神様なんかいらない
神に祈りなさい。神の教えを守り、神の望む真正しき人としてありなさい。
信じるものは救われるのです。たとえ、このような世の中でも。

「ばっかみてー」

魔界を離れられない魔王の代わりに御所望の新作ゲームを買いに来た、これでも一応魔王の側近、盾と称され恐れられる人物は、店頭に並ぶテレビが映し出す映像に、向かって毒を吐いた。
信じる者を救うはずの神が、魔界の頂点に立つ魔王との戦でどれほど人に対して暴威を奮ったか知らないのか。信じぬ者や意に沿わぬ者相手に神の取った行動を見ても、同じ台詞が叩けるのなら、テレビ画面に大写しにされている神父らしき男も信者も、頭がイかれてるとしか思えない。
能天気にテレビが動き、電気が流れるこの状況を支えて、人の命を途絶えさせないようにしているのは唯一神ではなく、たった一人の少年だというのに。
ありがちな幻想だ。神様は絶対的な善で救いを与えることはあっても人を困らせることはないと思っている。馬鹿馬鹿しい。
矛盾の入り混じった聖書の中で、アツロウが学んだことはと言えば、神など自分には必要がないということだけだった。
偉大な力を持ち、いっそ信仰に近い感情を抱く、無二の友人であり、人であることを捨てた自分だけの神様がいれば唯一神など必要ない。

「だってオレにはオレの神様がいるし」

そう呟いて店内を物色する。目当てのゲームは相当な人気ソフトだったが、ナオヤが抜かりなく予約しておいてくれたおかげで予約票を渡しただけで手に入れることが出来た。
自分用に気になったソフトを何個か手に取り、それも一緒に会計を頼む。
ふとレジの横に置かれた新作情報のPOPがアツロウの目に留まった。

「…魔王を倒すか、神を倒すか…?」
「ああ、それ今度発売されるゲームですよー。ビジュアルも綺麗だし、大手ゲーム会社の製作だしで、なかなか予約も好調なんですよ」
「へえ…別々なんだ、話」
「ええ、あ、でも一応限定でセット販売もされますよ。両方の視点からプレイした方が楽しめるだろうってセットの方を予約される方が多いです」

リアルで神と戦っている身としてはゲームでまで神だの魔王だのと言うのはくだらなく思えるはずなのに、描かれた魔王のイラストが妙にレンに似ているように思えて気になったアツロウは結局予約することにした。
応対する店員はアツロウが魔王軍の人間であることなど知らない。
セットにするか、神側か、魔王側か、と聞かれ、にっこりと人好きのする笑みを浮かべて、アツロウが返した言葉に、店員はひどく驚いたようだった。

「オレ、神様だいっきらいだから」

さよなら、神様。
オレはオレだけの神様を信じるよ。

ver.Beelzebubと書かれた予約票と先ほど会計を済ませたゲームの入った袋をアツロウはどこか場違いな笑顔のまま受け取った。

              


拍手。2009/12/25〜2010/2/23までのもの。

アツロウにとってレンは神様みたいなもん。

              

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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