生きてね。 |
生きてね。 「ペットショップの動物ってさ、買われなかったらどうなるか知ってる?」 ホームセンター、熱心にペットコーナーにいる子猫を見ているアスカに、引きずられて同行させられたカヲルがさして興味もないように言う。 「この間ネットで調べたんだけど、処分されるんだってね。大抵の場合」 事も無げに言い放ったカヲルの表情から感情は読み取れない。 「なんでそんな話するのよ」 可愛らしい猫を見る為だけにペットコーナーに来たというのに、普段なら癒されるはずの心はぎしぎしと音を立てた。愛らしい子猫が急に可哀想に見える。 「さっき、子猫を買った人がいたんだ。その人に店員が諸注意を説明していてね。何日かまでは聞こえなかったけど、その猫が死んだりワクチンで予防できるはずの病気を持ってたら新しい同じ種類の猫と交換するんだって」 もちろんカヲルだってそんな命の扱い方は好かない。 「…なんか吐き気がしてきた」 心底嫌そうに顔を歪めてそう言い、それから憐憫の眼差しでアスカは先ほど熱心に見ていた子猫に語りかける。 「…あんた、死なないで、幸せになんのよ」 そう小さく呟いたアスカの手を取って頭を撫でる。 「アスカがそれを哀しいと思える人でよかったよ」
拍手。2009/7/12〜2009/08/23までのもの。
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