小さなしあわせ
おやすみなさい、と言って眠りに附ける幸せを、きっと君は知らない。

「明日、何時に起きる?」
「8時くらい?朝食食べて、支度したらちょうどいい時間になると思う」
「了解」

目覚ましのアラームを8時にセットしてアスカはベッドの中にもぐりこんだ。
腕を伸ばして、どうぞ、と言えば素直に頭を乗せてくる。学校で会ってもそっけない態度を取る昼間のアスカとはすごい違いだ。
眠りに附くには少し早いけれど、明日は出かける用事がある。服を買って、本を買う。適度な時間に食事を取る。それだけのことだけれど、シンジたちに話した時、デート!?と妙に驚かれた。
デートなのかどうかわからない。と言うよりその定義がわからない。
一緒に買い物をするのがデートか。食事をするのがデートか。
それはカヲルが使徒だから人間の定義がわからない、というようなものではなく、現在のアスカと自分の関係にあった。

「明日、新しく出来たカフェも寄りたいの。ケーキがおいしいらしいんだけど」
「おいしかったら洞木さんと行くのかい?」
「そう、その下見」

付き合ってなどいない。
同じベッドで眠っても、腕枕をしても、キスをしたりはしない。手を繋いでも、身体を繋がない。一見親密なようでいて、妙な距離感のある関係。
恋というものをしたことのないカヲルはアスカに抱くあたたかい感情の名前を知らないし、アスカもそれを求めない。
親のいない子供が寄り添いあうような、微笑ましくも悲しい、そんな関係だ。
だからデートと言ってもピンとこない。付き合うというのもよくわからない。
ただ、自分の腕を枕にして無防備に眠るアスカを可愛らしく思うし、彼女の香りはとても甘く心地いい。

「なんだ、僕と行きたいって思ってくれたのかと期待したのに」
「下見にあんたを選んだのよ。ありがたく付き合いなさい」
「ものは言いようだね」

友人と言うには近すぎて、恋人と言うには余りに遠い。
けれど、人と触れ合うぬくもりを知らなかったカヲルには、アスカの存在はとても新鮮で、優しい。

「明日は主に荷物持ちかな、僕の役目は」
「あたしの荷物持ちをしたがる男ならいくらでもいるの。もっと喜びなさいよ、アスカ様ありがとうございます!って」
「はいはい。そろそろ寝るよ。早めに寝て体力回復しておかないとアスカの荷物は多くて大変だから」
「いちいち嫌味な奴ね。わかったわよ、おやすみ!」

その言葉を、どれだけカヲルが望んでいるか、アスカは知らない。
おやすみ、と言って眠り、おはよう、と言って起きることにカヲルが喜びを見出していることを知らない。
たった一人ではそんな言葉は使わないから。

「おやすみ、アスカ」

そう口にしたカヲルの声が、まるで睦言を囁くような声音だったことにも彼女は気づかない。

         


拍手。2009/9/16〜2009/10/7までのもの。
カヲル君とアスカさん。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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