの王であるレンの命により外交へ赴いているので不在だが、他にも幾千幾万もの悪魔がいるので城や王の警護には支障はない。
…と、そんなことなどまったく頭の片隅にもないような無邪気な顔で今回の買出しのメンバーを見つめていた。

「おいオーディン、メモはちゃんと持っただろうな?」
「もちろんだ!主専用のおやつメモもバッチリ持っているとも!」
「…なんですか、そのおやつメモって」

今回の買出しメンバーはクーフーリンとオーディンとレミエルだ。
悪魔の姿をしている時の彼らもどちらかと言えば人に近い外見をしているし、戦闘時以外はレンたち元人間の意向により彼らのような人型に近い悪魔は衣服が支給されていることもあって特に違和感というものは感じられない(真っ当に考えて素っ裸に近い姿でうろつかれたり、鎧姿でカシャンカシャンと音を立てられて歩かれても抵抗があるだろう)が、やはり実際に人に化生してみると印象が違う。
人に紛れる為なのだから仕方ないが、人ならざるもの特有のものが消えてしまったり、肌の色が変わっていたり、とにかく人らしく見えるように色々な箇所が違うのだ。
クーフーリンのような長髪は目立つということで彼の髪はレンと同じか少し長い程度になっているし、オーディンも左目の眼帯はそのままだがどこにでもいる青年に見えた。レミエルの特徴的な朱と白の羽もなくなっている。組み合わせで見てみると統一性はなかったが、この三人のこと、まとまって行動する訳でもなし、部下もいるのだからその点は気にしなくてもいいだろう。
今回、レンは初めて三人がまともに人に化生している姿を見た。普段から好んで人に化生した姿をしているのはロキくらいだし、買出しに行く間際に出くわすのはほとんどないからだ。
だから余計に物珍しかった。その為レンは買出しの準備を確認する三人の周りをくるくる見て回っている。それはもう、好奇心というか、興味津々というか、新しいおもちゃを見つけた子供のような無邪気な表情だった。
くるくる自分たちの周りを回っている王の意図が読めない三人はどうしたのだろうか、と思いながら、クーフーリンは主には何か深い訳があるのかもしれないと思い、オーディンは単純に何か新しい遊びなのかと思い、レミエルは人の子というものはやはりよくわからないと三者三様に悩んでいた。
そうこうしているうちに四周ちょっと回り終えたレンは満足そうにうんうん、と頷いて、いつものどこか困ったような曖昧な笑みではなく、とびっきり、これでもか!と言うほどの笑みを浮かべ、頬を僅かに紅潮させながら、

「三人ともカッコいいね!」

と言って三人に腕を伸ばして抱きついた。
そこから、いいな、オレも行きたいな、みんなと一緒に出歩きたいなあ、と続くのだが、実際余り三人とも聞こえていなかった。
レンは賛辞の言葉を惜しまない。強いねとか、すごいねとか、そういうことはよく口にする。もちろん感謝や謝罪も惜しまないし、見た目を褒めることが今まで無かった訳ではない。
けれど、今までレンはとても自然に悪魔を褒めた。当たり前のように慈しみを以って、穏やかにそういう言葉を口にしていた。
それが今回、やけに興奮した様子で。それは確かにありきたりな褒め言葉とも言えるのだけれど、言葉よりも表情と行動が問題なのだ。

「…あっ主!我々に世辞はいらぬと…」
「そうかそうか!主よ我はカッコいいか!そうだろう!うん!」
「お前は調子に乗るな!」
「我は嬉しいぞー!」

ほんの少し顔を赤くして困ったように言うクーフーリンと珍しく照れ笑いを浮かべながら嬉しそうに頷くオーディン。人に化生したことで、感情表現もより人らしく見えるのか、はたまた先ほどのレンの言動がそれだけの威力だったのか、その両方か。
調子に乗るオーディンを諌めるクーフーリンと諌められても堪えずにレンの手を取り喜びを大仰に表現するオーディンにレンは一瞬きょとんとして、なんだか喜んでもらっているらしいということがわかって、レンも同じように笑みを返した。

「…レミエル?」

そう言えば彼だけリアクションがない。オーディンをレンから引き剥がそうとしていたクーフーリンも同じことに気がついたのか、レンが不思議そうにレミエルの名を呟くと、同じように視線を向けた。
オーディンはまだ何かに感動したままだったが。それに対して突っ込むような心の余裕は二人にもレミエルにもなかった。
真っ赤だった。頬どころか、耳まで真っ赤だった。それはもう、見事なほどに。思わずレンもクーフーリンも驚いて声を上げてしまったほどだ。
レンと視線が合うと、口をパクパクさせながら何かを言いかけ、せっかくきちんと化生したはずなのにレミエルは翼だけ生やして空へ逃げてしまった。
残された二人と、ようやくレミエルの異変に気付いたオーディンは互いに顔を見合わせるしか出来なかった。
彼はどうやら、褒められることに極度に慣れていないらしい。

「…レミエル行っちゃったね…買出しどうしよう」
「主、私とオーディンの隊で行って来ますのでそっとしておいてやってください」
「ハハハハ!レミエルは照れ屋だったんだな!」

  

「キィィィィィ!酷いと思わない!思うよねぇ!僕なんか普段から人に化生してるっていうのに!レン君僕にあんな風に褒めてくれたことないんだよ!」
「…オレ、たまに言われるけど。」
「盾殿まで!裏切り者め!!」

偶然通りかかってレンと三人の悪魔のやり取りを一部始終見てしまったロキは城の周辺の警護に当たっていたアツロウを捕まえてさめざめと訴えていたのだけれど、アツロウはと言えばロキなどに構っているのもめんどくさいので一刀両断してさっさと警護を再開しようとしたのだが、その所為で逆にロキに更なる拘束をくらうことになった。
外見が褒められるどころかレンに内外ともども褒められた記憶のないロキはアツロウに延々と愚痴を零しながら、今度からもっとレン好みの化生になるよう努力しようと決意した。

             


買出しに悪魔の格好では行けないから人に化生するとかどうだろう。んでレンがべた褒めするの。クフは割と褒められなれてるのでそこまで驚かないだろうな。オーディンはかっこよく見られたいので大喜び。レミエルは多分一番面白い反応するんじゃないかな。
んでもってそれを遠くで見ててひがむロキとか楽しい。

↑走り書きメモより
どうやら可哀想な役回りなロキさんと人に化生したクフたちが書きたかったらしい。
オーディンは知識ある神のはずなのに、いちいち言動が馬鹿っぽい。というか、話自体が馬鹿っぽい。もう自分でも突っ込めない。

           

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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