魔王ご一行のとある日の出来事。〜秋と言えば焼き芋でしょう〜
枯葉を集めて山にする。
自分の背丈より大きくなった枯葉の山に、レンはにっこりと微笑んだ。
秋になり、枯葉の宝庫になった公園にやってきたレンは、アツロウと共に枯葉を集めていた。
手にはさつまいもがたっぷり入った籠。言わずともわかるだろうが、焼き芋をする為に。

「えっと、アギ?アギダイン?いっそマハラギダイン?」
「アギで充分だから!消し炭にする気か!」
「そう?」

言われるまま、えいっと山に火を点す。
いい感じに火が回ってきて、そろそろ頃合かとさつまいもを放り投げて枯葉の中に混ぜ込んだ。
時折肌寒い風が吹いてきたけれど、焚き火の前ではそれほど苦にはならない。
レンもアツロウもあとは火にあたりながら待つだけだ。

「まだかなあ」
「まだそんな経ってないって」
「早く出来ないかなあ」

まだかなあ、まだかなあ、と長い木の枝で枯葉を掻き混ぜる。
やたらときらきらした目をして待つレンに、アツロウは笑った。
仮にも魔王が焚き火に焼き芋って。
言えばきっと、だって焼き芋おいしいんだもん、と更に魔王に似合わない言葉ですねるのはわかっていたので目を細めるだけに留めたけれど、アツロウの言いたいことを見透かしたレンは、口を尖らせる。

「またアツロウ魔王らしくないって思ってる」
「んなことないって」
「期待されても困るよ、魔王らしくなんて」
「まあオマエはオマエだからな」
「そうそう」

そう。だってレンはレンだ。
そして魔界というくせに天使がやってこない限りここは平穏に過ぎたし、魔界の住人もレンにはひどく優しくて、魔王の側近もひどく甘い。
魔王らしからぬレンをそのままで好いてくれる人、悪魔。だったら別に変に気取らなくてもいいのではないか、と思ってしまう。
だからその分、天使や政府に相対する時、威厳ある魔王を演じるのは疲れる。
なめられてはいけない。侮られてはいけない。万魔を従える魔王というプレッシャーはたまに重たかった。

「まだかなあ」
「まだだよ」
「もういいかなあ」
「まだだって!」

はは、と笑うアツロウに、なんだかかくれんぼをしているみたい、とレンも笑った。
ほこほことした焼き芋が出来たら、お城へひとっ飛びしてみんなで食べよう。
それか、焼ける頃合を見計らってみんなを呼ぶか。
焼き芋一つを一大イベントのように楽しみにしながらレンは枯葉を掻き混ぜた。
焼き芋が焼けるまで、あともう少し。

              


拍手。2009/010/7〜2009/11/25までのもの。

              

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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