赤いイチゴと赤い舌。
なんとなく果物を食べたくなって台所を漁ると、何故か奇跡的にイチゴが置いてあった。
誰かが用意したのか。常であったもそうそう置いてあるとは言い難いし、半ば隔離されたようなアジトにあるのはなんだかおかしい気もしたけれど、その疑問は捨て置くことにした。
ざるに開けて水ですすぐ。蔕を取っていちいち皿に並べるのも面倒で適当に水を切ってそのまま食べることにした。

「あ、うま」

練乳はなかったけれど、そのままでも食べられるほどの甘酸っぱい濃いイチゴの味がした。
ぼんやりとしながら一粒ずつ摘んで食べていると背後から声をかけられた。

「獄寺殿」
「うわっ」

急に声をかけられて驚いたのは獄寺の方だが、声をかけたバジルもあまりの驚かれように逆にびっくりしたようで固まっている。
その様子に、悪い、と一言謝って、それからどうかした?と訊ねた。

「いえ、電気がついていたので誰かいるのかと。そしたら獄寺殿がいらしたので声をかけただけなんですが」
「ああ、イチゴ食ってた」
「イチゴなんてあったんですか」
「普通ないよな。あ、お前も食う?」

ひょい、と一粒摘んで口元に持っていってやる。
バジルはそれに少し驚いたように二、三度瞬きをして、それからイチゴを口に含んだ。
指先にバジルの唇が触れて少しくすぐったい。

「おいしいです」

その言葉に獄寺は、そっか、と笑って、指についた果汁をちろりと舐める。
獄寺としてはティッシュを取りに行くことが面倒だっただけなのだが、それを見たバジルはあからさまに頬を赤く染めた。
え、何、なんで?と蔕をざるの下に置いた皿に置きながら訊ねる。
あうあう、と言葉にならない様子のバジルに獄寺は首を傾げるしかない。

「バジル?」

(ご、拷問ですか…!?)

バジルの心の悲鳴など獄寺には届かない。

               


拍手。2009/04/26〜2009/07/12までのもの。長時間放置しすぎ。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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